私は悪役令嬢なの? 婚約破棄して悪役にならない道を選びました

hikari

文字の大きさ
9 / 11

報告2 エマニュエル視点

しおりを挟む
つい最近晴れたかと思いきや、また雪が降る。


窓の外は相も変わらず雪景色。



エマニュエルとジェシカはエマニュエルの執務室でパイプをふかしていた。


「そろそろ父上に挨拶に行くか? ジェシカ」

「そうですわね。エマニュエル様」

エマニュエルはもうそろそろジェシカと婚約した事を国王に報告に行こうと決めた。


これこそが自分が望んでいた結婚だ。

親の都合だけで結婚させられてはたまらない。


国王は最初の結婚こそは既に許嫁だったようだが、今の王妃とは恋愛結婚だった。


自分は恋愛結婚でいながら、エマニュエルは政略結婚。

それが許せなかった。


しかも、ピアノができると噓をついたのだから、タチが悪い。


「エマニュエル様。本当に私で良かったんですの?」


「決まっているじゃないか!! 俺はピアノが弾ける人が好きだ」


「で。うちのクラスにライバルがいるみたいなんだけど」

「ライバル?」

「シルヴィア・オニールよ」


「ああ。あの子爵令嬢か。下級貴族には用は無い。それに、オニール家には歴史も伝統も無いからな」

エマニュエルはパァーと煙を吐き出した。


「しかし、ジェシカ」

「はい?」

「パイプをやっている事は内密にな」


そう。ここ、ミレイナー王国は18歳未満はパイプをしてはいけない決まりがある。

「勿論ですわ」

「ジェシカ。抜かりはないな?」

「はい。きちんと香水用意してありますから」

パイプをしているという面でも、アレクシアとジェシカは違う。


そうさ!!

価値観が違う女と一緒になっても仕方無いのだ、とエマニュエルは思った。


「そういえば、あの緑の花瓶はどうしたのです?」

ジェシカが花瓶の事に気づいたらしい。

「あー、あれか。あれをアレクシアが割った事にしたさ」

「でも、大切な花瓶だったんじゃないの?」 

「あの女と婚約解消させるにはそのくらいの事をしないとな」

エマニュエルは勢いよくパイプを吸い込んだ。


「アレクシアなら花瓶を割りそうね。うっかり屋だから」

「そうだ。その性格を利用してやったんだ」


祖母の形見など本当は壊したくなかった。

しかし、アレクシアと婚約破棄するためには致し方なかった。


そして、ジェシカと一緒になるために。


「その婚約指輪。かなり貴重な石だ」

「本当に?」

「ジェシカのためなら、どんな出費をも惜しまないぞ」

「まあ、エマニュエル様ってば」

「婚約指輪だけじゃない。宝石だってドレスだって何でも買ってあげるぞ」

「嬉しいですわ」

「それだけ君のことを愛しているんだ」


「ねぇ、エマニュエル様」

「どうしたんだい、ジェシカ」


「欲しいもの、何でも買ってくれると言いましたよね?」

「そうだよ、ジェシカのためなら」


「私、欲しいものあるの」

「なんだい。何でも言ってみな」

「あの……超貴重な宝石。世界に3つしかないというあの宝石の塊が欲しいわ」

「カミケードか?」

「そう!」 


「わかった。俺は一応王族だから、欲しい物は何でも手に入る ぞ」

「たのもしいわ、エマニュエル様」

ジェシカが抱きついてきた。


「そうと決まったら、父上に挨拶に行こう」

「そうね」


ジェシカは身体中に香水を塗りたくった。


甘い香りがする。


こうして、パイプの匂いを隠すのだ。





二人は執務室を出た。


「玉座の間に行く」

そう執務室の番に告げ、二人はその場を後にした。






「なんか緊張するわ」

「大丈夫だよ。ジェシカ。お前の事は俺が守るから!」


二人は宮殿内の回廊を歩く。



階段を昇るとそこは玉座だった。


「エマニュエル様! 国王陛下に謁見ですか?」

と、玉座の間を守る兵士。

「ああ、そうだ」

「そちら様は?」

右側にいた兵士。

「俺の婚約者のジェシカ・テイラーだ」

「初めまして。ジェシカ・テイラーです。以後お見知り置きを」

「では、どうぞ中へ」

と、左側の兵士。


二人は玉座の間に入った。


「どうした、エマニュエル」

「父上」

「一緒にいるのはテイラー伯爵令嬢だな?」

「そうです」


「どういう事だね? エマニュエル」

「はい。父上。私達、婚約しました」

「また婚約破棄するんじゃなかろうな?」 

「それはありません。彼女はアレクシアと天と地ほどの差のある女性です」

「そうか」

「私は一生に渡ってジェシカを守ることを誓います」




「国王陛下」

「どうしたんだね? テイラー伯爵令嬢」

「結婚を認めていただけますか?」

「ううむ……」

国王は絶句した。


「認めていただけないのですか、父上。彼女はアレクシアの二の舞いにはしません」

「いや、違う」

「「え!?」」



「まさかとは思うが……」

「まさかとは思うが?」

「エマニュエル、お前。まさかアレクシアとの婚約中にテイラー伯爵令嬢と交際していたのではあるまいな?」

「いえ、それはありません」


嘘だった。

アレクシアと婚約中にジェシカと出会い、交際した。それが本当だった。

しかし、所詮政略結婚だ。

親同士が決めた結婚だ。

事の成行きはこうなるに決まっている!!


「本当にそうかね?」

「はい。誓って!!」


「まあ、いい。もし、それが嘘ならば必ず天罰が食らうからな」


罰? そんなもの当たらない!


「じゃあ。結婚を認めよう!」


エマニュエルは心の中でガッツポーズになった。

勝利した!!


「ありがとうございます、父上」

「ありがとうございますわ、国王陛下」


「但し。条件があるぞ」

「なんですか?」

「今度こそ婚約破棄をするなよな」

「はい。大丈夫です。父上!」



結婚を認められた途端、二人は共にハイタッチをした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】私が誰だか、分かってますか?

美麗
恋愛
アスターテ皇国 時の皇太子は、皇太子妃とその侍女を妾妃とし他の妃を娶ることはなかった 出産時の出血により一時病床にあったもののゆっくり回復した。 皇太子は皇帝となり、皇太子妃は皇后となった。 そして、皇后との間に産まれた男児を皇太子とした。 以降の子は妾妃との娘のみであった。 表向きは皇帝と皇后の仲は睦まじく、皇后は妾妃を受け入れていた。 ただ、皇帝と皇后より、皇后と妾妃の仲はより睦まじくあったとの話もあるようだ。 残念ながら、この妾妃は産まれも育ちも定かではなかった。 また、後ろ盾も何もないために何故皇后の侍女となったかも不明であった。 そして、この妾妃の娘マリアーナははたしてどのような娘なのか… 17話完結予定です。 完結まで書き終わっております。 よろしくお願いいたします。

宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました

悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。 クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。 婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。 そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。 そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯ 王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。 シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯

[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜

桐生桜月姫
恋愛
 シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。  だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎  本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎ 〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜 夕方6時に毎日予約更新です。 1話あたり超短いです。 毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。

『胸の大きさで婚約破棄する王太子を捨てたら、国の方が先に詰みました』

鷹 綾
恋愛
「女性の胸には愛と希望が詰まっている。大きい方がいいに決まっている」 ――そう公言し、婚約者であるマルティナを堂々と切り捨てた王太子オスカー。 理由はただ一つ。「理想の女性像に合わない」から。 あまりにも愚かで、あまりにも軽薄。 マルティナは怒りも泣きもせず、静かに身を引くことを選ぶ。 「国内の人間を、これ以上巻き込むべきではありません」 それは諫言であり、同時に――予告だった。 彼女が去った王都では、次第に“判断できる人間”が消えていく。 調整役を失い、声の大きな者に振り回され、国政は静かに、しかし確実に崩壊へ向かっていった。 一方、王都を離れたマルティナは、名も肩書きも出さず、 「誰かに依存しない仕組み」を築き始める。 戻らない。 復縁しない。 選ばれなかった人生を、自分で選び直すために。 これは、 愚かな王太子が壊した国と、 “何も壊さずに離れた令嬢”の物語。 静かで冷静な、痛快ざまぁ×知性派ヒロイン譚。

転生した子供部屋悪役令嬢は、悠々快適溺愛ライフを満喫したい!

木風
恋愛
婚約者に裏切られ、成金伯爵令嬢の仕掛けに嵌められた私は、あっけなく「悪役令嬢」として婚約を破棄された。 胸に広がるのは、悔しさと戸惑いと、まるで物語の中に迷い込んだような不思議な感覚。 けれど、この身に宿るのは、かつて過労に倒れた29歳の女医の記憶。 勉強も社交も面倒で、ただ静かに部屋に籠もっていたかったのに…… 『神に愛された強運チート』という名の不思議な加護が、私を思いもよらぬ未来へと連れ出していく。 子供部屋の安らぎを夢見たはずが、待っていたのは次期国王……王太子殿下のまなざし。 逃れられない運命と、抗いようのない溺愛に、私の物語は静かに色を変えていく。 時に笑い、時に泣き、時に振り回されながらも、私は今日を生きている。 これは、婚約破棄から始まる、転生令嬢のちぐはぐで胸の騒がしい物語。 ※本作は「小説家になろう」「アルファポリス」にて同時掲載しております。 表紙イラストは、Wednesday (Xアカウント:@wednesday1029)さんに描いていただきました。 ※イラストは描き下ろし作品です。無断転載・無断使用・AI学習等は一切禁止しております。 ©︎子供部屋悪役令嬢 / 木風 Wednesday

婚約破棄に、承知いたしました。と返したら爆笑されました。

パリパリかぷちーの
恋愛
公爵令嬢カルルは、ある夜会で王太子ジェラールから婚約破棄を言い渡される。しかし、カルルは泣くどころか、これまで立て替えていた経費や労働対価の「莫大な請求書」をその場で叩きつけた。

【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます

なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。 過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。 魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。 そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。 これはシナリオなのかバグなのか? その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。 【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】

「君は悪役令嬢だ」と離婚されたけど、追放先で伝説の力をゲット!最強の女王になって国を建てたら、後悔した元夫が求婚してきました

黒崎隼人
ファンタジー
「君は悪役令嬢だ」――冷酷な皇太子だった夫から一方的に離婚を告げられ、すべての地位と財産を奪われたアリシア。悪役の汚名を着せられ、魔物がはびこる辺境の地へ追放された彼女が見つけたのは、古代文明の遺跡と自らが「失われた王家の末裔」であるという衝撃の真実だった。 古代魔法の力に覚醒し、心優しき領民たちと共に荒れ地を切り拓くアリシア。 一方、彼女を陥れた偽りの聖女の陰謀に気づき始めた元夫は、後悔と焦燥に駆られていく。 追放された令嬢が運命に抗い、最強の女王へと成り上がる。 愛と裏切り、そして再生の痛快逆転ファンタジー、ここに開幕!

処理中です...