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王都編
隷属する者が隷属される(1)
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グレースとビクトラ、リャーレとマラエカ。通信係の鳥人ピショットが小屋へと入った。これからを話し合うために。
小屋へ入るとグレースはテーブルの誕生日席に腰を下ろした。
皆が座るのを待ったが、全員がテーブルの前で横一列になって跪いて首を垂れていた。
「あ、あの。お座り下さい?その様な場所で跪かれてもお話が出来ません。」
グレースは一瞬、ワタワタと手を振って立ちあがろうとしたが、ハッとして咳払いをして言った。
「た、立ちなさい?ゆ、許します。」
えっと、命令とかの方がこういう感じの人達には良いのよね?
対等な態度の方が、きっと苦痛だったりするのよね。多分!
私だってら天皇陛下に横にどうぞ?って言われても恐れ多くて顔上げらんないもん。命令された方が楽だわ。
そうよ、きっと彼等もそうよ!
ドヤァ!!と正解を見つけた様なグレースに、ビクトラ達は一瞬目を瞬かせたが、堪えきれずに笑ってしまった。
「な!え?何で?何か間違えましたか?」
小首を捻り、間違いを探すその姿にビクトラ達は、我が子を愛でる様な生暖かい眼差しを向けた。
「いへ、何も間違いなどございません。我々には命令して頂ければ結構なのです。我等が神よ。」
ビクトラは眩しい物を見る様に、目を細めて微笑んだ。
今だ視線だけを上げて首を垂れる部下達も、口元は緩んでいた。
「そ、そうですか。あ、ありがとう。では、お話がしたいのです。是非席に着いて下さい。これでは私が辛い。」
「畏まりました。失礼致します。全員御言葉に従え。」
それぞれが、やっと席に着いた。
「それでは、まずご挨拶を。私は唯一神テュルケットと賢帝と呼ばれしエルザードが子供、グレース•クラリス。豊穣と調和を齎す使命を頂き降下致しました。」
「降下の際は、ご挨拶もせず失礼致しました。あの時、あの場所にいらしたのは皆様なのですよね?」
ビクトラはテュルケット様の子供と言う嘘に、内心成程と得心した。
確かにその方が、テュルケット本人と偽るより信実が明るみに出た時の傷は少ない。聡いお方だ、そう思った。
グレースの言葉に皆顔を緩め微笑んでいる。しかし、グレースはその表情を疑問の顔で見つめた。
「宜しいでしょうか?」
リャーレが口火を切った。
「はい。どうぞ。」
「私は、魔導大国魔導騎士隊副隊長 リャーレ•ガードナ•トハマイカと申します。リャーレとお呼び下さい。グレース様。」
リャーレの言葉に全員がリャーレを見たが、静かに決意を固めた顔がそこにはあり、誰も何も言わなかったが、ビクトラだけがニヤリと笑っていた。
「リャーレ様、宜しくお願い致します。」
クスリと笑ったリャーレの顔は破壊力が凄まじかった。
グレースはヒュッと喉を鳴らし固まった。
「リャーレとお呼び下さい、グレース様。そして、私の名を今一度とお呼び下さい。」
何故かグレースはリャーレの言葉に逆らえない様な、逆らわせない様に意識が縛られた。全意識がリャーレへと向かう。縛り上げその心臓の鼓動を奪い取り、自分の物と一つにしたい。そんな事を考えていた。
「は、はい、、リャーレ•ガード、、」
「やめろ!!!」
名を言い切る前にマラエカが遮った。
マラエカとピショットはリャーレを睨みつけると、リャーレはやれやれと手を振った。
「軍罰物だ!リャーレ、貴様なにを考えている!?」
マラエカが叫んだ。
リャーレは静かにビクトラを見据えて言葉を紡いだ。
「だって、狡いじゃないですか?隊長。隊長は枷をしてる。そうでしょ?本当なら真名を使わなくても隷属は出来る。なのにあの時貴方は真名を全員の前で曝け出した。それはグレース様の物となったと宣言した様な物だ。真名を使って隷属される事の意味は誰もが知ってる。」
ビクトラは応えなかった。
グレースは訳が分からないといった顔をして、空気がおかしい事に慌てていた。
「た、確かに、隊長が隷属されているのを我等も理解した。しかし、お前の其れは強制だ。グレース様の前で口にするのは申し訳ないが、強姦と同じだ!」
ご、ごうかん!?
物騒なワードがブッ込まれたんですけどぉぉー?
え?何?名前呼んだらアウトなの?おちおち名前も呼べないなんて、息苦しい!!!
隷属とか真名とか、訳が分からん!
くそぉーーー、この世界の常識が分からなすぎる!!
「隊長とて、同じでしょ?隊長はまだ鍵を持ってらっしゃる。私には見えるんですよ。エルフですからね。合意の隷属では無かったはずです。」
マラエカとピショットはビクトラを驚愕した面持ちで見た。
しかし、ビクトラは顔色を変えずにグレースを見つめた。
「確かに、グレース様には許可を得ずに隷属させて頂いた。しかし、それは朱雀にそれを求められたからだ。勿論、私はそれを拒否するつもりも無かった。出来れば、グレース様に枷を着けて頂きたかった程に。だから、名を呼んで最後の縛りをして頂くつもりだ。」
ビクトラは冷めた視線でリャーレを見た。
お前とは違うと突き離した。
「朱雀さん、朱雀さんがそんな事を?何故、、何故皆様を縛る必要があったのでしょうか。私はただ、皆様に帝都まで連れて行って欲しかっただけなんです。隷属なんて、、」
ヤバいなぁー。これ。
隷属って、真名って何?って聞いたら、テュルケットの子供なのにそれを知らないって、コイツ偽物かもってならない?
隷属して欲しくないって言ったら、何言ってんだ?って顔しそうだし。
隷属って言葉がなぁ、強すぎない?
朱雀がそうさせたならビクトラさんだけでも受けた方が良いのかな?
知ったかぶった方がいいのかなぁ。うーーーん。どうしたら良いんだ。
「隊長、私も分からないのです。何故、私の魔粒子がこうもグレース様に奪われ、グレース様の魔粒子と混じって私に満ちるのか。腹の内にある何かが従えと叫ぶのですよ。」
リャーレは鳩尾に手を当てて不思議そうな顔をした。
小屋へ入るとグレースはテーブルの誕生日席に腰を下ろした。
皆が座るのを待ったが、全員がテーブルの前で横一列になって跪いて首を垂れていた。
「あ、あの。お座り下さい?その様な場所で跪かれてもお話が出来ません。」
グレースは一瞬、ワタワタと手を振って立ちあがろうとしたが、ハッとして咳払いをして言った。
「た、立ちなさい?ゆ、許します。」
えっと、命令とかの方がこういう感じの人達には良いのよね?
対等な態度の方が、きっと苦痛だったりするのよね。多分!
私だってら天皇陛下に横にどうぞ?って言われても恐れ多くて顔上げらんないもん。命令された方が楽だわ。
そうよ、きっと彼等もそうよ!
ドヤァ!!と正解を見つけた様なグレースに、ビクトラ達は一瞬目を瞬かせたが、堪えきれずに笑ってしまった。
「な!え?何で?何か間違えましたか?」
小首を捻り、間違いを探すその姿にビクトラ達は、我が子を愛でる様な生暖かい眼差しを向けた。
「いへ、何も間違いなどございません。我々には命令して頂ければ結構なのです。我等が神よ。」
ビクトラは眩しい物を見る様に、目を細めて微笑んだ。
今だ視線だけを上げて首を垂れる部下達も、口元は緩んでいた。
「そ、そうですか。あ、ありがとう。では、お話がしたいのです。是非席に着いて下さい。これでは私が辛い。」
「畏まりました。失礼致します。全員御言葉に従え。」
それぞれが、やっと席に着いた。
「それでは、まずご挨拶を。私は唯一神テュルケットと賢帝と呼ばれしエルザードが子供、グレース•クラリス。豊穣と調和を齎す使命を頂き降下致しました。」
「降下の際は、ご挨拶もせず失礼致しました。あの時、あの場所にいらしたのは皆様なのですよね?」
ビクトラはテュルケット様の子供と言う嘘に、内心成程と得心した。
確かにその方が、テュルケット本人と偽るより信実が明るみに出た時の傷は少ない。聡いお方だ、そう思った。
グレースの言葉に皆顔を緩め微笑んでいる。しかし、グレースはその表情を疑問の顔で見つめた。
「宜しいでしょうか?」
リャーレが口火を切った。
「はい。どうぞ。」
「私は、魔導大国魔導騎士隊副隊長 リャーレ•ガードナ•トハマイカと申します。リャーレとお呼び下さい。グレース様。」
リャーレの言葉に全員がリャーレを見たが、静かに決意を固めた顔がそこにはあり、誰も何も言わなかったが、ビクトラだけがニヤリと笑っていた。
「リャーレ様、宜しくお願い致します。」
クスリと笑ったリャーレの顔は破壊力が凄まじかった。
グレースはヒュッと喉を鳴らし固まった。
「リャーレとお呼び下さい、グレース様。そして、私の名を今一度とお呼び下さい。」
何故かグレースはリャーレの言葉に逆らえない様な、逆らわせない様に意識が縛られた。全意識がリャーレへと向かう。縛り上げその心臓の鼓動を奪い取り、自分の物と一つにしたい。そんな事を考えていた。
「は、はい、、リャーレ•ガード、、」
「やめろ!!!」
名を言い切る前にマラエカが遮った。
マラエカとピショットはリャーレを睨みつけると、リャーレはやれやれと手を振った。
「軍罰物だ!リャーレ、貴様なにを考えている!?」
マラエカが叫んだ。
リャーレは静かにビクトラを見据えて言葉を紡いだ。
「だって、狡いじゃないですか?隊長。隊長は枷をしてる。そうでしょ?本当なら真名を使わなくても隷属は出来る。なのにあの時貴方は真名を全員の前で曝け出した。それはグレース様の物となったと宣言した様な物だ。真名を使って隷属される事の意味は誰もが知ってる。」
ビクトラは応えなかった。
グレースは訳が分からないといった顔をして、空気がおかしい事に慌てていた。
「た、確かに、隊長が隷属されているのを我等も理解した。しかし、お前の其れは強制だ。グレース様の前で口にするのは申し訳ないが、強姦と同じだ!」
ご、ごうかん!?
物騒なワードがブッ込まれたんですけどぉぉー?
え?何?名前呼んだらアウトなの?おちおち名前も呼べないなんて、息苦しい!!!
隷属とか真名とか、訳が分からん!
くそぉーーー、この世界の常識が分からなすぎる!!
「隊長とて、同じでしょ?隊長はまだ鍵を持ってらっしゃる。私には見えるんですよ。エルフですからね。合意の隷属では無かったはずです。」
マラエカとピショットはビクトラを驚愕した面持ちで見た。
しかし、ビクトラは顔色を変えずにグレースを見つめた。
「確かに、グレース様には許可を得ずに隷属させて頂いた。しかし、それは朱雀にそれを求められたからだ。勿論、私はそれを拒否するつもりも無かった。出来れば、グレース様に枷を着けて頂きたかった程に。だから、名を呼んで最後の縛りをして頂くつもりだ。」
ビクトラは冷めた視線でリャーレを見た。
お前とは違うと突き離した。
「朱雀さん、朱雀さんがそんな事を?何故、、何故皆様を縛る必要があったのでしょうか。私はただ、皆様に帝都まで連れて行って欲しかっただけなんです。隷属なんて、、」
ヤバいなぁー。これ。
隷属って、真名って何?って聞いたら、テュルケットの子供なのにそれを知らないって、コイツ偽物かもってならない?
隷属して欲しくないって言ったら、何言ってんだ?って顔しそうだし。
隷属って言葉がなぁ、強すぎない?
朱雀がそうさせたならビクトラさんだけでも受けた方が良いのかな?
知ったかぶった方がいいのかなぁ。うーーーん。どうしたら良いんだ。
「隊長、私も分からないのです。何故、私の魔粒子がこうもグレース様に奪われ、グレース様の魔粒子と混じって私に満ちるのか。腹の内にある何かが従えと叫ぶのですよ。」
リャーレは鳩尾に手を当てて不思議そうな顔をした。
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