神々にもてあそばれて転生したら神様扱いされました。

咲狛洋々

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新生編

欲しい物

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 グレースは朱雀の身体に跨って、拳をその胸に何度も叩きつけた。
朱雀が欲していたのは、理性的なグレースだ。そう理解したグレースは己の本能のままに泣いて罵った。グレースは決して、眠れるグレースを蔑ろにしたり、消したいと思っていた訳ではない。むしろ、理性に縛られて自身の在りどころを失った彼女を助けたいと思っていた。けれど、朱雀の偽りのない拒絶にその想いも貶された気がして、全てを手放したい衝動に駆られる。

「分かった。もういいよ、お前は要らない。俺一人で行くよ。」

グレースは朱雀から離れると、本殿へと駆け出した。走りながらグレースは、冷静になり考えを纏めようと思った。本殿横の池がいい。あそこは社の影になってて見つかり難いし。そしてトボトボと重い足で向かう。

「ふぅ。あの鳥頭。何だってんだ。あのタイミングで気付くかな?普通。」

池を眺めてそっと水にグレースは触れた。
その冷たさが心地良くて手の平を水に浸けて堪能する。

俺は何で朱雀の言葉に傷付いたのかな。
要らないって言われたからかな?
グレースも、ムカつく位に俺を無視して忘れてたしなぁ。
辛いな。要らないって思われるのは辛い。
しかも、それをあのアホウドリに言われるんだから。
嫌になっちゃうよ。

「グレース?どうしたんだい。そんな所で蹲って。」

あぁ、美しい神様だな。神様はその御心にあった美しさを容姿にもつという。側に近寄った大国主様は美しかった。眩しすぎてそれ以上目を合わせられない。

「いえ、もうそろそろ、ここともお別れだと思いまして。」

もう、人界に行けばここに戻ってくることはないだろう。
そう思うと、たったの三間がとてつもなく幸せな物だったと、グレースはその思い出を噛み締めた。

「君はグレースの本心だ。だから、決して卑屈になるんじゃないよ?」
「君が君を嫌いになったら、グレースは潰れてしまうだろうね。その事を忘れないで。グレースは君を見つける術を知らなかっただけなのだから。」

慰めは時に人を傷付けるんですよ。大国主様。
本能は嫌われる。本能のままに生きる人間を、他者は良く思わない。

「慰めじゃないさ。朱雀がそれをグレースに教えてくれる。」

また、、心を読むのは神様の悪い癖ですね。
それにあのアホウドリにそれが出来るなんて思えないですよ。

「アホウだから。君を離さない。」

さっき拒否られたばっかりですよ。

「ふふふ。あれは単純だからね。君もグレースだと知れば慌てて探しにくるよ。」

魂が同じなの気付かないなんて、神様としてナシだと思うんですよね。

「あれと、我々を一緒にしないでくれ。あれは神獣。獣だ。」

「あははは、確かにそうだ。獣だったな。忘れてたよ。」

空のない空を見上げた。ただ霞に光が揺蕩う天界の空を。

「グレース、君が欲しいものはなんだい?」

「欲しい物ですか?」

だね。」

「特にはありませんね。今は。」

グレースの心は凪いでいた。
一点の染みも曇りも無く、只々穏やかだった。
何が欲しいのか?凪いだ心にそれ以上の物は必要か無かった。

「そうか。心穏やかなのはいい事だ。でも、刺激が無いと運命も、人生も、何も動かないよ。受け入れなさい。全てを。」

グレースの額に大国主が額を預けた。
すると、グレースの心に怒号が響いた。

「我を!!我を捨てるというのか!!グレースゥゥ!!どこだ!!我から離れるなぁぁぁぁぁ!!」

大暴れの朱雀の声が頭を劈くようにビリビリと鳴る。
ウンザリした表情でグレースは大国主の顔をみた。

「おかしく無いですか?俺が拒否られたんですけど?グレースじゃ無いって。」

「ハハハハハハ!多分、タケル辺りが教えたんじゃないかな?」

それでも、納得いかないね!
お前が、俺を、捨てたんだっ!!
何で、俺が悪いみたいになってるんだよ!最悪だよ!

そう思いながら、霞の空に焔を撒き散らし天界の空で咆哮を上げながら舞うアイツを、綺麗だと不覚にも思ってしまった。
アイツは可愛くてお馬鹿な俺の小鳥だ。

やっぱりお前が欲しいよ。朱雀。











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