神々にもてあそばれて転生したら神様扱いされました。

咲狛洋々

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神話編

無力を知る

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 この男は誰だ?何を言っているんだ。都を結界にすると言ったのか?

なぜ…都が結界になる必要があるんだ。怒りが込上げているのに体の

熱が奪われていく。

サリザンドは鎖を掴んだまま床に座り込み、ルーナは半狂乱で魔粒子を

ラファエラに流し込み続けた。

「都を守るために白虎の神核がすべてこちらに来たのだ。結界はもう保たぬ。」

「都には淀みへと繋がる泉で結界となってもらう」

皆一様に理解できない、と言った面持ちでラファエラを見つめた。

何も出来ないのかと悩んだが、それでも動かずにはいられなった。

朱雀は外へ飛び出すと西へ向かって咆哮を上げながら飛翔し、

リャーレ、コレット、ガットは淀みの結界の代替魔道具を探しに走り

出した。その場に残ったビクトラ、アガット、ルーナ、サリザンド、

騎士隊、魔導隊、特務の隊員、そして上級神官は無意識に換装し唸りを

上げる。

「お前、何を言っているのか分かっているのか?」

アガットはラファエラの顔面を殴りつけ馬乗りになると防御結界で

ラファエラを床に押し付け殴り続けた。

「答えろ。なぜ…都を…結界にする!」

「都でなくては使えぬ権能があるからだ」

表情を一切変えずにラファエラは淡々と現実を教え込む。そこに慈悲の

欠片も存在しない。


「権能はお前に譲渡すると都は言っていた!だったらお前が行けば良いだろう!?」

ビクトラは獣化した手で、押さえ付けられたラファエラの地面横を

爪を立てて抉る。

「この権能は都の魂が持つ力。我に譲渡は出来ぬ。」

「なんだよ、その権能って」

「覆魔。これは長年グレースを隠し続けてきた都だから持てた権能だ。覆い隠し、漏らさず包み込む。」

「なら、なんで体を与える!?」

「今の都は魔粒子の塊。それでは権能が使えぬからだ」

「それに、先ほど都との魔粒子を補給する繋がりが切られた。急ぎ精神を繋ぐ器が必要だったのだ。」

サリザンドは不意にガーライドナイトでのラファエラの言葉を思い

出し、震える手で鎖を掴み這いずりながらラファエラの顔に自身の

顔を近づけ問質した。

「おい、都と契約した際に『第四の予言書』と言ったと聞いた。それは事実か?」

「あぁ、そうだ。」

「お…お前には…分かっていた…のか?都がこうなるという事が。」

「エルザードの残した予言書には、都とグレースの事は記載されていない。記載されているのは、これから起こる事象の結果だけだ」

「我はその結果を導き出すいくつもの道を選択肢として都に提示した。その中で都が選んだ道がこれだっただけだ。」

「都は…知っているのか?自分が結界となる可能性があったことを。」

「最悪そうなる可能性がある。という事は説明した。そして都も理解していた。」

「もちろん我も都もそんな事は望んではおらぬが、この世界の維持と自身の存在を天秤にかけた時、都は迷わず選択した。」

「『やる』と。」

ビクトラは完全獣体化になり叫んだ。

「だぁから!なんでっ!それをっ!お前等だけで決めるんだ!」

「では聞くが、他に策がだせたのか?碌な権能も、神力も、加護も持たぬお前等に神の怒りを抑える策があったのか?」

答えを出せないビクトラをラファエラはフンと鼻で笑い、アガットを

押しのけ立ち上がると顔の傷を治癒して部屋を出ようとした。

「なぁ、都もグレースもなんの為に戦うと決めたんだ。」

「この世界の安寧の為であろう」

「馬鹿言えよ。二人が居なくても安寧位俺らで何とでもなるわ!ちげーだろ。二人は俺達と、家族になる為に戦ってるんだろ!?」

「なのに!お前が与えた選択肢のせいで都はっ…諦めたのかよ?グレースやルーナ、サリザンド、朱雀、アガット、俺を…諦めたのか?」

「そうだろうな。そういう事なのだろう。我は都の決定に従うだけだ、それが都の最善だと理解した。」

ラファエラは作戦室を出ると、一人教会へと向かった。

誰もが自信の無力さに拳を握りその場から動けなかった。

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