神々にもてあそばれて転生したら神様扱いされました。

咲狛洋々

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新世界編

ガーライドナイトの消滅(1)

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 救護室でカイリとの訣別を決めたジジはタイを外すと、頬を

パンッと叩いて意識を今、この瞬間に向けた。


これからは時間勝負だと分かっていた。自身の感じた喪失感は決して

精神的な物から来ている訳では無いだろう。



「長かったが、こうなると後もう少しは時間が欲しいな」

「さて、黄龍を起こすか。」



ジジが扉を開けるのと同時に、扉が開き誰かとぶつかった。ジジが

見下ろすと、そこに居たのはカバラークであった。

カバラークはジジの顔を見るなり、その場に膝を着いて頭を下げて

いる。



「カバラーク…元気そうだな」

「ジジ様こそ……お変わり無いご様子で」

「…カバラーク、俺の呪いは解けた…カイリによってな」

「 ‼︎ そんな…なんて事を…ジジ様、何故その様な事に…」

「はぁ…何でだろうな?積年の想いが…叶ったと思ったんだけどな」

「……」

「けど、俺は後悔していない。悔やんでもいない。ただな、今は都を助ける事が最優先事項だ…アイツの魂を助けないと、カイリに使われてしまう」

「えぇ…先程、グレース様より伝言を受けました。大方の事情も聞き及んでおります。麒麟様の神核と思わしき物も見つけたと」

「あぁ…あれか。しかし、あれが使えたとしても誰もあの神核の受け皿にはなれない…ソレスやマーレスでもな」

「マーレス殿とは?」

「麒麟の神子で隠し村の村長をしている。代々麒麟の役割を村長が担っているが…無理だろうな」

「では、如何するおつもりで?」

「…黄龍オヤジを起こす」

「…では急ぎ避難の手配を致します」

「あぁ、そうしてくれ。黄龍オヤジが目覚めればカイリの肉体をなんとかしてくれるだろう」


「なんとか…とは?」


「黄龍は創世と破壊の神獣…カイリの肉体を破壊させ、天界へと繋がる道を閉ざす」

「都様の魂はどうなるのです‼︎」

「一か八かだ…上手く解離させられたなら本体のグレース神に戻せる」

「そっそんな!あの方を我々は失えないのですよ⁉︎神の加護が多く失われた今、あの方の加護が無くてはこの星は……」

「俺の知識だってな、加護と同じくらいには役に立つんだぜ」

「……は…い…御意のままに」

「さて…泉に行って、その後移動するか」







 グレースのコピーは一人本教会の泉にいた。

カイリが何をしたいのか、そもそもあれはカイリだったのか彼等には

計れず、迷っていた。


「…もう、結界も保たないね…カイリは…本当にこんな事がしたかったのかな…」

「白虎…俺は思うんだよ。この世界はそもそも限界だったんだって…
テュルケットがおかしくなったのはカイリの所為じゃ無い…天界の穢れを一身に受け止め過ぎた…この星の限界が…テュルケットを狂わせたんじゃないだろうか」

「玄武殿、一理あるかもしれません…倭の天界では、死する神はこの星への道を選びません」

「何故なら神核を残す事は穢れを遺すと同義と考えているからです…故に、子を成せず神核を引き継がぬ神は消滅を選びます…人の子が世界を愛するだけ神は生まれる…故に怖くは無いと彼等は言います」


「朱雀、それは…浄化を経て天界へと帰る神の所為だと言う事なのだろうか…それに、怖くはないのだろうか…完全なる消滅…我とて怖いと思うだろうな」

「青龍殿、浄化は簡単な事ではありません。それに未浄化のまま溜まった穢れをなんとかするのは神々の務めでもあるのだと思います。そして八百万の神々は…人の信仰と願いによって神が生まれる事の真理を分かっているのです」

「もー、どうしようも無い状況でそんな事を言っても始まらない。私達も行く?淀みに」




四聖獣の一人芝居の様なやり取りを聞いていたジジが、壁をノックして

近づいてきた。四聖獣達はびっくりしつつも、ジジの変わらぬ姿に

驚いていた。


「お久しぶりです、お元気でしたか?」

「ジジ…本当に生きていたんだな」

「…えぇ。皆さんが結界となった後もずっとこのままでね」

「しかし、そんな呪いも今や無くなり…残り火は僅かです…しかし、カイリの侍従として、彼のした事の後始末はきっちりとしなくては」


「どうするつもりだ?」

「親父に起きてもらいます。いい加減仕事をさせなくては…親父が眠りについてもう何年経ちますかね…」


ジジの安堵にも似た笑みを見て、四聖獣達はジジがこの星と天界との

繋がりを切るつもりだと理解した。それは神々の浄化を行なっても

天には帰れず、死した神々もこの世界で浄化を受けれないと言う

ことである。


「我々の…役割も、やっと終わるのか…そうか、ここで我等も死するか」







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