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52. 失恋の時①
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ジオは気づく……トーマスからの返答がないことに。
ジオは気づく……トーマスの目に涙が浮かんでいることに。
そろ~っと回した手を離すと次は首周辺に衝撃が。
レイラが首に抱きついていた。
だいぶ飲んだようで彼女の顔は赤くなっていた。それに何やらこうふわふわとしている。窘めようと口を開こうとしたが彼女のほうが先に口を開いた。
「ジオだめじゃないの~~~」
急なダメ出し。何がと言う前に再び彼女が先に口を開く。
「トーマスはね~~~この前、告白する前に失恋したんだから~~~~~」
言葉を失うジオ。
キャハハキャハハと笑うレイラ。なぜか周りの人もドッと笑っている。あまりにも失礼な行為じゃないかと少々苛つく。そんなジオの手がガシッと掴まれる。手の主を見ると首を横に振るトーマスがいた。
「いいんだジオ。俺がこの話しをするときは笑ってくれって言ったんだ」
だって……何もせずに失恋したなんて、悔しいし二度としたくない。だから笑われることで次はちゃんと行動しようと思うようにしたいんだ。それに暗い雰囲気だと…………
「泣いちゃうんだ」
目をウルウルさせる筋肉ムキムキ男に引いてしまう。その気持ちと比例するようにトーマスの目からポロポロと涙がこぼれ落ちる。
ウッ……ウッ……ウッ………… ガシッ!!
「ウオッ!!」
泣き出したかと思うと急に力強く掴まれる両二の腕。加減なしに掴まれているようで、かなり痛い。トーマスはそんなに酔っていないように見えたが、実はかなり酔っているようだ。飲み終わった酒の瓶が何本も転がっている。
「なあ聞いてくれよーー!!ジオーーー!!!」
「おお……っ。聞くぞ………っ」
大事な友よ聞くさ、いくらでも聞くとも。
だからさっさとその手を放してくれ。
トーマスは話し出す。そうあの悲しく惨めな日を。
あの日はそう……晴れた日。俺の門出を祝うにふさわしいほど晴れた日だった。
~~~~~
屋敷の階段前にてーーーーー
「この格好はどうだヒルデ」
「良い感じです」
「ホントに思ってるか?」
「良い感じです」
「俺にはお前が俺を見ず、床とにらめっこしているように見えるんだが……」
「まあ……私は使用人ですので床掃除くらいしますよ。先程ちらっと見ましたが良い感じですよ」
床の雑巾がけをしているところにやってきたのはトーマスだろうに、何言ってんだか。さっさとどこかに行って欲しい。ちなみに今日のトーマスはいつものシャツにズボンではなく、きちんとジャケットを羽織った格好をしていた。
「ちらっとかよ!もっとちゃんと見てくれ!!俺は……俺は今からサラさんに告白をしにいくんだ!この前の湖のことで俺は悟った!この世は何が起きるかわからない……と!俺でもサラさんと付き合えるかもしれない……ということに気づいたんだ」
何が起きるかわからないから後悔しないように自分の気持ちを伝えに行くのではないのかと呆れてしまう。少々ズレているようだ……おもしろいので改善不要放置でいこう。
「そうですか。行ってらっしゃいませ」
「いつもの興味津々な態度はどうした?!」
いつもサラに会いに行くときはちゃかしてきたり、いらないアドバイスをするというのに……今日は淡々としている。
「少々寝不足でして……坊ちゃまをからかう元気がないのです」
昨夜はレイラに贈る首飾りを作っていて一睡もしていない。
ーーーヒルデちゃーん……そこにおいてある本を持ってきてもらえるかしら~。
少し離れたところからミランダの声がする。ヒルデは階段の側に積まれていた本を両手でヒョイッと持つと失礼しますと言って去っていった。
「いや……元気そうに見えるけどな」
トーマスの視線の先には左右の手にそれぞれおよそ50冊ほど載せ、軽々と持ち運ぶヒルデの姿があった。
~~~~~
「いつもと違ったから絶対成功すると思ったんだよジオ~~~」
一旦止まった涙が話しているうちに再び溢れている。それにしても……元気のない使用人。相手にしてくれない使用人。それはむしろ不吉な予感に思えるんだが……。
「それなのによー……」
彼の話はまだまだ続くようだ。
ジオは気づく……トーマスの目に涙が浮かんでいることに。
そろ~っと回した手を離すと次は首周辺に衝撃が。
レイラが首に抱きついていた。
だいぶ飲んだようで彼女の顔は赤くなっていた。それに何やらこうふわふわとしている。窘めようと口を開こうとしたが彼女のほうが先に口を開いた。
「ジオだめじゃないの~~~」
急なダメ出し。何がと言う前に再び彼女が先に口を開く。
「トーマスはね~~~この前、告白する前に失恋したんだから~~~~~」
言葉を失うジオ。
キャハハキャハハと笑うレイラ。なぜか周りの人もドッと笑っている。あまりにも失礼な行為じゃないかと少々苛つく。そんなジオの手がガシッと掴まれる。手の主を見ると首を横に振るトーマスがいた。
「いいんだジオ。俺がこの話しをするときは笑ってくれって言ったんだ」
だって……何もせずに失恋したなんて、悔しいし二度としたくない。だから笑われることで次はちゃんと行動しようと思うようにしたいんだ。それに暗い雰囲気だと…………
「泣いちゃうんだ」
目をウルウルさせる筋肉ムキムキ男に引いてしまう。その気持ちと比例するようにトーマスの目からポロポロと涙がこぼれ落ちる。
ウッ……ウッ……ウッ………… ガシッ!!
「ウオッ!!」
泣き出したかと思うと急に力強く掴まれる両二の腕。加減なしに掴まれているようで、かなり痛い。トーマスはそんなに酔っていないように見えたが、実はかなり酔っているようだ。飲み終わった酒の瓶が何本も転がっている。
「なあ聞いてくれよーー!!ジオーーー!!!」
「おお……っ。聞くぞ………っ」
大事な友よ聞くさ、いくらでも聞くとも。
だからさっさとその手を放してくれ。
トーマスは話し出す。そうあの悲しく惨めな日を。
あの日はそう……晴れた日。俺の門出を祝うにふさわしいほど晴れた日だった。
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屋敷の階段前にてーーーーー
「この格好はどうだヒルデ」
「良い感じです」
「ホントに思ってるか?」
「良い感じです」
「俺にはお前が俺を見ず、床とにらめっこしているように見えるんだが……」
「まあ……私は使用人ですので床掃除くらいしますよ。先程ちらっと見ましたが良い感じですよ」
床の雑巾がけをしているところにやってきたのはトーマスだろうに、何言ってんだか。さっさとどこかに行って欲しい。ちなみに今日のトーマスはいつものシャツにズボンではなく、きちんとジャケットを羽織った格好をしていた。
「ちらっとかよ!もっとちゃんと見てくれ!!俺は……俺は今からサラさんに告白をしにいくんだ!この前の湖のことで俺は悟った!この世は何が起きるかわからない……と!俺でもサラさんと付き合えるかもしれない……ということに気づいたんだ」
何が起きるかわからないから後悔しないように自分の気持ちを伝えに行くのではないのかと呆れてしまう。少々ズレているようだ……おもしろいので改善不要放置でいこう。
「そうですか。行ってらっしゃいませ」
「いつもの興味津々な態度はどうした?!」
いつもサラに会いに行くときはちゃかしてきたり、いらないアドバイスをするというのに……今日は淡々としている。
「少々寝不足でして……坊ちゃまをからかう元気がないのです」
昨夜はレイラに贈る首飾りを作っていて一睡もしていない。
ーーーヒルデちゃーん……そこにおいてある本を持ってきてもらえるかしら~。
少し離れたところからミランダの声がする。ヒルデは階段の側に積まれていた本を両手でヒョイッと持つと失礼しますと言って去っていった。
「いや……元気そうに見えるけどな」
トーマスの視線の先には左右の手にそれぞれおよそ50冊ほど載せ、軽々と持ち運ぶヒルデの姿があった。
~~~~~
「いつもと違ったから絶対成功すると思ったんだよジオ~~~」
一旦止まった涙が話しているうちに再び溢れている。それにしても……元気のない使用人。相手にしてくれない使用人。それはむしろ不吉な予感に思えるんだが……。
「それなのによー……」
彼の話はまだまだ続くようだ。
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