公爵家の女たちは男運だけがない

たくみ

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24.恋愛相談

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 フライア公爵邸から帰宅したウィリアムは自宅の食堂の長机で一人さみしく食事をしていた。

「……様……厶様?ウィリアム様!?フォークは食べてはなりません!」

「いっ!?」

 そんな声のすぐ後に歯にガキンとした痛みが走った。肉を刺したつもりだったのだが、どこにいった?キョロキョロと見るが皿に綺麗に盛り付けられた分しかない。

「ゴホンッ。お皿をつついて口にフォークをお運びになられておりましたよ」

 呆れたように言うのはウィリアムの専属執事のカイルだ。高い身長と細身ながらもしっかりとついた筋肉、そして柔和な甘いマスクを持つ男。頭脳だけでなく武芸にも優れウィリアムが出陣する際にも共に戦うパーフェクトマンだ。


「ウィリアム様どうかされましたか?体調でもお悪いのですか?」

「いやそういうわけではないのだが……こうなんか頭から離れてくれないというか」

「?」

 最近彼を悩ませるようなことはあっただろうか?特になかった気がするのだが。いや、でも最近やけに機嫌が良いのほ感じる。主を心配する彼がウィリアムの様子を窺おうと盗み見ようとしたところじーっと見つめてくる視線とぶつかった。

「な、なんですか?」

「いや、その……だな。結婚生活はどうなんだ?いや、結婚は早いな……。あー……その……カイルは奥方といると心躍るか?彼女のことを考えると落ち着かないとか……」

 その言葉にカイルは目を瞠る。自分が結婚することはや3年。恋人ができたと報告した4年前もそうかの一言。恋愛に関して無!無!無!感情人間かと思い心配していたのだ。

「なぜ泣いている!?」

 カイルの目からポロポロと涙が溢れ始めたのを見て衝撃のあまりウィリアムはカシャンッとテーブルの上にフォークとナイフを落としてしまう。

「う、嬉しいのです……!武芸馬鹿の戦馬鹿のお家馬鹿のウィリアム様がついに恋愛に興味をもたれるなんて……!感無量ですぅぅぅぅ!」

 おいおいとハンカチを目元にあてながら泣くカイルにウィリアムはオロオロと手を彷徨わせることしかできない。

「で、先程の質問ですが生憎心躍ったり落ち着かないといったことはございません」

 すんと急に涙を止め話し始めたカイルにウィリアムは身体をビクリと震わせる。

「4年も共に過ごしてきたのです。お互い必要な存在ではありますが、ドキドキ感というよりもいることが当たり前といった感じでしょうか」

「そうか」

「ですが私とウィリアム様は違います。ウィリアム様のご様子から察するに確実に恋に落ちていると思われます」

「やっぱり……」

 最初出会ったときから心に感じるものがあったが、彼女と過ごす時間が増える度に共にいないときでも彼女のことが頭から離れなかったり、思い出が頭を過ったりする。

「で?」

「で?」

「で?」

「?」

 部屋の中が困惑した空気で満たされる。特にウィリアムからの。いや、そんな顔をされても困る。ここまできたら聞きたいことなど一つしかないでしょうよ。

「いや、お相手を教えてくださいよ」

「え!?」

 ぼっと頬を赤らめる主人にちょこっと可愛いなとか思ってしまった。

「相手を知ってこそアドバイスできることがあるかもしれないでしょう?」

「……………………………リリベル・フライア公爵令嬢だ」

「おー!」

 なんだそのおー!は?なんのおー!なんだ?

 というかニヤニヤするのをやめろい。

「どこがお好きなんですか?」

「どこって……」

 文句なしに美しい顔、抜群のスタイル、見惚れるような剣技、美しい動作、頑固過ぎるほどの強い意志、完璧な美から生み出される可愛らしさ、口の悪さ、思いっきりの良さ、スカートから覗く艶めかしく白く輝く太もも……

「ちょいちょいちょいちょいウィリアム様変な方にいっております。というか口に出ております。ウィリアム様の口から女性の太ももの話を聞きたくございませんでした」

「き、聞かなかったことにしてくれ」

 普通に恥ずかしい。思わず両手で顔を覆ってしまう。

「お相手はフライア公爵令嬢様でしたか……完璧な令嬢として名高い方でございますね。公爵様も奥方様も大賛成でございましょう」

 公爵家同士の婚姻となれば権力が集中すると思われそうだが、帝国では皇家と公爵家は強い絆で結ばれている。公爵家の強化は皇室にとっても喜ばしいことと言える。

 誰からも反対の声は上がらないだろう。

「一番の問題が残っている」

 多くの者がリリベルとウィリアムの仲を応援してくれている。問題は――

「彼女が婚約破棄をしないということだ」

 ああ、と納得顔のカイル。マルコは良くない意味で有名人なのだ。

「大丈夫ですよ。リリベル様もウィリアム様という素敵な男性と出会った以上義妹馬鹿などポイポイポーイしますよ」

「そうだ彼女がポイポイポーイしなければならない」

 いや、なんか可愛いんですけど。

 真面目な顔して自分の言葉を繰り返す主人にカイルは笑いを堪える。

 プルプルと震えるカイルに気づかないウィリアムは食事中だということも忘れ手を組み深い思考に入る。

 公爵家と伯爵家。タバサ伯爵家のリリアムへの言動は酷い。あれを侮辱と言わずしてなんと言うのか。ただただリリベルの温情で無事なだけ。彼女が婚約破棄を申し出ればすぐに実行されるはず。

 そもそも褒められた行いとは言えないが伯爵家に問題がなくとも公爵家の独断で破棄することなどできるのだ。それ程の力の差が二家の間にはある。

 即ちリリベルの心を動かせば良いのだ。

 だがそこが問題で――。

「男なら真っ向勝負でしょう。というかまた声に出ていましたよ」

 カイルの上げた声にウィリアムは再び身体をビクリと震わせる。

「剣か……」

「違います、違います」

「男らしく自分のために破棄してくれと言えばいいんですよぉ」

「まじか。そんなことでいいのか?」

「そんなこと?はっはっはっ!これが難しいんですよ?」

「そうなのか?」

 ニンマリと自信満々に頷くカイルに不思議顔のウィリアムだったが、彼は後に思い知る。彼の言葉が事実だったと。

 
 

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