公爵家の女たちは男運だけがない

たくみ

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25.大声ラッシュ

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 うーん。昨日暴れまくったからだろうか、今日は朝から清々しい気分だ。建築から100年近く経っているのに今尚真っ白な学園がいつもより輝いて見える。学生たちの間で交わされる挨拶は鳥のさえずりのよう。

「リリベル!」

「うおっ!」

 ご機嫌で学園の廊下を歩いていたリリベルだったが背後から突然大声で呼ばれ足を止め振り返る。

「セイラが熱を出したんだ!」

 振り返る前からわかっていたが、いきなり怒鳴りつけるように人の名前を呼ぶやつはこいつ――マルコしかいない。相変わらずセイラセイラとうるさい男である。

「セイラが君のせいだと言っているんだ!一体セイラに何をしたんだ!?」

 はっはっはっはっ!いい加減にしろよ、ごるぁ。

「昨日あなたの目の前で別れてからは会っていないわよ。繊細なセイラさんは惚れてる相手に冷たくされてショックで寝込んでしまっただけではないの?」

「そんなわけないだろう?そもそもセイラはウィリアム様に惚れてなどいない。君のせいだと言っているんだから君のせいだ」

「セイラさんの心が私にわかるわけないじゃない。私は心当たりがないから詳しく本人に聞いてきたら?」

「それもそうだ」

 ではと言って去っていくマルコには苛立ちしか感じない。


 せっかく良い気分だったというのに最悪だ。さっきまで輝いていた校舎がくすんで見える。イライラしながら歩いていると――

「リリベルぅ!」

 おう。マルコだけではなかった。この男なら朝から大声で人を呼び止めるだろう。助けを求めるように人を大声で呼び止めるのはこの方。

「ご機嫌ようハリス殿下」

「ご機嫌ようリリベル。早速本題に移るが金を貸してくれ」

 ハリスはくるりと振り向いて挨拶をしたリリベルに超超超真剣な顔をして言った。

 ヒュゥーーーーと二人の間を冷たい風が通り抜ける。

「なんで皇子が一貴族に金を借りるのよ」

「レイチェルに買ってやりたい宝石を見つけたんだけど、この前ちょこぉっと自分の服に使っちゃって足りないんだよ。だから貸してくれ。返すから。たぶん」

「愛する人に渡すプレゼントを買うお金を他の女から借りるなんてあんた正気?レイチェルが喜ぶと思っているの?」

「俺とお前が黙っていればノープロブレムだ」

「はっはっはっ!私が黙っていると思っているの?」

「はっはっはっ!思うものか」

 再び両者の間にヒュゥーーーーと冷たい風が通り抜けた。

 じゃあなぜ頼みに来た。こめかみに青筋を浮かべながらリリベルはニッコリと笑う。

「答えは一つね。宝石は諦めな」

「うむ、ではやはりギャンブルだな」

「は!?」

「ではまたな、ケチ子」

 そう言い捨て走り去って行くハリスに色んな意味で開いた口が塞がらないリリベルだった。本当にあいつは皇子なのか。

 彼のお陰で暗い気持ちはどこへやら状態となったが、どっと疲れを感じるのはなぜだろうか。

 今度は足が重くなるのを感じながら歩く。



「リリベル!」

「うおお!?」

「なんだなんだ!?」

 3度目の大声に上がる悲鳴と狼狽える声。

 リリベルが振り返り、お互い瞬きもせず見つめ合うこと数秒、2人の時が動き出す。

「びっくりしたぁ」

「そんなに驚かせてしまったか?」

「いえ、まあちょこっと色々とあったものですから。それでウィリアム様何か御用ですか?」

 彼であれば変なことは言うまい。安心して心穏やかに話を聞く姿勢となるリリベルだった……………



 が。


 え、なんで何も言わないのかしら。



 ウィリアムは何やら口をもごもごさせるばかりで肝心の言葉が出てこない。

「大丈夫ですか?虫歯ですか?」

「いや、そうではない」

 おおそれは良かった。彼に虫歯とか超絶似合わない。お口をパカっと開いたら黒いものとこんにちはなんて嫌だ。

「リ、リリベル!」

「うおっ!」

 再び聞こえた大声に僅かに仰け反る。今日のウィリアムは少々様子がおかしいよう。

「昨日の今日ですまないが、今日も少し時間をもらえないだろうか?」

「え?え、ええ、構いませんよ」

 その言葉にウィリアムは明らかにほっとした表情を見せるがそこであることを思い出す。

「あ、今日は―――――を予定していたんでした。大事なお話ですよね?その後では遅い……ですよね?」

 上目遣いでこちらを窺うリリベルにウィリアムの心臓はドクンドクンと喧しくなる。

「リリベルの時間が大丈夫であればその後でも問題ない。いや……よかったらその予定私も一緒にいいだろうか?」

「あらよい考えですわね!大歓迎ですわ!」

 その後各自の教室へ向かう2人。

 リリベルは先程までの暗く重苦しい足取りはどこへやら、放課後が楽しみだと軽い足取りで教室へ向かった。






 
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