勇者の曾孫の迷走録

たくみ

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35.魔王復活①

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 ~アレンの寝室にて~


『アレン~アレン~起きろ~』

(……なんだ?人が気持ちよく寝ているというのに…………)

『神様シカトすると天罰が下るぞ~』

(神様―――ああこの声はあの神様か。じゃあいいや。寝よう)

『若ハゲにするぞ~』

「ごきげんよう神様。なんの御用でしょうか?」

 若ハゲは嫌だ。シュタッとベッドの上で正座して前を見ると子供の姿の神様がふわふわと浮かんでいた。

『アレンはハゲは嫌いかい?イケメンだからハゲも似合うと思うぞ』

「若いうちはふさふさでいたいです。それでこんな夜中に何用ですか?ていうかいちいち起こさなくても心とか頭に語りかけるとかできないんですか?俺眠いんで、そっちの方が良かったです」

 ちらりと窓の方を見ると外は真っ暗だった。

「君……なんか私の扱い雑じゃない?私に会えるなんて激レアなんだよ?神様が人間の前に降臨するとか超ヤバイんだからね」

「チョーヤバー」

「なんだよその気のない返事。せっかく魔王が復活したって知らせに来てやったのにぃ!」

「魔王復活?ああ、お決まりですね」

「そうだね。なんでなんだろうね?」

「神様もわからないんですか?」

「うん。この世界は創ったけどその後は基本的に放置だからね」

「へー」

「なんとも危機感のない反応だね」

 ふわぁとあくびをするアレンにつまらなそうな目を向ける神様。

「だってそれこそお決まりでしょう?かつて魔王を倒した勇者の子孫が復活した魔王を討ち倒す」

「まあね」

「ということで俺の出番はなさそうなのでお休みなさい。あ、リカルドには伝えときますから安心してくださいね」

 そう言い再び布団に横たわるアレン。すぐに寝息が聞こえてくる。

「…………………………」

 本当に寝ちゃったよ。神様を前にしてなんという図太い男なのか。神様はすやすやと眠るアレンの頬をツンツンとつつきながら呟く。

「勇者の血縁者が魔王を倒すのがお決まり。


 だけど……


 身近な人が巻き込まれるのもセオリーだよ?」


 そして、神様はその場から姿を消した。





~~~~~~~~~~



 夜が明け、学校に行き神様とのやり取りをリカルドに話すものの彼の反応は薄かった。

「へー。魔王が復活するんだ」

「ああ、リカルド頑張れよ」

「何で俺が頑張るんだ?」

「だって英雄の曾孫様だろう?」

「?そういうのは騎士の役目だろ?」

「そうか?」

「え、違うのか?」

 お前は何を言っているんだとお互いを見る俺たちに声がかけられた。

『何してるもふ?熱く見つめ合って……は!隠れた恋心もふ?』

 急に現れたのはもっふんだった。

「「違う」」

 やめてくれ。ただでさえ先程から何やらニヤニヤとこちらを窺い見ながら笑う女生徒が数人いるのが気になっているのだ。

『なんだ、つまらないもふ』

「「なんだとはなんだよ」」

『超仲良しだもふ。やっぱり両思いもふ』

「「…………」」

 俺達は思わず再び視線を合わせた。それと同時に熱い視線が数多から飛んで来る。慌ててさっと視線を逸らしたアレンとリカルド。

「んんっ!もっふんはどう思う?魔王の気配を感じたりするか?」

 俺は強引に話を変えた。

『んー……するといえばするもふ。でも…………』

 おお、やっぱり何やら怪しい気配はあるようだ。だが何やら歯切れが悪い。

『なんか弱い感じもふ。いるようないないような微妙な気配もふ』

 ?もしかしたら今力をつけているところなのかもしれない。一度滅ぼされたのだ。なんらかの方法で復活したものの前程の力を取り戻すことはできていないよう。

「じゃあ、まだまだ魔王降臨までは時間がかかるかもしれないな」

『お前たちはお気楽だな』

 もっふんとは違う威圧感のある声がした。

「ライオン丸」

 リカルドと契約している精霊獣のライオン丸だった。今日もふさふさの毛並が思わず触りたくなるほどに見事だ。

『魔王は魔の王。人間を滅ぼす力を持つのだぞ。かつてやつのせいでどれだけの人の命が奪われたか……。そんな他人任せな態度で皆の命を救えると思っているのか?もっと危機感を持て!だいたい――――』

 その後も続くグチグチと長いライオン丸によるお説教。彼が言うことは正しい。彼の感覚こそが普通だと思う。だが、どこか他人事というか、どうにかなるだろうという気持ちが拭えない。

『というわけで私がお前たちを鍛えてやる』

「「は?」」

『光栄に思え。授業が終わったら公爵邸の訓練場に集合だ』

 そう言い放ち、ライオン丸は尻尾をゆらゆらと揺らしながら去って行った。

「えー、なんで俺まで?」

「いや、だから魔王を倒すのは騎士の仕事だろうが」

 アレンとリカルドはそれぞれぶつぶつと言いながら、授業を終えた後公爵邸の訓練場に向かった。





 そして、流石は高位の精霊獣様。ライオン丸にこてんぱんにやられた。

 
 もう彼が倒してくれればいいんじゃないだろうか。


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