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我儘なメイベルお嬢様
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そんなネイサンだけど、すごく信頼はしている。だって有能なのに、うちで雇われてくれているんだもん。
実は私は嫌われ者。どれくらいかというと、陰で悪役令嬢とまで囁かれているくらい。
前のメイドたちとも喧嘩ばかりだったわ。だからたぶん……使用人が集まりにくいのは、私のせいね。
別に意地悪とかはしてないわ。ただちょっと厳しくお仕置きしただけよ。縛り上げてね!
だいたいお兄様にベタベタしすぎなのよね! お兄様ったら、メイドまでお姫様扱いするんだもん、何のために雇っているか分からないわ!
まあどちらかと言えば、悪役令嬢なんて呼ばれているのは、主に学院でなんだけどね。
私、生まれながらに、人に不快感を与える性格みたいなの。態度が感じ悪いみたいで……
「見下したような目で見るんじゃないわよ!」
と卒業していった先輩たちからも散々言われたわ。やだ、別に見下してなんかいないわよ? むしろ眼中に無いというか……。
皆、バカなんだもん。
学院の薬学科は、昔はすごくレベルが高かったと聞くのに、私が入る何年か前から女生徒の質が下がったの。なんかこう、ウェーイ系が増えたっていうか……。
本気で勉強しないなら、茶道科や華道科、社交ダンスクラブにでも入って花嫁修業すればいいのよ。
私の夢はね、この王都で薬局を開くこと。錬金術科の友人と一緒に、起業しようって話し合っているの。
その昔、私の母方のお爺様とお婆様は、王都で有名な薬屋さんだったんだって。
王室御用達だったのに、お母様がヘマして追放されちゃったとか。
お父様は「違う、そうじゃない、ママたちは悪くないんだ」と、お母様の言葉を遮っていたけど、本当のところ何があったのかしら。
お爺様とお婆様に聞いたら、当時の陛下の言いがかりじゃないかな、とおっしゃっていたけど。
※ ※ ※
夏の初め、お兄様から速達が届いた。ついにこのタウンハウスに婚約者を連れてくる、ですって!
今は実家にいるお兄様。両家の挨拶や結婚式の日取り決め、結婚後の身の振り方について、話が纏まったと書いてある。
さらには新居となる屋敷の建設手続き──婚約者は結婚後、ウィンドカスター辺境伯の城があるアボック市に住むということだ。
城には住まないようだからまだ良かったけど……実家に帰るたびに、お兄様を唆した女と顔を合わせるなんてごめんだからね!
お兄様、女関係は酷くて、歴代の彼女はどいつもこいつもおつむとお尻の軽そうなパリピばっかりだったものね!
そんな人が辺境伯夫人ですって!?
ネイサンがまた便箋を渡してきた。いやよ、惚気話なんて読みたくないわ!
でも例によってグイグイ押し付けてくる。
『僕のルシールはね、すごく現実的な人でさ。どうせずっと砦にいるなら新居は要らなくない? 二人で砦に住もうよ、なんて言うんだよ。
冗談じゃない。砦で新婚生活なんて、あんなことやこんなこともできないじゃないか! 壁が薄いからね!
でもようやく了承してくれて、建設業者も最高ランクのところに決まったんだ。
後は完成を待って引越しだからね。落ち着いて式に臨めそうだよ。
式は王都でやるから、それまでに一度食事会をしようね!』
私は怖気を震った。
お兄様には前にも言ったと思うけど、私はあんなアバズレの誰かとの結婚は許しませんからね!
黙ってペンを取ると『くたばれ』と書いてネイサンに渡す。
「出しておいて」
「……お嬢様」
「絶対に会いません!」
何よりも、他の人を私より大事にしているお兄様なんて見たくないもん。
結婚式にだって出ないんだから!
「お嬢様、いいかげんになさいませ」
ネイサンに窘められたけど、私は意に介さなかった。
こうなったら梃子でも動かないと知っているネイサンは、深々とため息をついて大人しく手紙を受け取った。
小さく、どこまでブラコンなんだ、とこぼしたネイサン。
声、聞こえているわよ!
実は私は嫌われ者。どれくらいかというと、陰で悪役令嬢とまで囁かれているくらい。
前のメイドたちとも喧嘩ばかりだったわ。だからたぶん……使用人が集まりにくいのは、私のせいね。
別に意地悪とかはしてないわ。ただちょっと厳しくお仕置きしただけよ。縛り上げてね!
だいたいお兄様にベタベタしすぎなのよね! お兄様ったら、メイドまでお姫様扱いするんだもん、何のために雇っているか分からないわ!
まあどちらかと言えば、悪役令嬢なんて呼ばれているのは、主に学院でなんだけどね。
私、生まれながらに、人に不快感を与える性格みたいなの。態度が感じ悪いみたいで……
「見下したような目で見るんじゃないわよ!」
と卒業していった先輩たちからも散々言われたわ。やだ、別に見下してなんかいないわよ? むしろ眼中に無いというか……。
皆、バカなんだもん。
学院の薬学科は、昔はすごくレベルが高かったと聞くのに、私が入る何年か前から女生徒の質が下がったの。なんかこう、ウェーイ系が増えたっていうか……。
本気で勉強しないなら、茶道科や華道科、社交ダンスクラブにでも入って花嫁修業すればいいのよ。
私の夢はね、この王都で薬局を開くこと。錬金術科の友人と一緒に、起業しようって話し合っているの。
その昔、私の母方のお爺様とお婆様は、王都で有名な薬屋さんだったんだって。
王室御用達だったのに、お母様がヘマして追放されちゃったとか。
お父様は「違う、そうじゃない、ママたちは悪くないんだ」と、お母様の言葉を遮っていたけど、本当のところ何があったのかしら。
お爺様とお婆様に聞いたら、当時の陛下の言いがかりじゃないかな、とおっしゃっていたけど。
※ ※ ※
夏の初め、お兄様から速達が届いた。ついにこのタウンハウスに婚約者を連れてくる、ですって!
今は実家にいるお兄様。両家の挨拶や結婚式の日取り決め、結婚後の身の振り方について、話が纏まったと書いてある。
さらには新居となる屋敷の建設手続き──婚約者は結婚後、ウィンドカスター辺境伯の城があるアボック市に住むということだ。
城には住まないようだからまだ良かったけど……実家に帰るたびに、お兄様を唆した女と顔を合わせるなんてごめんだからね!
お兄様、女関係は酷くて、歴代の彼女はどいつもこいつもおつむとお尻の軽そうなパリピばっかりだったものね!
そんな人が辺境伯夫人ですって!?
ネイサンがまた便箋を渡してきた。いやよ、惚気話なんて読みたくないわ!
でも例によってグイグイ押し付けてくる。
『僕のルシールはね、すごく現実的な人でさ。どうせずっと砦にいるなら新居は要らなくない? 二人で砦に住もうよ、なんて言うんだよ。
冗談じゃない。砦で新婚生活なんて、あんなことやこんなこともできないじゃないか! 壁が薄いからね!
でもようやく了承してくれて、建設業者も最高ランクのところに決まったんだ。
後は完成を待って引越しだからね。落ち着いて式に臨めそうだよ。
式は王都でやるから、それまでに一度食事会をしようね!』
私は怖気を震った。
お兄様には前にも言ったと思うけど、私はあんなアバズレの誰かとの結婚は許しませんからね!
黙ってペンを取ると『くたばれ』と書いてネイサンに渡す。
「出しておいて」
「……お嬢様」
「絶対に会いません!」
何よりも、他の人を私より大事にしているお兄様なんて見たくないもん。
結婚式にだって出ないんだから!
「お嬢様、いいかげんになさいませ」
ネイサンに窘められたけど、私は意に介さなかった。
こうなったら梃子でも動かないと知っているネイサンは、深々とため息をついて大人しく手紙を受け取った。
小さく、どこまでブラコンなんだ、とこぼしたネイサン。
声、聞こえているわよ!
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