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第三章 わんわん君の断罪は遅れてやってくる
9.カラムとの帰り道
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夕暮れの光は、この下町の古くて高い建物にはほとんど届かない。
薄暗い道を、迷いなく歩いていく。もう何日も来ているから慣れたもので、二人とも足並みが乱れることはなかった。
「なあ、カイル君。きみ、やっかみ受けてるだろ」
はっ、と、カラムさんの顔を見る。にやっと、カラムさんは笑っていた。
やっかみって、なに。
「やっかみってのはな、うーん、なんだ、嫉妬、みたいなものだ。これもわからんか?……要するに、羨ましがられてないか、ってことだな!」
こくり。頷く。その通りだ。
「リーナんちに行ってるってばれて、なんか、言われたんだ。
リーナがかわいいから尻尾振ってるんだろ、犬みてぇにって……俺の、ライバルだと思ってた奴が」
「それで、どうしたんだ」
「なんか、これまで互角だったのにやけに攻撃が軽くてさ、あいつに気がすむまで攻撃させておいて、一撃で勝負決めたよ。今度、ちゃんとあいつの話、聞いてやらなきゃな」
ふっ、と、カラムは笑う。
「聞いて、どうするんだ。恋の応援でもするのか?君は、リーナをどう思ってるんだ?」
えあ、うーん。ちょっと顔が熱い。
「……かわいいと、思うよ。そもそもクラスで一番可愛い子だから、ああいう噂が流れるんだよな。
でも、だからなんなんだよ。その前に、謝らなきゃなんねぇのに、全然あいつ話きかねえんだよ」
ははっ、と、笑って、カラムさんは上機嫌だ。
「それが断罪なのさ。わかるか?
リーナが君で遊んですっきりする。君は謝れなくてもやもやする。結果、つきまとうことになって、ずっといらいらしてることになるんだ。
……リーナも、えぐいことをする」
まあ。その悪い顔含めて俺たちのかわいいリーナなんだけどな、と、カラムさんは言う。
そうやって、ふざけていたから、君はクラスで仲間外れにはなってないだろう?と。
「それなのに、男連中の嫉妬でバランスが崩れ始めてるんだな。これは、女連中には助けてやれんぞ。
君は、どうするんだ?」
え、どうするって。
今まで普通に過ごせてたのって、リーナ、被害者が直接ばかにして許している雰囲気になってたから、なのか。
そこに、今更贖罪なんか始めたから?
右手が、じくじくしてきた。
そうじゃねえ。そうじゃねえのに。
まだ、謝れてねえのに。
「まあ、どうするかは君の自由だ。
学校って言っても、鐘が二つ鳴るくらいで終わるものだろう。
何もしなくてもいい。かかっていってもいい。男の子だから、女のロザリーに代弁してもらうのもダメだ。どうするかは、君次第だな」
がしがしがし。また、乱暴に頭を撫でて、カラムは俺を部屋に送り届けた。
頑張れよ、といって去っていくカラムは、やっぱりかっこよかった。
父さんのつぎくらいには。
薄暗い道を、迷いなく歩いていく。もう何日も来ているから慣れたもので、二人とも足並みが乱れることはなかった。
「なあ、カイル君。きみ、やっかみ受けてるだろ」
はっ、と、カラムさんの顔を見る。にやっと、カラムさんは笑っていた。
やっかみって、なに。
「やっかみってのはな、うーん、なんだ、嫉妬、みたいなものだ。これもわからんか?……要するに、羨ましがられてないか、ってことだな!」
こくり。頷く。その通りだ。
「リーナんちに行ってるってばれて、なんか、言われたんだ。
リーナがかわいいから尻尾振ってるんだろ、犬みてぇにって……俺の、ライバルだと思ってた奴が」
「それで、どうしたんだ」
「なんか、これまで互角だったのにやけに攻撃が軽くてさ、あいつに気がすむまで攻撃させておいて、一撃で勝負決めたよ。今度、ちゃんとあいつの話、聞いてやらなきゃな」
ふっ、と、カラムは笑う。
「聞いて、どうするんだ。恋の応援でもするのか?君は、リーナをどう思ってるんだ?」
えあ、うーん。ちょっと顔が熱い。
「……かわいいと、思うよ。そもそもクラスで一番可愛い子だから、ああいう噂が流れるんだよな。
でも、だからなんなんだよ。その前に、謝らなきゃなんねぇのに、全然あいつ話きかねえんだよ」
ははっ、と、笑って、カラムさんは上機嫌だ。
「それが断罪なのさ。わかるか?
リーナが君で遊んですっきりする。君は謝れなくてもやもやする。結果、つきまとうことになって、ずっといらいらしてることになるんだ。
……リーナも、えぐいことをする」
まあ。その悪い顔含めて俺たちのかわいいリーナなんだけどな、と、カラムさんは言う。
そうやって、ふざけていたから、君はクラスで仲間外れにはなってないだろう?と。
「それなのに、男連中の嫉妬でバランスが崩れ始めてるんだな。これは、女連中には助けてやれんぞ。
君は、どうするんだ?」
え、どうするって。
今まで普通に過ごせてたのって、リーナ、被害者が直接ばかにして許している雰囲気になってたから、なのか。
そこに、今更贖罪なんか始めたから?
右手が、じくじくしてきた。
そうじゃねえ。そうじゃねえのに。
まだ、謝れてねえのに。
「まあ、どうするかは君の自由だ。
学校って言っても、鐘が二つ鳴るくらいで終わるものだろう。
何もしなくてもいい。かかっていってもいい。男の子だから、女のロザリーに代弁してもらうのもダメだ。どうするかは、君次第だな」
がしがしがし。また、乱暴に頭を撫でて、カラムは俺を部屋に送り届けた。
頑張れよ、といって去っていくカラムは、やっぱりかっこよかった。
父さんのつぎくらいには。
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