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第三章 わんわん君の断罪は遅れてやってくる
14.また帰り道で
しおりを挟む「はっはっは!そうか、そうきたか。ニムルスめ、やりやがったな。多分牽制しただけだ、それは。リーナに近づくなってな。カイルが気にすることじゃねえさ」
酒場からの帰り道。いつもみたいに、カラムさんが送ってくれていた。学校であったことを話すと、すごく楽しそうに笑うんだ。
「え、でも、俺が手を出さないように」
くっくっく、と、まだ笑っている。
「いや、机に落書きしてる時点で司祭サマを連れてきてたんだろ?その時に止めときゃよかったじゃねえか。カイルが気づく頃には対処できたんだよ本当は」
は。そうか。もう、司祭様は教室の前にいるって言ってた。じゃあ、どうして。
少しむっとする。そんな勝手な自分がいやになる。
元々は俺が悪いんじゃないか。わんわん言われるようなことをしたのは、俺だ。
ぐぬぬぬ、と、なんかよくわかんない方向に顔に力が入る。悲しいから眉毛は下がるけど、くやしいから口はへの字に。たぶん、今、俺はかなり変な顔になってる。
ロザリーのうめぼしといい勝負じゃないか?
あっはっは!と、カラムさんが大笑いしてる。やっぱり。よっぽど変な顔だったのか?
「……うめぼし第2号になってるぞ。まあ、落ち着け。司祭を挟まずに解決しようとするのはいいことだ。相談は忘れちゃいかんがな。その時、もし司祭に止めてもらっても、後で他の嫌がらせが続くだけだっただろう」
ん?そうか。そう、なのか?よくわからない。
「違い、わかるか?自分の意思で、自分の言葉を伝えないと、何も変わんないんだよ。まあ、騒動の時は、そのハンカチちゃんとニムルスが動いただけになっちまったがな。ったく、あいつめ、いいとこ取りしやがって」
……あ!ハンカチ屋!じゃなかったアリス!!
そうだ、俺、ごめんもありがとうも言ってねえ!!
「まあ、その後の剣術の時に、ザムだったか、そいつにはちゃんと話せたんだろ?みんなが見てる形でな。なら、もう大丈夫だろ」
ふるふる。首を横に振る。
「……俺、あのハンカチ屋に、何も言ってねえ……」
ぽすんと、頭に手を置かれる。
「ハンカチ屋……アリスちゃん、だろ?
いや確かその子どっかの家の侍女の子だったはずだ。ハンカチ屋じゃねえよ。いいやつじゃねえか。他のやつに貸すために、いつも何枚もハンカチ持ってんだろ?」
そうなのか。ハンカチ屋じゃねえのか。
そういやハンカチ、何枚も返してないのが、家にある。洗って干して、そのままだ。
「その子……なんかどうも賢すぎる気はするが、まあ害はないだろう。ちゃんと礼は言っとけよ」
カラムにぐしゃぐしゃと頭を撫でられて、家まで送られた。
女の子に礼って、何をすればいいんだろう?
リーナに、ごめん、すら言えない俺が。
家に帰って、母さんに、ハンカチのお礼がしたいと相談してみた。
ああ、あのハンカチの子ね。それならいいものがあるわ。
貰い物だという、質のいい刺繍糸を、母さんはハンカチと一緒に包んでくれた。
なるほど、ハンカチだけに。
よし、明日渡すぞ。渡すだけなら、うん、できる。
……たぶん。
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