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第四章 ハンカチ屋の様子見
7.様子見をやめるなんて向いてなかった
しおりを挟む授業が終わると、リーナとロザリーは連れ立って家に帰って行く。酒場で働き出してから剣術の授業を免除してもらっているカイルも一緒だ。
ニムルスは剣術の受講があるのでそちらに向かった。
よし、いい布陣だ。
計算高い私は、一緒に歩くメンバーを確認してから、ロザリーを追いかけた。
私は、リーナが困っている時に助けられなかった。私一人が庇っても、いじめの対象が私に移るだけだと思ったからだ。
でも、言葉の端々でリーナがそれを見逃してくれていることは読み取れていた。私が殴られた時、一緒に医務室に行っておしゃべりもした。
謝れてはいない。けれど、今更蒸し返すのもどうかと思うから、間違いではない、はず。
ロザリーは、転生者だ。確信できる。
あの厨二病台詞。居酒屋に関わっているらしいこと。年に似合わない、まして令嬢にはありえない、酒場で働き続ける根性。
私の境遇を話せば、日本的感性は働いてくれるはずだ。
カイルは……カイルだから。乗せられやすくて単純で、向こう見ず。だけど、きらきらして見えるくらい、とっても、素直。
女性に、ハンカチと一緒に刺繍糸を渡す意味は、たぶん知らない。あれは貴族の慣習だから。
でも、きっと、味方してくれる。
お願い、そうであって。
「待って、ロザリー!お願いがあるの」
帰り道の、大通りから少し路地に入った通り。小さな川が流れている。
できれば人目につかないところがいいと思って、あえてここにした。
振り向いたロザリーは、目を見開いて、次に、ひやりとした目を向けてきた。
……あれ?
リーナは、腕組みをして見守っている。
カイルは、オロオロしていた。
え、どうして。思っていたのと、違う。
「……どうしたの、アリス」
ロザリーは、最近手放さない魔法の杖に、手をかけていた。
まさかの攻撃体制!?どうして?私、どこで間違えた?
「あの!魔法を、教えて欲しいの。お願い!!」
がばっ!と、頭を下げる。
なんだかわからないけど、もう、お願いするしかできない。
どこで間違えたのか、さっぱりわからな……あ。
司祭様の話の、内容。私、把握してない。
何か、あったのか。
それって。
「ごめんなさい、クラスの人にむやみに教えてはならないと、言われたのです。特に、あなたには」
頭が、冷えた。
ざっと考える。様子見だけが、私の武器だ。
私を警戒する可能性。三つ、心当たりがある。
1.私が転生者だとバレてる。
一度、かなり前に、ロザリーの前で、バイト、という言葉を使っている。
ロザリーは動揺していたから覚えてないと思ってたけど、違ったのか。
でも、司祭様が知っているとは思えない。
2.ダルクが、ロザリーや酒場に悪さをしている。
可能性はある。多分どこかで悪さはしている。
でも、司祭様の話には乗ってこないはず。
3.お母さんの勤めている、ノーリス男爵家が、ロザリーの家と反目している。
……3、かな。
詰んだ。これは、ダメだ。
ロザリーの目からは、これまでにない敵意すら感じられた。
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