本編開始前に悪役令嬢を断罪したらうちでバイト始めた

作者

文字の大きさ
64 / 110
第四章 ハンカチ屋の様子見

7.様子見をやめるなんて向いてなかった

しおりを挟む

授業が終わると、リーナとロザリーは連れ立って家に帰って行く。酒場で働き出してから剣術の授業を免除してもらっているカイルも一緒だ。

ニムルスは剣術の受講があるのでそちらに向かった。


よし、いい布陣だ。
計算高い私は、一緒に歩くメンバーを確認してから、ロザリーを追いかけた。


私は、リーナが困っている時に助けられなかった。私一人が庇っても、いじめの対象が私に移るだけだと思ったからだ。
でも、言葉の端々でリーナがそれを見逃してくれていることは読み取れていた。私が殴られた時、一緒に医務室に行っておしゃべりもした。
謝れてはいない。けれど、今更蒸し返すのもどうかと思うから、間違いではない、はず。


ロザリーは、転生者だ。確信できる。
あの厨二病台詞。居酒屋に関わっているらしいこと。年に似合わない、まして令嬢にはありえない、酒場で働き続ける根性。
私の境遇を話せば、日本的感性は働いてくれるはずだ。


カイルは……カイルだから。乗せられやすくて単純で、向こう見ず。だけど、きらきらして見えるくらい、とっても、素直。
女性に、ハンカチと一緒に刺繍糸を渡す意味は、たぶん知らない。あれは貴族の慣習だから。
でも、きっと、味方してくれる。


お願い、そうであって。



「待って、ロザリー!お願いがあるの」

帰り道の、大通りから少し路地に入った通り。小さな川が流れている。
できれば人目につかないところがいいと思って、あえてここにした。

振り向いたロザリーは、目を見開いて、次に、ひやりとした目を向けてきた。

……あれ?


リーナは、腕組みをして見守っている。

カイルは、オロオロしていた。


え、どうして。思っていたのと、違う。

「……どうしたの、アリス」

ロザリーは、最近手放さない魔法の杖に、手をかけていた。
まさかの攻撃体制!?どうして?私、どこで間違えた?

「あの!魔法を、教えて欲しいの。お願い!!」

がばっ!と、頭を下げる。
なんだかわからないけど、もう、お願いするしかできない。
どこで間違えたのか、さっぱりわからな……あ。

司祭様の話の、内容。私、把握してない。


何か、あったのか。
それって。

「ごめんなさい、クラスの人にむやみに教えてはならないと、言われたのです。特に、あなたには」



頭が、冷えた。
ざっと考える。様子見だけが、私の武器だ。

私を警戒する可能性。三つ、心当たりがある。


1.私が転生者だとバレてる。
一度、かなり前に、ロザリーの前で、バイト、という言葉を使っている。
ロザリーは動揺していたから覚えてないと思ってたけど、違ったのか。
でも、司祭様が知っているとは思えない。


2.ダルクが、ロザリーや酒場に悪さをしている。
可能性はある。多分どこかで悪さはしている。
でも、司祭様の話には乗ってこないはず。


3.お母さんの勤めている、ノーリス男爵家が、ロザリーの家と反目している。


……3、かな。


詰んだ。これは、ダメだ。

ロザリーの目からは、これまでにない敵意すら感じられた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!? バッドエンドだらけの悪役令嬢。 しかし、 「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」 そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。 運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語! ※完結済です。 ※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///) ※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。 《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。

樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」 大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。 はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!! 私の必死の努力を返してー!! 乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。 気付けば物語が始まる学園への入学式の日。 私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!! 私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ! 所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。 でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!! 攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢! 必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!! やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!! 必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。 ※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。

出来損ないの私がお姉様の婚約者だった王子の呪いを解いてみた結果→

AK
恋愛
「ねえミディア。王子様と結婚してみたくはないかしら?」 ある日、意地の悪い笑顔を浮かべながらお姉様は言った。 お姉様は地味な私と違って公爵家の優秀な長女として、次期国王の最有力候補であった第一王子様と婚約を結んでいた。 しかしその王子様はある日突然不治の病に倒れ、それ以降彼に触れた人は石化して死んでしまう呪いに身を侵されてしまう。 そんは王子様を押し付けるように婚約させられた私だけど、私は光の魔力を有して生まれた聖女だったので、彼のことを救うことができるかもしれないと思った。 お姉様は厄介者と化した王子を押し付けたいだけかもしれないけれど、残念ながらお姉様の思い通りの展開にはさせない。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。 ※他サイト様にも掲載中です

処理中です...