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第五章 婚約志望者の秘密
9.秘密の家族会議 1
しおりを挟む我が家の、本業の家族会議は久しぶりだ。
いつものように、毎日確認することになっている地下通路の連絡口に、当日の朝に読めるようにメモを置いていく。
かつ、かつと、誰もいない石造りの入り組んだ通路を、迷いなく歩いていく。
俺たちには、地上よりも慣れた道だ。間違いようがない。
うちの兄弟は、俺以外はみんな一歳違いだ。
全員紫の瞳だけど、俺以外は母親譲りの白金色の髪。だから、一族とは見破られにくい。ふつうに社会で働いてる。
一番上の兄アドニスは、ソロの冒険者だ。
王都内で、目立たない初級用の、貴族街の雑用をこなしたり、傭兵をしたりしながら情報収集。
上の姉、ロディは、冒険者ギルド職員。
妙な依頼があったり、ギルドに動きがあれば報告することになっている。
真ん中の姉、ミューラは、商業ギルド職員。
新しい産業の申請や、平民の豪商の動きなんかを追っている。
下の姉、ペルラは、貴族男性が集まる酒場で用心棒を始めた。
貴族向けの店では、女性が二階に連れ込まれることはない。お家騒動になるからだ。でも、酔っ払って無理を強いる貴族はたまにいる。
ペルラ姉は、初心者ながら、強さとトラブル処理の腕が認められて、なかなか慕われている。貴重な情報源だ。
みんな、問題なく仕事をこなしている。
俺だけ親父とおんなじ色合いだから、ちょっと身の振り方が難しいんだよな。
下町に埋もれていれば気づかれないだろうから、そっちの担当になると思ってた。
親父、本当に俺を貴族の学校に入れる気か?
勝算はあるのか?バレたら大変だぞ。
ふむ、と、考え込みながら歩いていると、後ろから足音が聞こえてきた。
この音は。
「兄ちゃん!」
帰宅途中の上の兄に会った。メモを見たらしい。
「ニムルス!元気だったか」
にやっと笑う兄ちゃんの体には、小さな傷がたくさんついている。珍しいな。どうしたんだ。
「今、カーライル家の護衛やってんだけどさ。やたらと偵察のやつが来るんだよな。俺一人で対処してるから、カーライル側に気づかれてはいないけど」
……あー。それロザリーのせいだ。
ちょっと待って公爵家側に止める人間はいないのか?
危ないって、わかるだろうに。
「あれ、やめさせられねぇ?ハルデンツェルトのやつらだと思うんだよな。アリスちゃんのこと、気づいてますよーって言ってるようなもんだぞ。ちゃんと言ってやれよ」
うっ。言ってやりたい。すごく言いたい。
でも、情報源を明かすことが、できないんだ。
ロザリーに、俺が疑われる。
「……すまん、無理か。親父に相談だな」
がしがしと頭を撫でられる。この癖は親父にそっくりなんだ。仕草も、察しのよさも。
「久々の会議だ。ちょっと大ごとだから、叔父さんもくるんじゃねぇ?その為の場所の設定だろうからな。ま、なんとかなるさ」
すっと前を歩き出す兄ちゃんについていく。
そっか。それなら、手を回せる。少し肩の荷が下りた。
行き先は、俺たちが普段殆ど出入りしない場所。
王城だ。
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