81 / 110
第五章 婚約志望者の秘密
11.秘密の家族会議 3
しおりを挟む「さて、揃ったな」
母さん以外、全員がソファに腰掛けている。
いつもは母さんじゃなく俺が扉の前で見張りだったから、末席とはいえここにいるのが落ち着かない。
とはいえ、いつかは通る道だ。アリスやロザリーをなんとかしないといけないし、それがカイルや、何よりリーナの為になる。
膝で握った拳にじんわりと汗がにじむ。
ごくりと唾を飲み込む音が、やけに響いた。
「今日集まったのは他でもない、カーライル伯爵家のことだ。反現政権派の主流ともいえる一派の家だが、そこにニムルスの同級生が連れ去られた」
え、と声を上げたのは、アドニス兄ちゃんだ。
「嫌々だったのか?探してた娘がやっと見つかったって、あの家では喜ばれてるぞ。正妻の娘だったんだろ?誘拐されて今までどこにいたのかが、なかなか掴めないんだけどさ」
あ、いや、それは。
口を開きかけた俺を、親父が目線で制する。
「アリスは、庶子だ。カーライル伯爵家の当主が、メイドに産ませた子供で、母親共々妊娠がわかった途端に追い出されている。その後母親は職場をわざと転々とし、ノーリス男爵家に落ち着いたらしい」
がたん、と、ペルラ姉がソファを揺らす。姿勢を少し崩したようだ。
「ノーリス。反政権派の家、というかカーライル家の血族よね?そんなところにいて、よく今までバレなかったものだわ」
ふるふると親父が首を振る。
「どうやら、承知の上で飼い殺されていたようだ。母親は逃げおおせていると思ったようだが」
……どういうことだ。探してて、見つかったんじゃないのか。何で今まで放っておいたんだ。
「司祭の執務室でアリスの記録を見た。高級住宅街に住んでいた。あの家は、普通の男爵家侍女には支払えない金額の家賃がかかる。相当待遇はよかっただろう」
ふむ、と、兄ちゃんが口に手を当てて考え込む。
「それにしちゃ、アリスちゃんの動き方が積極的なんだよな。貴族のマナーなんかもびっくりするくらいの早さで覚えているし、護身術と称して練習させられているナイフや毒の知識も貪欲に学んでいる」
……アリス。覚悟の上で行ったんだな。
俺は口を開いた。
「アリスがいなくなる前の日まで、あいつ本当に何の素振りも見せなかったんだよ。同日に実の母親らしき人間が教会に逃げ込んでいる。どうも変だ」
兄ちゃんが、目を見開いた。
身を乗り出して息を巻く。
「ノーリスやカーライルの差し金だったとしたら、実の母親はとっくに消されているはずだろ?実子として戸籍を書き換えたって、ハルデンツェルト家では掴んでたらしいじゃないか」
ふむ、と、おじさんが考え込んでいる。
「タイミングが良すぎるな……。橋渡し、というか実行役が寝返っていたか。手際のよさから言って、裏稼業の人間だと思うんだが。カラム、どう思う」
親父は、ゆっくりと頷いた。
「間違いないだろう。アリスを連れ去った奴と、母親を教会に連れ出したのは同一人物だ。しかし、そいつがどこに行ったかだな」
はっと、気づいた。そうか。今は。
「ニムルス、気づいたか。実行犯は消される。そいつはよくわかっていたんだろう。おそらく外国に逃げようとする。しかし、今は」
「それが、できない」
そう。今、精霊のボイコットなのか何なのかわからないが、この国は孤立している。他国との道が途切れているんだ。
国境まで逃げても、逃げ道はない。
「彼の名は、ダルク。半年間行方をくらましている。冒険者ギルドにも、死亡報告は上がっていない。……一体、どこにいるのか」
ふぅ、と、ため息をついておじさんがこめかみを抑える。
「彼は、気づいただろうな。この国の今の現状に。探し出さなければ」
ごくりと唾を飲み込む。秘密を知る人間は、王都には少ない。手が足りない。だとすれば。
「ニムルス、初仕事だ。俺と一緒に行くぞ」
親父が、にやっと笑う。
……ついに来たか。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢に転生したけど、知らぬ間にバッドエンド回避してました
神村結美
恋愛
クローデット・アルトー公爵令嬢は、お菓子が大好きで、他の令嬢達のように宝石やドレスに興味はない。
5歳の第一王子の婚約者選定のお茶会に参加した時も目的は王子ではなく、お菓子だった。そんな彼女は肌荒れや体型から人々に醜いと思われていた。
お茶会後に、第一王子の婚約者が侯爵令嬢が決まり、クローデットは幼馴染のエルネスト・ジュリオ公爵子息との婚約が決まる。
その後、クローデットは体調を崩して寝込み、目覚めた時には前世の記憶を思い出し、前世でハマった乙女ゲームの世界の悪役令嬢に転生している事に気づく。
でも、クローデットは第一王子の婚約者ではない。
すでにゲームの設定とは違う状況である。それならゲームの事は気にしなくても大丈夫……?
悪役令嬢が気付かない内にバッドエンドを回避していたお話しです。
※溺れるような描写がありますので、苦手な方はご注意ください。
※少し設定が緩いところがあるかもしれません。
社畜の私は異世界でも社畜精神が残ったままだった
木嶋うめ香
恋愛
貴族学園の小さな部屋で、私は一人書類仕事に追われていた。
今日も寮には帰れそうにない、机の上には大量の未処理の書類。
せめて空腹を紛らわそうと、ビスケットを鞄から取り出し水を汲んでこようとして立ち上がった途端、視界が暗くなり倒れた。
床に倒れた反動で、頭を床にぶつける。
その衝撃で思い出した、私は前世ブラック企業に勤めていた社畜で、二十三連勤サービス残業付きの末、体調を崩し亡くなったアラサー営業職だった。
他サイトでもアップしています。
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした
黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)
ざまぁはハッピーエンドのエンディング後に
ララ
恋愛
私は由緒正しい公爵家に生まれたシルビア。
幼い頃に結ばれた婚約により時期王妃になることが確定している。
だからこそ王妃教育も精一杯受け、王妃にふさわしい振る舞いと能力を身につけた。
特に婚約者である王太子は少し?いやかなり頭が足りないのだ。
余計に私が頑張らなければならない。
王妃となり国を支える。
そんな確定した未来であったはずなのにある日突然破られた。
学園にピンク色の髪を持つ少女が現れたからだ。
なんとその子は自身をヒロイン?だとか言って婚約者のいるしかも王族である王太子に馴れ馴れしく接してきた。
何度かそれを諌めるも聞く耳を持たず挙句の果てには私がいじめてくるだなんだ言って王太子に泣きついた。
なんと王太子は彼女の言葉を全て鵜呑みにして私を悪女に仕立て上げ国外追放をいい渡す。
はぁ〜、一体誰の悪知恵なんだか?
まぁいいわ。
国外追放喜んでお受けいたします。
けれどどうかお忘れにならないでくださいな?
全ての責はあなたにあると言うことを。
後悔しても知りませんわよ。
そう言い残して私は毅然とした態度で、内心ルンルンとこの国を去る。
ふふっ、これからが楽しみだわ。
悪役令嬢だったので、身の振り方を考えたい。
しぎ
恋愛
カーティア・メラーニはある日、自分が悪役令嬢であることに気づいた。
断罪イベントまではあと数ヶ月、ヒロインへのざまぁ返しを計画…せずに、カーティアは大好きな読書を楽しみながら、修道院のパンフレットを取り寄せるのだった。悪役令嬢としての日々をカーティアがのんびり過ごしていると、不仲だったはずの婚約者との距離がだんだんおかしくなってきて…。
【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜+おまけSS
himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。
えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。
ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ!
アルファポリス恋愛ランキング入りしました!
読んでくれた皆様ありがとうございます。
*他サイトでも公開中
なろう日間総合ランキング2位に入りました!
ナイスミドルな国王に生まれ変わったことを利用してヒロインを成敗する
ぴぴみ
恋愛
少し前まで普通のアラサーOLだった莉乃。ある時目を覚ますとなんだか身体が重いことに気がついて…。声は低いバリトン。鏡に写るはナイスミドルなおじ様。
皆畏れるような眼差しで私を陛下と呼ぶ。
ヒロインが悪役令嬢からの被害を訴える。元女として前世の記憶持ちとしてこの状況違和感しかないのですが…。
なんとか成敗してみたい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる