約束の夢を少女は信じた。

音爽(ネソウ)

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名も無き少女は夢を見る

卑陋(ひろう)なお茶会

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騎士様に御礼を言い、私は慌ててお嬢様へ報告へ走った。
はしたないけれど鞭で打たれるよりマシ。

ゴテゴテと華美なドレスを纏ってブリデお嬢様がのそりと出てきた。
ショッキングピンクは体型に似合わないから止めた方が良いのに……。
「やっと来たのか、でもまぁ良い。きょうは王子が来てんだろ。グケケケケッ」

女子とは思えない物言いはどうなのかな、男の子みたいだもの。
「お嬢様、きょうは言葉使いに注意してください」
さすがにネッチも諫めた。

「わーかってる!んん、『ようこそいらっしゃった、わらくしはブリデ・オークウッド。仲良くしてくださいデス。』どーだ完璧だろう?」
「「……」」
注意すれば癇癪を起されるだけなので無言で答えた。


「それより、菓子はわらしの手作りってことにするからな!わかったな?」
「……はい、もちろんです。ブリデ様」

ブフンブフンと鼻息荒くお嬢様はホールへ向かいます、いつもならここで下女の私は引っ込むの。
でもブリデ様が急に「茶会の余興にお前の話をする」と言って茶会のお共をすることに。

『あの話』とは私の幼少からずっと見ていた夢の話ね。
あんな話つまらないし、笑われるだけ。……そうか私を笑い者にしたいのね。
お腹は蹴られるし、なんて憂鬱な日かしら。

まだ、ジンジン痛むお腹を摩って玄関ホールにて使者様達を出迎えます。
ブリデ様黄色い声をあげました、プラチナブロンドの髪をした美しい男性が従者を従え入ってきたの。
この方が王子様かしら?

先ほどの騎士様が最後尾にいた、通りすがりに私をみてニッコリされた。
素敵な方です、華奢な王子よりカッコイイ。


挨拶を交わしてサロンへご案内。
キラキラした王子様や凛とした騎士様が歩くさまは絵になってて、その後ろを歩く私は薄汚いお仕着せに細かい藁がくっ付いていて、じぶんの姿が惨めで項垂れちゃった。

今すぐに小屋へ戻りたいと思っていたら茶会が始まった。
侍女と執事がお茶を淹れてまわり、下女で汚い私は邪魔にならないよう、壁と同化して控えているの。
あぁ早く終わらないかしら?

護衛騎士の皆さんはドアの前に2名、サロンに3名控えてた。
ぴしっとなさっていて凄い、微動だにしないんですね。肩こりが心配になっちゃう。
メインの客は王子、いつも来る使者の人、役職は不明だけど文官らしい人。

それぞれにお茶が供されたのをきっかけに、文官さんが口を開いた。
「伯爵は御不在かね?」
「うん、はい。とうちゃ、父は野暮ようで少し遅れますデス」
ぎこちない敬語で応えるお嬢様。

「んなことより。お菓子をめしあげ食べてくださいデス。わらしが作ったんですよゲヘヘヘ」
お嬢様は客人より先にケーキを鷲掴みして豪快に食べだした。
クッキーもためらうことなくガツガツと平らげていく、お客様の分は?

ボロボロと零し口まわりはカスだらけになっている、拭いてあげたい。
ネッチが頭を抱える。

王子様が不快そうに眉を吊り上げた、ですよね……。
「君の御両親は教師としてここへ派遣されたはずだが、マナーは教わってないのかい?」
「ふぼほぉ?バマーば、じらあいでう。ぼいじうあべればいいぼべず」

なんて言ったのかしら?
食べながら話すなんてマネー以前に不敬じゃないのかな。

「ぷふぅ、うめかった。でもナッツばかりで飽きる。チョコはどうしたんだ?下女よ応えろ!」
「は、はいチョコは切らしております」
急に呼ばれてびっくりする、ちょっと待ってさっき「自作」って嘘ついたのがバレたよ!

自分がついた嘘を自ら暴露したことに気付かずに、お嬢様は盛大にゲップをはいた。
「げぷぅ!げふふふぅ」
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