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事情をすべて聞いたセレンジェールは彼の裏切り行為に打ちのめされた。だが、婚約が白紙に戻されることはなかった。貴族派が多い国の内情では此度の婚姻に大きな理由があるからだ。
「うぅ……私はあの方を愛する自信がありませんわ」
「お嬢様、お労しい」
侍女も察して心中を慮ぱかった、それでも国の中枢の決定事項には逆らえるはずもなく涙することしかできない。実情、コランタム・アネックス王太子には数カ月の謹慎処分が下されただけに留まる。
「済まないセレン、どうしようもないのだ。王太子には一応バツらしい事は与えたが余程の事がない限り破棄は出来ない、国を傾けるわけにはいかないのだ」
「……お父様」
彼女は大粒に涙を流し情に訴えたが、それは虚しいものだとわかってしまう。
「私は不幸だわ、裏切られても偽りの愛に生きねばならないなんて」
セレンジェールは泣き腫らし目が開かなくなるほど泣いたが、厳しい現実は変化がない。時折、コランタムから手紙が届いたが開かれることはなかった。
一方で、自室にて幽閉されているコランタムはセレンジェールの返事が一向に届かないことに焦れていた。己の行為は許されたものではないが、あまりに冷たいと静かに怒っている。
「ええい!今日も無視するのかセレンのヤツ!いつまで臍を曲げているのだ!」
コツコツとハチの字に歩き回る彼は、いつまでそうしているのかわからない。
「クソッ!浮気は一度だけじゃないか、こうなったら二度も三度も同じじゃないか?」
斜め上の思考回路でそんな風に考える彼は反省などしていないのだ。いまも湧き上がる欲求に地団駄を踏み「マーガレットに会いたい」と呟く始末だ。
そんなおり一か月も過ぎた頃、一人の若い騎士が護衛に付いた。年齢も近しいこともあり、壁際で会話することが増えた。
「あぁ、わからないのだよ、頑迷な老躯たちにはな!俺は二十歳の健康な男子なのだよ!目の前に馳走があったら飛びつくものだろう?」
「ええわかりますよ~辛いですよね。右手だけが恋人では悲しいです」
「そうだろう、そうだろう!しかも婚姻までセレンに手を付けてはならないのだ!婚約者だというのに!あんな豊満な彼女を抱けないだなんて拷問に等しいね」
「ええ、まったくです~騎士の俺の方が余程自由だ、知ってます?街の娼館はへへへっ……殿下が気の毒です」
「なんだと!?羨ましいな!詳しく聞かせろよ」
このように余計な智慧をつけていくコランタムは良からぬ事企むのだった。
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