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しおりを挟むマーガレットの予期せぬ乱入に四苦八苦するコランタムは、なんとか言い逃れが出来ないか模索する。だが、目の前にいるkY娘は「コラン~好き好き大好きぃ」とやっている。
「頼むから話を合わせてくれよ!ちょっとした余興だとかなんとか」
「余興ってなによぉ、私は本気なのよコラン。誰よりも貴方を愛しているわ、私の命をかけて」
涙を浮かべ上目使いをしてくる彼女は猛禽な顔を隠して口説いてくる、すべては妃の座と彼をものにする為だ。
だが、その行為が反逆罪に等しいと理解していない、まさに命がけの恋なのだ。後々のことを念頭にないのである。
「ほ、本当に?」
「ほんとうよぉ!心から愛しているわ、幼い頃からずっと慕ってきたのよグスン」
「なんとそこまで俺の事を……」
ほんの遊び相手に過ぎなかったマーガレットが心から愛していると言った。予期せず妊娠させてしまった事から側室に迎えるとは言ったのだが、こうなっては腹を括るしかないと愚かなコランタムは決断した。
「ち、父上、我が王よ!俺はこのマーガレットこそが正妃に相応しいと考えます!」
「なにおう!?何という事を!許さぬぞ、決して許されることではない!セレンジェールを迎えてこそが意味があるのだぞ!それを、それを反故に……アルドワン卿よ!こやつを引っ立てい!最早こやつに価値はありはしないのだ。地下牢の奥深く閉じ込めてしまえ!その娘もだ!」
かの王はやっと為政者らしい言葉を放った、やっと英断らしいことを言ったのだ。些か遅すぎたがそれは褒めて良いだろう。
「そんな!待ってくれないか父上!俺達は真実の愛を見つけたんだ!」
「そうですよぉ、愛し合う私達に嫉妬してるんだわ」
「……もう良い口を開くな、軽忽どもが!己の浅はかさを呪え」
「ほう、やっと重い腰を上げられたか我が王よ。では総近衛騎士団長として命令する、近衛兵たちよ、すぐさま捕らえよ謀反人コランタムを牢へ!」
「ははっ!直ちに」
***
やがて、荒んだ会場の顛末を聞いたディオンズはこう述べた。
「そうか、やっと目を覚ましたのだな。だが遅すぎたようだ、アネックス王には勇退していただこう」
溜息と共にディオンズは皇子の顔してそう言い放った、それから安堵の顔に戻り朱が射し始めたセレンジェールを愛おしそうに見つめていた。
ここは教会の救護室である、彼女の侍女が慌てて入って来て「御赦しくださいお嬢様」といって泣いた。いまは侍女を宥めて控えさせている。
「なんだい仕事の鬼が人間らしくなったものだ。その娘はいったい何者さ、いやコランタムの結婚相手というのは知っているが……その」
気になる相手、セレンジェール・アルドワン公爵令嬢をチラチラと見るレイモンは訝しそうに頭を傾ぐ。いったいどういう経緯で彼女と知り合ったのだろうとワクワクを隠せない。
「止せ、レイモン。彼女とは幼き頃……助けて貰った恩人なのだ」
「へーほー!恩人ねぇ?そんな軽い間柄とは思えんが」
「ふん!」
彼は戯れ男に成り下がったレイモンをあしらって、今一度セレンジェールの少し冷えた頬を覗き込む。今にも触れたいとばかりに手を出し入れしていた。
「触れちゃえば~?そのくらいかまわんだろう。抱き抱えた仲なんだし」
「な!巫山戯るなよレイモン!私は……」
その時、ピクリと彼女の手が動いた。
ハッとするディオンズはすぐさま立ち上がり数歩下がる、それを見たレイモンは「どこまでヘタレだよ」と嗤う。すると顔を真っ赤にして俯いてしまう皇子だ。
「ありゃたまげた!マジもんかよ」
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