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マーガレット・ビルドの罪
しおりを挟む暫く放置された彼女は暇を持て余し、「カンコン」と給仕されてきた空皿を叩いて音を楽しんでいた。何かやってなければ退屈で発狂しそうだった。
だが、そんな日々も終わる時がやってきた、看守がふたりやってきて「沙汰が降りた」と言った。斬首刑だと淡々と述べる。
「あーはー、そう……良いんじゃない」
暗がりで虚しく暇をつぶすくらいならば、いっそバッサリやってくれと思った。気が遠くなる程の倦怠感と格闘するのに飽き飽きしていた彼女は処刑をあっさりと受け入れた。
「ところで私の罪ってなーに?愛した人を横取りしたセレンの方がよっぽど罪だと思うのだけど?」
「……つまらん問答はせぬ」
「ふん、何よ!気取っちゃってさ!そこの男子!XXXの毛がやっと生えた年頃の癖に偉そうに」
やさぐれた彼女は酔っ払いのように喚き散らし、看守らを閉口させる。新卒で17~8歳の若き看守は羞恥に顔を赤らめる。
「おい、相手にすんなよ。舐められる」
「は、はい!」
やがて地下牢獄から出ると目映い光に出迎えられてクラクラする、特にマーガレットは長い事幽閉されていたせいでちょっとの光にも敏感だ。
「な、何よ……眩しいわね目が開けられないわ」
ブツクサと文句を垂れていると「さっさとしろ」と小突かれる、しかし、腹を立てるマーガレットは最期を迎えるのだからと余計に横柄だ。
「好きにさせてよ!どうせ死んじゃうんだから!」
看守の手を振りほどいて大股で歩く、とてもこれから死に向かおうという態度ではない。年嵩の刑務官は「好きにさせろ」と肩を竦めた。
そしてギロチン台に着くと「へぇ、これがねぇ。思ったより小さいのね」と感想まで言う始末だ。
「思い残すことはあるか?」と定型文の台詞を執行人に問われると「この世の全てを嫌悪するわ」と言った。そうして斬首台に首を添えられると「ザシュッ」と言う音が聞こえた。
「え?聞こえた?なんで?」
首を落とされたと言うのに意識がはっきりしていた、痛みもなければ何もないのだ。こういうものなのかと辺りをキョロキョロと見物する。自分の首と身体は一体どうなったのだろうと周囲を見回す。
「さて、起きろ。刑は執行された、お前は名もなき死体になったのだ。良かったな」
「良かったですって?殺されたのに何が良いのよ」
グイッと起こされた彼女の頭と胴体は離れていない、ちゃんとそこに在ってマヌケな顔を晒す。
「ど、どういうことよ。ちょっとねぇ!私の首はどこにあるわけ?」
斬首刑の予行練習でもしたのだろうかとマーガレットは己の首周辺を摩る、やはりちゃんとくっ付いている。わけがわからない。
傍らに根菜らしきがゴロリと転がっていた、どうやらこれが代わりに真っ二つにされたとわかる。
「悪趣味~処刑の練習に駆り出されたのね」
「いいや、違うね。マーガレット・ビルドは確かに殺された。キミは名もなき死体なのだよ」
すぐ上の所から声が聞こえた、刑務官とは違うようだ。
「はあ?誰よあんた」
上から聞こえて来たのは大統領首席補佐となったレイモンの声だった。彼女は「誰だっけ?」と頭を傾ぐ。
「俺の名なんてどうでも良かろう、キミには最果ての地にて仕事が待っているからねサヨナラ会う事もない」
「え、どういうこと?私はどうなっちゃうの?」
空恐ろしくなった彼女は背後にジリリと下がった、嫌な汗が背中を伝う。
「ああ、普通だったら生き地獄だろうけどキミには天職なのかなぁ。彼も嫌な仕事を思いつくもんだ」
***
マーガレットは生き延びた喜びを味わう暇もなく、水でゴシゴシ乱暴に洗われ見た目だけは身ぎれいな恰好をさせられた。しかし、その衣装はどう見ても娼婦のそれだった。そして、視力を魔法で奪われて体は避妊が施され余計な口はきけなくなった。
そして、馬車で揺られる事三日、土臭いその土地が職場だと言われた。
野太い腕に担がれて着いたところは山小屋だ、目が見えない彼女はドスンと放り出される。
「お前はなんて名にしようか、まぁ良いや適当に呼ばれろ」
「あぅあああ……あぅあああ」
そこについて一日目から幾人もの相手をさせられた、目が見えない彼女は幾度となくやってくる快楽に身を委ねる。彼女の職場は罪人たちが働く鉱山で、行き場のない不満と劣情を吐かせるのが仕事なのだ。ビッチ気質の彼女は最高の仕事と言える。
「あうぁああ!あぅあああ!ひぃひぃ!」
「よぉ、アウア今日も世話になるぜ?」
「あぅあ……ひひひっ」
終
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(っ´・д・)✄╰;.’:╯バチィン
ご感想ありがとうございます。
い、痛い( ;∀;)
マーカー・ビルドの罪・何ともつまらん人生だったな~。なにかをしろとは言わないけど人のモノを盗まないで生きて欲しいな❗😖💧。
ご感想ありがとうございます。
最後まで読んでいただき感謝致します<(_ _)>
30. 30. 女の子は色んな顔を持ってたすから~( ・∀・)b。
ご感想ありがとうございます。
そうですね(*'▽')