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しおりを挟む麗らかな春の日にどこからか赤子の泣き声が聞こえた。
それは微かに聞こえたがやがて小さくなって消えた、かつての城壁で見廻りをしている憲兵たちは「良い日和だ」と言って顔を綻ばす。
「あぁ、やっと寝てくれた……この子は滅多に泣かないけれど余程機嫌が悪かったのね」
揺り籠でグッスリ眠りこける我が子を、愛し気に見守るセレンジェールは幸せなひと時を噛みしめていた。公爵令嬢から大統領夫人となった彼女はやや疲れた目をしていたが、その眼差しは慈愛に満ちている。
「やぁ、セレン、先ほどまで庁舎にまで泣き声が届いていたが大丈夫かい?」
「あら、ディオン。お仕事はいいの?またレイモンに押し付けたんじゃないでしょうね」
「そんな事しないよ、ちゃんと私の分の仕事は熟したさ」
それならば良いと微笑んで夫を迎え入れた、いつものように熱い抱擁を交わして「ディオンお疲れさま」と軽くリップ音を立てる。
「ん……足りないよ、もっとちゃんとして?」
「ふふっ、甘えん坊さんねぇ。おっきな赤ん坊みたい、偉いですよ、ディオン。午後も頑張ってね」
「うん、頑張るよ♪」
彼女が甘く囁くとフニャリと蕩ける顔をするディオンズは獅子から飼い猫のようになってしまう。執務室での彼といまの彼では雲泥の差だった。
いつの間にか膝枕をしたディオンズは微睡みながらこう言った。
「あぁ、幸せだ……このまま死んだって良い」
「あらあ、私達を置いて儚くならないで頂戴な。貴方も私も、あの子もこれからなのよ?」
「ふふっ、わかっているよセレン。ただの比喩さ、言ってみたかっただけ……」
そんなバカげたことを言っている間に夢見心地の彼はそのまま意識を手放す。
永遠に続くようにと願いながら。
本編完結
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