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「どうか今一度だけ俺に、私にチャンスを!この想いは本物なのだ!」
呆れた事に堂々と嘘までついて哀願してきたバルトロだ、それを冷ややかな目で見下ろすピエリナ王女は何も語らない。
ツンとソッポを向き玉座の間から消え去った、後に残されたギリアン王も「そういうことだから」と苦笑いしていた。だが、そんな事でサファイアを諦めるような男ではなかった。

連日連夜、頭を垂れてきて何度も懇願するのだ。
それでも相手にしないピエリナはやはり返答すらしてこない、汚いものを見る目でじっと見つめて「ふぅ」と息を漏らす。

そんな事が十日ほど経った、許される滞在期間ギリギリまで頭を垂れて床に擦り付ける。
「どうか、どうかお願いします!」
その日は丸一日中に頭をこすり付けて微動だにしなかった。根負けしたのか、呆れたのか、その日の王女は少し違った。ひたすら頭を下げてくるバルトロに向かい「ひとつ条件がある」と一言声を掛けてきた。

がばりと身を起こした彼はしてやったりな顔だ。
だが、条件は優しいものでは決してないのだと、彼女に顔には書いてあった。ゴクリと唾を飲む王子は黙って待機した、能面のような貌をして条件を言うピエリナ。


「十日間の断食をなさいませ、飲まず食わずで小屋に籠り願をかけるのです。そうしたら話だけでも聞きましょう、良いですか話をです」
王女はピシャリと言い切った、それはとんでもない苦行だったが、欲に目が眩んだ王子は「有難い」と言って条件を飲んだ。それほどまでに欲しいと思っていたのだ。

「宜しいか、です。少しでも違えたらそれで終了ですから」
「ああ、わかった!なんだってしてやるとも!」
「……では早速準備に入りましょう、塩と水を飲んだら開始です」
王女はそういうと再び黙り込み、侍女たちに目配せをした。


「よし!上手い事いったぞ、神事で七日間の断食経験がある俺には容易いことだ!」
しめしめと思った彼だったが、それは水を飲んで過ごした経緯だ。決して飲まず食わずの体験ではない。
そんな不都合なことはつるりと忘れて彼は挑んでしまった。

「初めにこれをお飲みください、約束を違えぬ為でございます」
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