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グフフフフフッフヒイッ

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崩落した侯爵家の玄関ホールはほぼ修復が終わり、安堵していましたの。
こいつが来るまでは!

挨拶もそこそこに晩餐がはじまりました。
しかし、せっかくの牛フィレの味がしません。ゴム噛んでるみたいです。
それもこれも目のまえにいる冷酷野郎のせいですね。

この世で一番見たくない人と食事をして楽しい人はいますか?
絶対いませんよね!!

ロードリックはやや窶れ余計に表情の冷たさを感じます。
相変わらずの無の境地を極めてらっしゃる、あの日垣間見せた人間らしさは演技だったのでしょう。
嫌いな私と婚姻を結びたいのは旨味があるからですね。


丁度その旨味について父が話しています。
「共同事業は思いのほか順調でな、近しい未来は国外へ手を広げるつもりだ」
「貴方、いっきに手広く運営するのは危ういのでは?文化や生活様式も違います」
母が酔いにまかせ饒舌な父を嗜めている。

父と公爵の事業は農地開拓と収獲した作物の加工品生産、子細は知らないが瓶詰と長期保存できる缶詰が国内で当たったそうなの。

天候不良で左右される農作物が凶作な年は、国力に大きな打撃。
食糧を安定供給できる保存食は、飢餓飢饉回避が可能な大事なもの。
昨年度は食糧難になった隣国に恩を売った功績は大きく評価され、王から褒章を賜った。

何回聞かされたか判らない自慢話は続く……。


ご飯は喉を通らないし退席したい。
ウンザリ気味の私はワインをチビチビしていた。
ふいに視線を感じ前を向くと、極寒大魔王ロードリックがこちらを見ていた。

え、なに……睨まれた!
なんでですか、なにもしてませんけど?

さすがに腹が立ったので睨みかえしてあげます。すると、彼は口端を上げて冷笑を返したのよ……。
それもニタニタと私を値踏みするようにです。

ムーカーツークー!
そういえば今日のドレスは新調したもの、暑くなってきたので薄手のサマードレスを買ったのよ。
そう、そんなに似合いませんか!

別にあなたのためのお洒落じゃなくってよ!
ほっとけや鉄面皮チンカO野郎!

またも淑女らしからぬことを脳内で絶叫してしまった。
だが反省はしてない!


「……っているよ」
はい?なんて?

「とても似合っているよグフッ、青いドレスが精霊ウンディーネもかくやだね。フヒ、グフフフフフッフヒィ」
「!?」
ロードリックの気持ち悪い笑い声に背筋がザワザワして寒くなりました。

こっわ!
なんですのそのコワキモイ笑顔は!
邪神だ!邪神!
もしくは死神かも!

1人慄くわたしを余所に、晩餐は優雅な雰囲気で終わりました。
どこが優雅や!
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