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悪友と親友は紙一重
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「え、今度はボクに手紙かい?」
ウィルフレッドは銀盆の中心に置かれた分厚い封筒へ汚い虫を見るような目むける。
さっさと受け取って欲しいとメイドは思う。
メイドの視線を感じたウィルフレッドは渋々と受け取った、だが手紙とはいえない重みに顔を顰める。
読まずに火にくべたいところだが気候は夏、暖炉には薪のかわりに造花が鎮座している。
「早く冬がこないかな……」
まだ真夏だというのに虚しい願いを吐いてしまう。
分厚いそれにナイフを入れれば、無理矢理畳まれた便箋がゴッソリ出てきて彼を悩ませる。
一枚一枚目を通すがどれも内容が重複していて読むのに疲れてしまった。
飛ばして最後の一枚を目に通す、やはり「至急相談したい」で手紙は終わっていた。
「紙の無駄遣いだよロディ」
50枚ほどに及ぶ手紙は同じような言葉を列挙した読む値にしない面倒なものだった。
手紙には「他言無用」とシツコイくらいあったが、愛する妹のことが絡むのだから無理な相談である。
早速に父がいる書斎へ向かう彼は、すれ違ったメイドに茶の用意を頼んで歩を進めた。
父に伺いをたて氷が踊るアイスティーを飲みつつロードリックの手紙を差し出す。
「今度はお前をダシに使う気なのか」
父アンリオは悲痛な面持ちで手紙をゴミ箱へ投げ入れた。
「父上、それはストーキング行為の証拠です、安易に廃棄してはいけない」
「……いや、ついウッカリ本気でイヤだったから……だってお前気持ち悪いじゃん?」
それでもダメですと諫めて控えいたメイドに拾うよう指示した。
埃を払ったそれを証拠品として木箱へ入れる、半分ほど積みあがった手紙の山を一瞥すると忌々し気に蓋をした。
「はぁ、たしかにうちのアイリスは美しく気立ても良いからな。彼が執着するのもわかる」
アンリオは日増しに愛妻ソルニエに似てきた娘が可愛くて仕方ないと零す。
だからこそロードリックから守らねばと思いを強くした。
「父上、監視護衛を増やしますか?」
「……いいや、彼のほうの監視だけ増やせ。それからアイリスは自分で厳選した護衛を付けるそうだ」
「まさか……ヒャッハーですか?」
よくわかったなとアンリオは言う、爆破事件で雇った連中をいたく気に入ったアイリスはギルドからヒャッハーな連中を引き抜いていたのだ。
「我が娘ながらなんとも面白い趣味をしている」
「面白いで済まさないで父上……令嬢としてどうかと思うよ」
侯爵令嬢の周囲に侍るのが、派手な髪色をしたモヒカンと剃り込み頭、そしてスキンヘッドのゴリマッチョ達とは如何なモノかと兄は頭痛がした。ある意味最強にして最恐ではあると親子は思った。
「そもそも騎士団の鬼隊長たる母がいる侯爵家に暴挙を働くバカとも思えませんが」
「バカモノ、頭がいかれた男はなにをするかわからんぞ。友といえど気安く接触などするなよ。私からデンゼル公爵へ相談する。お前は決して動くでない!」
父に釘を刺されたウィルフレッドは肩を竦め了承した。
「しかし、父上。向こうからやって来た場合は?ボクなりに持て成して良いですよね?」
良い顔で嗤う息子に呆れた視線を向ける。
「お前は腕っぷしはないだろう、私に似てヘナチョコなんだから」
「違いますよ、暴力は奮いません。頭とコネを使います」
コソコソと耳打ちして息子の計画を聞いた父アンリオは、なるほどと納得したのだった。
***
とある庭園の四阿にてウィルフレッドはミントティーで喉を潤して人を待った。
高台のそこは爽やかな風が吹き暑気払いに適していた。
ボトルが空になった頃その待ち人はやってきた。黄金の髪を靡かせ、青い瞳は陽を反射してキラキラと輝いている。
「やぁ待たせたねウィル、春の馬術大会以来だね」
「お久しぶりで」
「待て、今は二人きりだろう?砕けた口調にしてくれ、むず痒いよ」
優美な顔を少し曇らせて哀願されては仕方ないと親友の名を呼んだ。
「セインミュルド殿下、セイン……おひさ」
ケラケラと要望通りに軽口を叩く親友に、彼は相好を崩す。
「私を呼び出すなんて珍しいよね、なにかあったのかい?」
「うん、ロディのことで困ってる」
自身に届いた手紙を差し出せばセインは困惑する。
「おいおい、まさか衆道に目覚めたんじゃ……」
「よしてくれ!」
即答で拒否するウィルにセインは大笑いして「腹が痛い」と転げまわった。
「相変わらず笑い上戸だな、お前は」
「ぷふっ、悪い。どうも普段が退屈し過ぎてね。楽しいことに飢えてるのさ」
こっちは楽しくないと抗議するウィルに、言葉だけ謝罪するセインである、反省してない。
「はは、ロディめ拗れてしまったのか」
先ほどの分厚い手紙を読んで、ことの経緯を把握したセインは急に大人しくなった。
婚約解消しても手紙で愛を押し付けてくるロディに、アイリスを護りたいとウィルが言う。
「アイリスか、しばらく会ってないなぁ。夜会に最近でてこないじゃないか」
「仕方ないさ、ロディを警戒してるからね」
なるほどとセインは顎に手を添え何事か思案に耽る。
「逃げれば回避はできるが……それでは平行線じゃないかい?」
「なんか悪だくみしてるね」
親友から悪友の顔に変化したセインにウィルは苦い顔をする。
近いうちに侯爵家へ遊びに行くとセインは言うと、ニマニマと企てたアイディアをメモしていた。
ウィルフレッドは銀盆の中心に置かれた分厚い封筒へ汚い虫を見るような目むける。
さっさと受け取って欲しいとメイドは思う。
メイドの視線を感じたウィルフレッドは渋々と受け取った、だが手紙とはいえない重みに顔を顰める。
読まずに火にくべたいところだが気候は夏、暖炉には薪のかわりに造花が鎮座している。
「早く冬がこないかな……」
まだ真夏だというのに虚しい願いを吐いてしまう。
分厚いそれにナイフを入れれば、無理矢理畳まれた便箋がゴッソリ出てきて彼を悩ませる。
一枚一枚目を通すがどれも内容が重複していて読むのに疲れてしまった。
飛ばして最後の一枚を目に通す、やはり「至急相談したい」で手紙は終わっていた。
「紙の無駄遣いだよロディ」
50枚ほどに及ぶ手紙は同じような言葉を列挙した読む値にしない面倒なものだった。
手紙には「他言無用」とシツコイくらいあったが、愛する妹のことが絡むのだから無理な相談である。
早速に父がいる書斎へ向かう彼は、すれ違ったメイドに茶の用意を頼んで歩を進めた。
父に伺いをたて氷が踊るアイスティーを飲みつつロードリックの手紙を差し出す。
「今度はお前をダシに使う気なのか」
父アンリオは悲痛な面持ちで手紙をゴミ箱へ投げ入れた。
「父上、それはストーキング行為の証拠です、安易に廃棄してはいけない」
「……いや、ついウッカリ本気でイヤだったから……だってお前気持ち悪いじゃん?」
それでもダメですと諫めて控えいたメイドに拾うよう指示した。
埃を払ったそれを証拠品として木箱へ入れる、半分ほど積みあがった手紙の山を一瞥すると忌々し気に蓋をした。
「はぁ、たしかにうちのアイリスは美しく気立ても良いからな。彼が執着するのもわかる」
アンリオは日増しに愛妻ソルニエに似てきた娘が可愛くて仕方ないと零す。
だからこそロードリックから守らねばと思いを強くした。
「父上、監視護衛を増やしますか?」
「……いいや、彼のほうの監視だけ増やせ。それからアイリスは自分で厳選した護衛を付けるそうだ」
「まさか……ヒャッハーですか?」
よくわかったなとアンリオは言う、爆破事件で雇った連中をいたく気に入ったアイリスはギルドからヒャッハーな連中を引き抜いていたのだ。
「我が娘ながらなんとも面白い趣味をしている」
「面白いで済まさないで父上……令嬢としてどうかと思うよ」
侯爵令嬢の周囲に侍るのが、派手な髪色をしたモヒカンと剃り込み頭、そしてスキンヘッドのゴリマッチョ達とは如何なモノかと兄は頭痛がした。ある意味最強にして最恐ではあると親子は思った。
「そもそも騎士団の鬼隊長たる母がいる侯爵家に暴挙を働くバカとも思えませんが」
「バカモノ、頭がいかれた男はなにをするかわからんぞ。友といえど気安く接触などするなよ。私からデンゼル公爵へ相談する。お前は決して動くでない!」
父に釘を刺されたウィルフレッドは肩を竦め了承した。
「しかし、父上。向こうからやって来た場合は?ボクなりに持て成して良いですよね?」
良い顔で嗤う息子に呆れた視線を向ける。
「お前は腕っぷしはないだろう、私に似てヘナチョコなんだから」
「違いますよ、暴力は奮いません。頭とコネを使います」
コソコソと耳打ちして息子の計画を聞いた父アンリオは、なるほどと納得したのだった。
***
とある庭園の四阿にてウィルフレッドはミントティーで喉を潤して人を待った。
高台のそこは爽やかな風が吹き暑気払いに適していた。
ボトルが空になった頃その待ち人はやってきた。黄金の髪を靡かせ、青い瞳は陽を反射してキラキラと輝いている。
「やぁ待たせたねウィル、春の馬術大会以来だね」
「お久しぶりで」
「待て、今は二人きりだろう?砕けた口調にしてくれ、むず痒いよ」
優美な顔を少し曇らせて哀願されては仕方ないと親友の名を呼んだ。
「セインミュルド殿下、セイン……おひさ」
ケラケラと要望通りに軽口を叩く親友に、彼は相好を崩す。
「私を呼び出すなんて珍しいよね、なにかあったのかい?」
「うん、ロディのことで困ってる」
自身に届いた手紙を差し出せばセインは困惑する。
「おいおい、まさか衆道に目覚めたんじゃ……」
「よしてくれ!」
即答で拒否するウィルにセインは大笑いして「腹が痛い」と転げまわった。
「相変わらず笑い上戸だな、お前は」
「ぷふっ、悪い。どうも普段が退屈し過ぎてね。楽しいことに飢えてるのさ」
こっちは楽しくないと抗議するウィルに、言葉だけ謝罪するセインである、反省してない。
「はは、ロディめ拗れてしまったのか」
先ほどの分厚い手紙を読んで、ことの経緯を把握したセインは急に大人しくなった。
婚約解消しても手紙で愛を押し付けてくるロディに、アイリスを護りたいとウィルが言う。
「アイリスか、しばらく会ってないなぁ。夜会に最近でてこないじゃないか」
「仕方ないさ、ロディを警戒してるからね」
なるほどとセインは顎に手を添え何事か思案に耽る。
「逃げれば回避はできるが……それでは平行線じゃないかい?」
「なんか悪だくみしてるね」
親友から悪友の顔に変化したセインにウィルは苦い顔をする。
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