その眼差しは凍てつく刃*冷たい婚約者にウンザリしてます*

音爽(ネソウ)

文字の大きさ
48 / 49
遊学篇

失恋は恋で上書きすべし

「ウィル兄さま!なんでここに?」
「なんでって来たから」
話にならないと言ったアイリスは兄の腹を優しく?殴る。

「ゲボォ!……容赦ないな……ゲッホ。じつはセインに遊学の話を聞いて興味が湧いてさゲフッ」
アイリス達を追いかけ半日遅れで着いたという。

「お仕事はどうするんです?」
「長期休暇をもぎ取ってきた、ここの所休暇なしだったから一気にね」

そういう事情ならとアイリスは納得して、友人のスカーレットを紹介する。
「こちらスカーレット嬢、わたしの大親友よ!」
「初めまして、スカーレット・サンドリアです。妹さんには良くしていただいて・・え?」

紹介途中だというのにウィルフレッドがスカーレットの腕を取りブンブン振った。
「ボクはウィルフレッド!ウィルと呼んで!よろしく美しいお嬢さん!」
「え……はぁよろしくお願いします?」

あっけにとられるスカーレットは兄にされるがまま腕をブンブン付き合わされていた。
「兄さま!落ち着いて!!!」

ズドゴッという鈍い音を鳴らしウィルフレッドの頭へ踵落としした妹である。
「ごげぉ!!さすがに痛いっ!!!脳漿飛び散ってない!?ボク生きてる?ねぇ!」
「生きてますよ、兄さま」

ドレスで格闘技はいけませんとスカーレットに怒られたアイリスだった。
「え。あ、ごめん、パンツ見えてないよね?」

その様子の傍らで笑い袋(セイン)が腹を抱えて転がっていたのは言うまでもない。

***

「キミの笑顔はボクが守りたい」
「はぁ……?」

ケーキより甘ったるい台詞をウィルフレッドが言う度に鳥肌がたつアイリス。
そして笑い転げるセイン王子。

「うっわー、なんか味がしないわこのケーキ……だれのせいかしら」
「ボクの妹は味音痴なんだねハッハッハ」
んだとコラッとやり返す妹。

「仲良しな兄妹ねぇ、ひとりっ子だから羨ましいわ」
「そうですか!だったらボクが婿入りしますよ!」

「兄さま!長男でしょ!?家督はどうするんですか!」
「アイリスがいるだろ?」

軽く言う兄になんてことをと頭を抱えるが「それなら私が侯爵家の婿になれるね」とセインが悪ノリする。
「どうしてこう男共は……ごめんねレット、兄が旅恥テンションみたいで」
「ふふ、いいのよ。面白い方ね、嫌な事も忘れてしまうわ」

コロコロと笑うスカーレットの様子に「たまにはバカ兄も役にたつのねぇ」と感心した。
「それで兄様はこれからどう過ごす予定で?」
「レット嬢の警備かな」
「は?」

どういうともりなのかと我が兄を睨むアイリス、親友を口説く兄の姿を見せられて居たたまれないと嘆く。
「レット、気持ち悪かったらワンパンしていいからね?」
「やーね、リィったら。うふふっ」


すっかり意気投合している二人に案外似合いなのかしらと思い始めていた。
「ねぇ。リィ、あっちはほっといて私を見てよ?やっと婚約できたのに塩すぎて寂しいよ」
「な、なななななんですか急に!」
「ナが多いね」

顔を真っ赤に染めて慌てる彼女の手を、両手で包むセイン王子は美しい笑みを浮かべる。
「う、眩しいっ目がやられる!」
「リィのほうが眩しいよ?」

急に甘くなったセイン達を眺めて、スカーレットが帰国前と全然違うと言って笑う。
お互い揶揄いあっては笑い、楽しいひと時を過ごす。


学園に戻り数日経てばセイン王子が婚約したと広まった。
相手は噂があったアイリスと知った女学生たちは悲喜こもごもの様子だ、だがメロルの件もあってか露骨な嫌がらせや悪口は聞こえてこなかった。


平和に遊学していた2週間後、兄ウィルフレッドは休暇を終えて後ろ髪引かれつつ帰国していった。
スカーレットとどう進展したかは今の所わからないが、良い友人くらいにはなって欲しいとアイリスは思う。

「素敵なお兄様だったわね」
「興味ある?弱いけど性格は良いわよ」
そういうアイリスにスカーレットは曖昧に笑うだけだった。

兄が去って3か月後、アイリス達も帰国となった。
「結婚式に招待しても良い?」
「もちろんよ!絶対行くからね!ブーケトス頑張るから!」

待っているわとアイリスは親友を優しく抱きしめた。
ちょっと遠い空の向こうの親友との再会を楽しみにして、アイリスは帰路へ向かった。

あなたにおすすめの小説

私だけが愛して1度も笑ったことの無い夫が、死んだはずの息子を連れてもどってきた

まつめ
恋愛
夫はただの一度も私に笑いかけたことは無く、穏やかに夫婦の時間をもったこともない。魔法騎士団の、騎士団長を務める彼は、23年間の結婚生活のほとんどを戦地で過ごしている。22歳の息子の戦死の知らせが届く。けれど夫は元気な息子を連れて私の元に戻って来てくれた。

白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
異世界に転生したフランカは公爵夫人として暮らしてきたが、前世から叶えたい夢があった。パティシエールになる。その夢を叶えようと夫である王国財務総括大臣ドミニクに相談するも答えはノー。夫婦らしい交流も、信頼もない中、三年の月日が近づき──フランカは賭に出る。白い結婚三年目で離縁できる条件を満たしていると迫り、夢を叶えられないのなら離縁すると宣言。そこから公爵家一同でフランカに考え直すように動き、ドミニクと話し合いの機会を得るのだがこの夫、山のように隠し事はあった。  無言で睨む夫だが、心の中は──。 【詰んだああああああああああ! もうチェックメイトじゃないか!? 情状酌量の余地はないと!? ああ、どうにかして侍女の準備を阻まなければ! いやそれでは根本的な解決にならない! だいたいなぜ後妻? そんな者はいないのに……。ど、どどどどどうしよう。いなくなるって聞いただけで悲しい。死にたい……うう】 4万文字ぐらいの中編になります。 ※小説なろう、エブリスタに記載してます

「君の作った料理は愛情がこもってない」と言われたのでもう何も作りません

今川幸乃
恋愛
貧乏貴族の娘、エレンは幼いころから自分で家事をして育ったため、料理が得意だった。 そのため婚約者のウィルにも手づから料理を作るのだが、彼は「おいしいけど心が籠ってない」と言い、挙句妹のシエラが作った料理を「おいしい」と好んで食べている。 それでも我慢してウィルの好みの料理を作ろうとするエレンだったがある日「料理どころか君からも愛情を感じない」と言われてしまい、もう彼の気を惹こうとするのをやめることを決意する。 ウィルはそれでもシエラがいるからと気にしなかったが、やがてシエラの料理作りをもエレンが手伝っていたからこそうまくいっていたということが分かってしまう。

いくつもの、最期の願い

しゃーりん
恋愛
エステルは出産後からずっと体調を崩したままベッドで過ごしていた。 夫アイザックとは政略結婚で、仲は良くも悪くもない。 そんなアイザックが屋敷で働き始めた侍女メイディアの名を口にして微笑んだ時、エステルは閃いた。 メイディアをアイザックの後妻にしよう、と。 死期の迫ったエステルの願いにアイザックたちは応えるのか、なぜエステルが生前からそれを願ったかという理由はエステルの実妹デボラに関係があるというお話です。

お認めください、あなたは彼に選ばれなかったのです

・めぐめぐ・
恋愛
騎士である夫アルバートは、幼馴染みであり上官であるレナータにいつも呼び出され、妻であるナディアはあまり夫婦の時間がとれていなかった。 さらにレナータは、王命で結婚したナディアとアルバートを可哀想だと言い、自分と夫がどれだけ一緒にいたか、ナディアの知らない小さい頃の彼を知っているかなどを自慢げに話してくる。 しかしナディアは全く気にしていなかった。 何故なら、どれだけアルバートがレナータに呼び出されても、必ず彼はナディアの元に戻ってくるのだから―― 偽物サバサバ女が、ちょっと天然な本物のサバサバ女にやられる話。 ※頭からっぽで ※思いつきで書き始めたので、つたない設定等はご容赦ください。 ※夫婦仲は良いです ※私がイメージするサバ女子です(笑) ※第18回恋愛小説大賞で奨励賞頂きました! 応援いただいた皆さま、お読みいただいた皆さま、ありがとうございました♪

「女友達と旅行に行っただけで別れると言われた」僕が何したの?理由がわからない弟が泣きながら相談してきた。

佐藤 美奈
恋愛
「アリス姉さん助けてくれ!女友達と旅行に行っただけなのに婚約しているフローラに別れると言われたんだ!」 弟のハリーが泣きながら訪問して来た。姉のアリス王妃は突然来たハリーに驚きながら、夫の若き国王マイケルと話を聞いた。 結婚して平和な生活を送っていた新婚夫婦にハリーは涙を流して理由を話した。ハリーは侯爵家の長男で伯爵家のフローラ令嬢と婚約をしている。 それなのに婚約破棄して別れるとはどういう事なのか?詳しく話を聞いてみると、ハリーの返答に姉夫婦は呆れてしまった。 非常に頭の悪い弟が常識的な姉夫婦に相談して婚約者の彼女と話し合うが……

貴方にはもう何も期待しません〜夫は唯の同居人〜

きんのたまご
恋愛
夫に何かを期待するから裏切られた気持ちになるの。 もう期待しなければ裏切られる事も無い。

夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた

今川幸乃
恋愛
ローザン公爵家の跡継ぎオリバーの元に嫁いだレイラは若くして父が死んだため、実家の財産をすでにある程度相続していた。 レイラとオリバーは穏やかな新婚生活を送っていたが、なぜかオリバーは妹のエミリーが欲しがるものを何でも買ってあげている。 不審に思ったレイラが調べてみると、何とオリバーはレイラの財産を勝手に売り払ってそのお金でエミリーの欲しいものを買っていた。 レイラは実家を継いだ兄に相談し、自分に敵対する者には容赦しない”冷血王子”と恐れられるクルス第三王子に全財産を寄付することにする。 それでもオリバーはレイラの財産でエミリーに物を買い与え続けたが、自分に寄付された財産を勝手に売り払われたクルスは激怒し…… ※短め