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街角の小さなカフェで、身を寄せ合う男女がコソコソと会話している。
愚痴を吐きまくる少年と親身に聞き入る少女の姿があった。
「父上が図鑑を全部倉庫へ移動させてしまったんだ……、あぁボクの生き甲斐だというのに」
「まぁ、可哀そうなヘイデン!いくらなんでもあんまりよ!」
悄気る彼を優しく慰める健気さをアピールしているのは黒髪の少女アラベラ、しかし、その瞳の奥には企みが隠れている。
「貴方のためならなんだって協力するわ。今すぐとはいかないけど来週あたりに隣国から荷が届くの、その中に図鑑も仕入れてるはずよ、優先して売ってあげる」
「それは本当かい!?……いやでも父上がなんて言うか、それに今月分の小遣いはあまり残ってないんだ」
瞬時にガッカリして俯くヘイデンに、アラベラが笑みを浮かべて言う。
「ねぇ、私のお願いを聞いてくれたらプレゼントしても良いわよ?」
「え!……でもカラーの図鑑はかなり高価だよ。それは申し訳ないよ」
「なにを言ってるの大切な友人が元気ないのは放っておけないわ、それにお願いを聞いてもらう対価だし」
「……う、うん。そういうことなら甘えようかな?」
「じゃぁ決まりね!」
それから彼女はヘイデンに耳打ちしてお願いとやらを伝えた。
「え、そんなことで良いのかい?なんか悪いな」
「そんなことはないわよ!私は願いが叶う、貴方は珍しい図鑑が手に入る!素敵な交換条件よ、えっと8日後の昼にここで会いましょう」
ヘイデンはいそいそと手帳を取り出して、予定を書き込もうとペンを取る。
「八日後だね、ん?待って、その日は駄目だ。ティアとデートする日と被ってしまうよ」
「なによぉ、婚約者とならいつでも会えるじゃない!」
「そうもいかないさ。この間も本に夢中で怒らせちゃったばかりなんだ」
「えぇ~?ヘイデンたら今から尻に敷かれては駄目よ、父様が言ってたわ。少しそっけないくらいが良いらしいわよ。」
「で、でも」
「ねぇヘイデン、相手が格上のお嬢様でも遠慮しちゃいけないわ。あっちは嫁に来る身で、貴方は次期伯爵家当主になるのでしょ。結婚前からどちらが主かハッキリ知らしめないと舐められるわ」
「そ、そうなのかな?ティアは慎ましい子だからそんな……」
「いーえ!女は結婚すると豹変するんだから!油断しちゃダメよ」
「そうかなぁ?」
「そうよ!時には強気な態度でいかなきゃ!」
渋るヘイデンだったが、図鑑欲しさとアラベラの圧に負けて了承してしまうのだった。
「約束よヘイデン!そうだわ、なんなら当日ドタキャンしてやりなさいよ」
「流石にそれは失礼じゃないかな先触れを」
「もー!わかってないのね、今までのように弱気のままじゃいけないわ。我慢させてあたり前なの!」
「わ、わかったよ。ボクは当主になる、頑張って強くなってみせるさ」
それを聞いたアラベラは悪戯な笑みを浮かべると、さらに余計なことを吹き込む。
「その意気よ、優しいばかりじゃダメ。それにちょっと意地悪して嫉妬させれば益々ヘイデンを好きになるわ。そうすれば彼女ももっと美しさに磨きをかけるはずよ」
「もっと好きに?……そっかティアが今以上にボクを愛してくれるなら嬉しいことだよ」
「そうそう、恋の駆け引きよ。貴族だからって気取ってたら愛は育たないわ。だから愛人なんて作るのよ。相思相愛だからって油断禁物!」
「うんうん、まったくその通りだね。さすがアラベラ、キミという友人がいて良かったよ」
すっかり乗せられたヘイデンは、己の道が大きく逸れだしたことに気が付かない。
愚痴を吐きまくる少年と親身に聞き入る少女の姿があった。
「父上が図鑑を全部倉庫へ移動させてしまったんだ……、あぁボクの生き甲斐だというのに」
「まぁ、可哀そうなヘイデン!いくらなんでもあんまりよ!」
悄気る彼を優しく慰める健気さをアピールしているのは黒髪の少女アラベラ、しかし、その瞳の奥には企みが隠れている。
「貴方のためならなんだって協力するわ。今すぐとはいかないけど来週あたりに隣国から荷が届くの、その中に図鑑も仕入れてるはずよ、優先して売ってあげる」
「それは本当かい!?……いやでも父上がなんて言うか、それに今月分の小遣いはあまり残ってないんだ」
瞬時にガッカリして俯くヘイデンに、アラベラが笑みを浮かべて言う。
「ねぇ、私のお願いを聞いてくれたらプレゼントしても良いわよ?」
「え!……でもカラーの図鑑はかなり高価だよ。それは申し訳ないよ」
「なにを言ってるの大切な友人が元気ないのは放っておけないわ、それにお願いを聞いてもらう対価だし」
「……う、うん。そういうことなら甘えようかな?」
「じゃぁ決まりね!」
それから彼女はヘイデンに耳打ちしてお願いとやらを伝えた。
「え、そんなことで良いのかい?なんか悪いな」
「そんなことはないわよ!私は願いが叶う、貴方は珍しい図鑑が手に入る!素敵な交換条件よ、えっと8日後の昼にここで会いましょう」
ヘイデンはいそいそと手帳を取り出して、予定を書き込もうとペンを取る。
「八日後だね、ん?待って、その日は駄目だ。ティアとデートする日と被ってしまうよ」
「なによぉ、婚約者とならいつでも会えるじゃない!」
「そうもいかないさ。この間も本に夢中で怒らせちゃったばかりなんだ」
「えぇ~?ヘイデンたら今から尻に敷かれては駄目よ、父様が言ってたわ。少しそっけないくらいが良いらしいわよ。」
「で、でも」
「ねぇヘイデン、相手が格上のお嬢様でも遠慮しちゃいけないわ。あっちは嫁に来る身で、貴方は次期伯爵家当主になるのでしょ。結婚前からどちらが主かハッキリ知らしめないと舐められるわ」
「そ、そうなのかな?ティアは慎ましい子だからそんな……」
「いーえ!女は結婚すると豹変するんだから!油断しちゃダメよ」
「そうかなぁ?」
「そうよ!時には強気な態度でいかなきゃ!」
渋るヘイデンだったが、図鑑欲しさとアラベラの圧に負けて了承してしまうのだった。
「約束よヘイデン!そうだわ、なんなら当日ドタキャンしてやりなさいよ」
「流石にそれは失礼じゃないかな先触れを」
「もー!わかってないのね、今までのように弱気のままじゃいけないわ。我慢させてあたり前なの!」
「わ、わかったよ。ボクは当主になる、頑張って強くなってみせるさ」
それを聞いたアラベラは悪戯な笑みを浮かべると、さらに余計なことを吹き込む。
「その意気よ、優しいばかりじゃダメ。それにちょっと意地悪して嫉妬させれば益々ヘイデンを好きになるわ。そうすれば彼女ももっと美しさに磨きをかけるはずよ」
「もっと好きに?……そっかティアが今以上にボクを愛してくれるなら嬉しいことだよ」
「そうそう、恋の駆け引きよ。貴族だからって気取ってたら愛は育たないわ。だから愛人なんて作るのよ。相思相愛だからって油断禁物!」
「うんうん、まったくその通りだね。さすがアラベラ、キミという友人がいて良かったよ」
すっかり乗せられたヘイデンは、己の道が大きく逸れだしたことに気が付かない。
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