14 / 32
二人の茶会と無粋な物音
しおりを挟む
ハチの巣事件から二日後、蜂蜜をふんだんに使った菓子が花畑に敷いたマットの上に並んだ。
「さぁ食べましょう!一番の功労者のミーニャが先に食べるのよ?」
「ワタシガ?ワカリマセン」
針だらけになったミーニャのメンテナンスのついでに、ハウラナはミーニャの身体に咀嚼機能をつけてあげた。
飲み込んだ食物エネルギーを魔力へ変換することで解決したのだ。
カスも残らないので排泄不要な便利な身体である。
ミーニャは食べる行為が理解できないのか、ハニーレモンパイを摘まんだまま動けずにいる。
「もう、仕方ないわね。ほら、アーンと口をあけて?」
「ア、アーン?」
口に入れて歯というもので噛むのだと教えられた。
「ン、グググ……サクサクシマス。タベルトハ フシギナコウイ、……コレガアマイ?」
「どう?美味しいでしょ?」
ゆっくり味わって飲み込んだミーニャはパァッと顔を輝かせた。
「コレガオイシイ コレガ ニオイトアジ!?」
彼女は生物ではないので、口腔内が拾った情報を主であるハウラナに伝達して味覚情報を共有しているだけである。
「ふふ、私は食べてないのに美味しいのが伝わってくるわ」
「オイシイ コレガオイシイ アマイ!」
三個連続で食べたミーニャは「マリョクガ フエタキガシマス」と言って腹が満たされる感覚を知った。
一緒に食事ができる喜びをハウラナは嬉しくて泣いた。
「ラナサマ!?ドコカイタイデスカ?」
「違うの、これは悲しい涙ではないのよ。人間は嬉しくても涙が出るの、安心して」
「ラナサマ……」
ミーニャはハウラナを優しく抱き寄せて、彼女の頭を撫でた。
「優しいミーニャ、大好きよ」
「ワタシモ ダイスキデス ラナサマ」
***
二人が蜂蜜プリンを味わってマッタリとしていた時だった。
歪みの向こうから壁をドンドンと無遠慮に叩く音がした。
「あらら……みつかっちゃったのね」
「ラナサマ!」
ミーニャは主を護る盾のように立ち塞がった。
「落ち着いてミーニャ、彼らはこちらへこられないわよ?」
「ソウデシタカ」
花畑へ招待されるのはハウラナが許可した者だけだ、無理に入ろうとすれば亜空間のどこかへ飛ばされる。
二度と帰れない場所へ……。
「陛下聞こえますか?自在に亜空間を渡れるのは私の空間魔法だけよ、仮に同じ魔法が使えても共有を許されなければ未知のどこかへ飛ばされます。無理して入れば死にますよー!」
ハウラナは壁向こうに向かってそう言った。
「なんだと!?ならば許可を」
「出すわけないでしょう?貴方が人質の側室に手を出そうとするから逃げたんです。白い結婚で3年後には母国へ戻るんですからね!」
ハウラナはエッヘンとふんぞり返り反論した。
彼女が側室となった理由は、小国なりの矜持を示すためであって寵愛を受けるためではない。突然の同衾の申し出は侮られたも同然のことだと抗議した。
「そ、それは……其方を後宮から護る意味があってだな」
「私は護られるほど弱くありません、たいへんな侮辱ですわ!」
高度な魔法技術を持ち暗器使いである王女ハウラナは、そのへんの兵士よりはるかに強いのだ。
「ところで先ほどから不快な攻撃を私に行ってますね。言いましたよね?陛下の精神支配は効かないと、なぜだと思います?」
「え……?」
面倒そうに肩を竦めてハウラナは語る。
「わたくしは2歳から空間魔法を鍛錬し極めてきました。空間と認識さえすれば私の脳を護る頭蓋骨内も空間の一つになりますわ。つまり脳内と言う空間に結界を張り防御すると意識すればいいだけのこと」
「……なるほど、理屈はわかった。わかったからここを開いて話を聞いてくれ!」
「聞いてくれ?交渉にきたくせに、精神攻撃をした詫びが先では?乱暴にこじ開けようとした挙句に席を設けることもせず、譲歩する提案も無くなにを仰るのかしら。横暴って言葉を知ってます?私は人質にして国代表で外交にきている身ですわ」
「あ、……」
上からの物言いに腹を立てたハウラナは、何言か呟き壁を完全に閉じてしまった。
「さぁ食べましょう!一番の功労者のミーニャが先に食べるのよ?」
「ワタシガ?ワカリマセン」
針だらけになったミーニャのメンテナンスのついでに、ハウラナはミーニャの身体に咀嚼機能をつけてあげた。
飲み込んだ食物エネルギーを魔力へ変換することで解決したのだ。
カスも残らないので排泄不要な便利な身体である。
ミーニャは食べる行為が理解できないのか、ハニーレモンパイを摘まんだまま動けずにいる。
「もう、仕方ないわね。ほら、アーンと口をあけて?」
「ア、アーン?」
口に入れて歯というもので噛むのだと教えられた。
「ン、グググ……サクサクシマス。タベルトハ フシギナコウイ、……コレガアマイ?」
「どう?美味しいでしょ?」
ゆっくり味わって飲み込んだミーニャはパァッと顔を輝かせた。
「コレガオイシイ コレガ ニオイトアジ!?」
彼女は生物ではないので、口腔内が拾った情報を主であるハウラナに伝達して味覚情報を共有しているだけである。
「ふふ、私は食べてないのに美味しいのが伝わってくるわ」
「オイシイ コレガオイシイ アマイ!」
三個連続で食べたミーニャは「マリョクガ フエタキガシマス」と言って腹が満たされる感覚を知った。
一緒に食事ができる喜びをハウラナは嬉しくて泣いた。
「ラナサマ!?ドコカイタイデスカ?」
「違うの、これは悲しい涙ではないのよ。人間は嬉しくても涙が出るの、安心して」
「ラナサマ……」
ミーニャはハウラナを優しく抱き寄せて、彼女の頭を撫でた。
「優しいミーニャ、大好きよ」
「ワタシモ ダイスキデス ラナサマ」
***
二人が蜂蜜プリンを味わってマッタリとしていた時だった。
歪みの向こうから壁をドンドンと無遠慮に叩く音がした。
「あらら……みつかっちゃったのね」
「ラナサマ!」
ミーニャは主を護る盾のように立ち塞がった。
「落ち着いてミーニャ、彼らはこちらへこられないわよ?」
「ソウデシタカ」
花畑へ招待されるのはハウラナが許可した者だけだ、無理に入ろうとすれば亜空間のどこかへ飛ばされる。
二度と帰れない場所へ……。
「陛下聞こえますか?自在に亜空間を渡れるのは私の空間魔法だけよ、仮に同じ魔法が使えても共有を許されなければ未知のどこかへ飛ばされます。無理して入れば死にますよー!」
ハウラナは壁向こうに向かってそう言った。
「なんだと!?ならば許可を」
「出すわけないでしょう?貴方が人質の側室に手を出そうとするから逃げたんです。白い結婚で3年後には母国へ戻るんですからね!」
ハウラナはエッヘンとふんぞり返り反論した。
彼女が側室となった理由は、小国なりの矜持を示すためであって寵愛を受けるためではない。突然の同衾の申し出は侮られたも同然のことだと抗議した。
「そ、それは……其方を後宮から護る意味があってだな」
「私は護られるほど弱くありません、たいへんな侮辱ですわ!」
高度な魔法技術を持ち暗器使いである王女ハウラナは、そのへんの兵士よりはるかに強いのだ。
「ところで先ほどから不快な攻撃を私に行ってますね。言いましたよね?陛下の精神支配は効かないと、なぜだと思います?」
「え……?」
面倒そうに肩を竦めてハウラナは語る。
「わたくしは2歳から空間魔法を鍛錬し極めてきました。空間と認識さえすれば私の脳を護る頭蓋骨内も空間の一つになりますわ。つまり脳内と言う空間に結界を張り防御すると意識すればいいだけのこと」
「……なるほど、理屈はわかった。わかったからここを開いて話を聞いてくれ!」
「聞いてくれ?交渉にきたくせに、精神攻撃をした詫びが先では?乱暴にこじ開けようとした挙句に席を設けることもせず、譲歩する提案も無くなにを仰るのかしら。横暴って言葉を知ってます?私は人質にして国代表で外交にきている身ですわ」
「あ、……」
上からの物言いに腹を立てたハウラナは、何言か呟き壁を完全に閉じてしまった。
30
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
ちゃんと忠告をしましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。
アゼット様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。
腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。
灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。
彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。
タイトル通りのおっさんコメディーです。
居場所を失った令嬢と結婚することになった男の葛藤
しゃーりん
恋愛
侯爵令嬢ロレーヌは悪女扱いされて婚約破棄された。
父親は怒り、修道院に入れようとする。
そんな彼女を助けてほしいと妻を亡くした28歳の子爵ドリューに声がかかった。
学園も退学させられた、まだ16歳の令嬢との結婚。
ロレーヌとの初夜を少し先に見送ったせいで彼女に触れたくなるドリューのお話です。
思いを込めてあなたに贈る
あんど もあ
ファンタジー
ファナの母が亡くなった二ヶ月後に、父は新しい妻とその妻との間に生まれた赤ん坊を家に連れて来た。義母は、お前はもうこの家の後継者では無いと母から受け継いだ家宝のネックレスを奪うが、そのネックレスは……。
姑に嫁いびりされている姿を見た夫に、離縁を突きつけられました
碧井 汐桜香
ファンタジー
姑に嫁いびりされている姿を見た夫が、嬉しそうに便乗してきます。
学園進学と同時に婚約を公表し、卒業と同時に結婚したわたくしたち。
昔から憧れていた姑を「お義母様」と呼べる新生活に胸躍らせていると、いろいろと想定外ですわ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる