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第15章 静かな夕暮れ
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公園に着いた拓人は、ベンチに座っている咲をすぐに見つけた。咲は相変わらず目立つゴスロリ姿をしていた。きっと今日も占いの仕事をしてきたのだろう。
「ごめん待たせて」
「別にいいわ。急に呼び出したのは私だし」
咲は落ち着いた様子で拓人に隣に座るよう促した。
「どうして急に?」
「ちょっとこのゲームについてわかってきたことがあって」
ゲームについては個々で調べていくしかない。それは拓人もわかっていた。だからこそこの情報交換の大切さはよくわかった。
「私今日このタロットカードについて調べるために、隣町の方にいっていたの。その町でこのタロットカードを売ってる店を探したのよ。そしたら…こんなタロットカードは入荷されてないって、すべての占い専門店は言ったのよ」
「それって、この町でしかこのタロットカードが出回っていないってこと?」
「そうなるわ。同時にこの町でしかこのゲームは行われていない」
「それは言い切れないんじゃないか?だってこのタロットカードを持ってる人がこの町から離れたりしたら…」
「そう。私は今日離れたのよ」
咲は女帝のカードを見つめながらつぶやいた。
「この町から出た瞬間、あの高音が脳内に鳴り響いたわ。そしてすぐに戦闘に巻き込まれた」
「そんなの聞いてないよ!」
拓人は今日1日、先ほどのメール以外受け取ってないことを思い出した。
「言ってないからよ。小アルカナだったし」
「だからってもう少し僕を頼ってくれても…」
拓人は自分が力になれないことに少し落ち込んだ。
「頼らなかったんじゃないわ。頼らなくても倒せる相手と確信していたからよ。これが大アルカナだったらすかさず呼んでいたわ。それとも経験として呼んでいた方が良かったかしら?」
「もういいよ」
拓人はうなだれた。そんな拓人を気にもせず、咲は続きを話し始めた。
「一度しか試してないからただの仮説だけど、この町から出るとき、そのときは強制的にカード所持者に居場所が特定されるようになっているんじゃないかと思うの」
咲の仮説が正しいとしたら、この町から出るには必ず戦闘を行わなければならないということになる。つまり…
「創始者はカード所持者をこの町から出したくない」
「おそらく」
理由はわからないが、そうであることは事実だった。
「ねえ、これは私の興味もあるのだけれど、お互いの叶えたい願い、教えておかない?お互いの命を背負ってるわけだし、パートナー契約が有効なまま優勝したら、それぞれが願いを叶えられるの。どうかしら?お互いあまり隠し事はしたくないじゃない?私も話しておきたいことがあるし」
「そうだね。じゃあ僕から話すよ。あまり明るい話じゃないけど、そこはごめん」
「別にいいわ。そもそもこんなデスゲームの中にいるんだから暗い話なんて慣れっこよ」
「そうか」
拓人はゆっくりとあの地獄の情景を思い出した。きっと咲はここまで暗い話は予想していないだろう。
モルテはカードのまま拓人の話を聞くことにしたようで、カードからビジュアル化する気配はなかった。
**************
「両親を…殺され…」
「うん。二年前に」
「ご、ごめんなさい…。嫌なこと思い出させちゃったわね…」
珍しく咲が狼狽えた。
「いいんだ。いずれ話さなきゃいけなかっただろうし」
拓人は優しく微笑んだ。
「だから僕は、両親を生き返らせるか、犯人の逮捕か、どちらかを願いたいと思ってる」
弓実にこの願いを指摘された後でも、拓人の願いはまだその二つで揺れていた。
「そうなのね。聞かせてくれてありがとう。次は私ね」
咲は綺麗な白い髪を肩から垂らしたまま、少しうつむき気味に、思い出すようにゆっくり口を開いた。
「私、昔親から虐待を受けていたの。私、小さい頃から占いにはまっていて、ゴシック系のものにもすごく興味があった。でもきっとそんな私のことが気に入らなかったんだと思うわ。私が占いをする度、いつも暴力を振るわれた。別に両親を憎んだりはしなかったわ。それ以上に、なんで私は認められないんだろうって、いつも考えてた。言われること、全部守った。それでも占いだけはやめたくなかった。好きだったから。そして高校生になって、一人この町に飛び出してきてこのタロットカードと出会った。その時の願いは両親にありのままの自分を認めてもらうことだったわ」
「それは普通の願いでは叶えられないの?」
「一度やってみたけど駄目だったわ。現実には起こりえないってことよ…」
「どうして…!」
「わからないわ。でも、今の願いはそんなことじゃないの」
咲はうつむき気味だった顔を上げ、決意するように拓人に言い放った。
「ねえ、私がスムーズにパートナー契約を行えたこと、不思議に思わなかった?」
「ごめん待たせて」
「別にいいわ。急に呼び出したのは私だし」
咲は落ち着いた様子で拓人に隣に座るよう促した。
「どうして急に?」
「ちょっとこのゲームについてわかってきたことがあって」
ゲームについては個々で調べていくしかない。それは拓人もわかっていた。だからこそこの情報交換の大切さはよくわかった。
「私今日このタロットカードについて調べるために、隣町の方にいっていたの。その町でこのタロットカードを売ってる店を探したのよ。そしたら…こんなタロットカードは入荷されてないって、すべての占い専門店は言ったのよ」
「それって、この町でしかこのタロットカードが出回っていないってこと?」
「そうなるわ。同時にこの町でしかこのゲームは行われていない」
「それは言い切れないんじゃないか?だってこのタロットカードを持ってる人がこの町から離れたりしたら…」
「そう。私は今日離れたのよ」
咲は女帝のカードを見つめながらつぶやいた。
「この町から出た瞬間、あの高音が脳内に鳴り響いたわ。そしてすぐに戦闘に巻き込まれた」
「そんなの聞いてないよ!」
拓人は今日1日、先ほどのメール以外受け取ってないことを思い出した。
「言ってないからよ。小アルカナだったし」
「だからってもう少し僕を頼ってくれても…」
拓人は自分が力になれないことに少し落ち込んだ。
「頼らなかったんじゃないわ。頼らなくても倒せる相手と確信していたからよ。これが大アルカナだったらすかさず呼んでいたわ。それとも経験として呼んでいた方が良かったかしら?」
「もういいよ」
拓人はうなだれた。そんな拓人を気にもせず、咲は続きを話し始めた。
「一度しか試してないからただの仮説だけど、この町から出るとき、そのときは強制的にカード所持者に居場所が特定されるようになっているんじゃないかと思うの」
咲の仮説が正しいとしたら、この町から出るには必ず戦闘を行わなければならないということになる。つまり…
「創始者はカード所持者をこの町から出したくない」
「おそらく」
理由はわからないが、そうであることは事実だった。
「ねえ、これは私の興味もあるのだけれど、お互いの叶えたい願い、教えておかない?お互いの命を背負ってるわけだし、パートナー契約が有効なまま優勝したら、それぞれが願いを叶えられるの。どうかしら?お互いあまり隠し事はしたくないじゃない?私も話しておきたいことがあるし」
「そうだね。じゃあ僕から話すよ。あまり明るい話じゃないけど、そこはごめん」
「別にいいわ。そもそもこんなデスゲームの中にいるんだから暗い話なんて慣れっこよ」
「そうか」
拓人はゆっくりとあの地獄の情景を思い出した。きっと咲はここまで暗い話は予想していないだろう。
モルテはカードのまま拓人の話を聞くことにしたようで、カードからビジュアル化する気配はなかった。
**************
「両親を…殺され…」
「うん。二年前に」
「ご、ごめんなさい…。嫌なこと思い出させちゃったわね…」
珍しく咲が狼狽えた。
「いいんだ。いずれ話さなきゃいけなかっただろうし」
拓人は優しく微笑んだ。
「だから僕は、両親を生き返らせるか、犯人の逮捕か、どちらかを願いたいと思ってる」
弓実にこの願いを指摘された後でも、拓人の願いはまだその二つで揺れていた。
「そうなのね。聞かせてくれてありがとう。次は私ね」
咲は綺麗な白い髪を肩から垂らしたまま、少しうつむき気味に、思い出すようにゆっくり口を開いた。
「私、昔親から虐待を受けていたの。私、小さい頃から占いにはまっていて、ゴシック系のものにもすごく興味があった。でもきっとそんな私のことが気に入らなかったんだと思うわ。私が占いをする度、いつも暴力を振るわれた。別に両親を憎んだりはしなかったわ。それ以上に、なんで私は認められないんだろうって、いつも考えてた。言われること、全部守った。それでも占いだけはやめたくなかった。好きだったから。そして高校生になって、一人この町に飛び出してきてこのタロットカードと出会った。その時の願いは両親にありのままの自分を認めてもらうことだったわ」
「それは普通の願いでは叶えられないの?」
「一度やってみたけど駄目だったわ。現実には起こりえないってことよ…」
「どうして…!」
「わからないわ。でも、今の願いはそんなことじゃないの」
咲はうつむき気味だった顔を上げ、決意するように拓人に言い放った。
「ねえ、私がスムーズにパートナー契約を行えたこと、不思議に思わなかった?」
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