119 / 170
第八章 | 守銭奴商人 vs 性悪同心
守銭奴商人 対 性悪同心 其ノ陸
しおりを挟む「困っているってことがお金で解決できるってなったら、たくさんお金出してくれるかもしれないじゃない♡」
金ちゃんの率直な言葉に、喜兵寿はあんぐりを口を開け、直は思いっきり吹き出した。
「あははは!おれ、お前のこと嫌いじゃないわ。何を考えてるかわかんないやつより、よっぽど信用できる!」
「あら~ありがとう♡」
金ちゃんは大きな身体をくねくねと揺らすと、嬉しそうに笑う。
「お金は裏切らないからね~お金さえ出してくれれば、わたしも裏切らないわよ~♡」
喜兵寿は酒蔵の中をぐるりと見渡した。清潔で十分な広さのある蔵だ。ここには酒造りに必要な道具がすべて揃っている。それに……
喜兵寿はくんっと匂いを嗅ぐ。「元麹や」と言っていたが、恐らくここでまだ麹を作っているのだろう。ほんの少しだが、種麹独特のにおいがする。
麹は日本酒造りには絶対欠かせないものだ。もしそれを村岡たちが知っているのだとすれば……喜兵寿や最悪の状況を想像し、身震いした。
俺たちに酒を造らせないようにするため、下の町中の酒蔵に根回しするような奴らだ。既に麹やにも同じことをしている可能性がある。そうなれば、日本酒びいる造りは本当に絶望的になってしまう。
(しかしここで酒造りをするのであれば、酒蔵と麹の両方が手に入るだろう……多少の額はのむ……か……)
喜兵寿は小さくため息をつくと言った。
「それで、こちらはいくら用意すればいい?」
喜兵寿の言葉に、金ちゃんは顔をぱあっと輝かせた。
「うふふ。そうねえ……」
金ちゃんはにっこり笑うと、指を3本立てた。
「300両で♡」
「300両!?!?」
その言葉に、喜兵寿は素っ頓狂な声をあげる。ここ数年金の価値が下がってきているとはいえ、法外な価格だ。
「そんな大金払えるわけないだろ!何考えてるんだ!足元を見るのもいい加減にしろ!」
しかし金ちゃんはにこにこほほ笑んだまま、3本の指を横に振っているだけだ。
「なあなあ、300両っていくらだ?高いのか?」
横から口を挟んでくる直を押しのけ、喜兵寿は金ちゃんに詰め寄る。
「だいたいひと月酒蔵を借りるだけだぞ?それも全部貸してくれなど、一言もいっていない。ほんの片隅でいいんだ」
「なあなあ、300両だと酒何杯飲める?」
「俺たちが醸造している間も、もちろん普通に酒造りをしてくれて構わない。なあ、そう考えたらその金額はどう考えても吹っ掛けすぎだろ」
「なあなあ、300両で馬とか買えちゃう?」
「うるさい!」
喜兵寿は直の頭をひっぱたいた。
「馬は数頭買えるし、酒は死ぬほど飲めるわ!」
「あはは!変な二人ねえ~」
2人のやりとり見て、金ちゃんは声を立てて笑った。
「そうよ~300両は大金。でもびた一文まけない。こっちだって危ない橋を渡るわけだしね。じゃ、いいお返事お待ちしてるわね」
それだけ言うと、くるりと踵を返し店の奥へと消えてしまった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
