Exスキル『能力100万倍』で、あべこべ世界で苦しむ奴隷達の『低価値スキル』を超優秀に!ただし、『性欲100万倍』の副作用付きですが...。

たけ

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第四章 「マリナ」のお店

第49話 採掘チーム「一攫千金」

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 さあ、歓迎会ということで、「マリナのお店」にロジンの案内で向かう途中、前方で激しく言い争う声が聞こえてきた。

 「◆◇が、△□に×%!」

 「◎☆ら、◆×に△○!!」

 「△○が、◇□に×%!!!」

 ナイメール星では、女性の方が男性よりも体格が大きく、血の気が多い。この為、こういう揉めごとを起こすのは大抵が女性のようである。う~ん、地球とは異なるな。

 今、少し先の路上から聞こえてくるのは、女性同士が言い争っているような声だ。

 「こら!お前らが道を譲れや!」

 「何だと?何であたい達が譲らなきゃならないんだい!」

 「このブサイクが!道を開けろって言っているんだよ!」

 「ブサイク、ブサイクってうるさいね!ブサイクは関係ないだろ!そっちがどけばいいだろうがぁ!」

 そんな怒鳴り合う声を聞いて「また、懲りませんね...」とロジンは呟く。

 それを聞いて、カクも「ええ、屈強な女性冒険者と争っているのは、鉱婦コウフの者たちでしょう。どちらも...血気盛んな者たちが多いので...」と、ロジンの言葉に賛同するかのような声のトーンで、彼は俺に教えてくれた。

 「本当に、道の真ん中で何をやっているのだか...」とクラリスもあきれ顔だ。

 ただ、今まで好き勝手に歩いていたが、気がつけばカク、モリジン、ヤーロンが俺の左右と後ろに、メルとコロが前方へ移動。そして、クラリスが俺の真横にそっと移った。

 さらに、ロジン、ワイジン、ヨハンの暗部連中が、俺たちの陣形を囲むように目を光らせている。どうやら彼ら8人と1匹で作戦会議をしたらしい。これは何かが起来た時に、すぐに俺を守る為の配列のようだ。

 コロまで俺を守ってくれるみたいだ。ありがたい。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 どうやら、10人程の2つのグループが「道を譲れ」、「いや、そっちが譲れ」と言い争っているようだ。状況から察するに、非常に些細なことで揉めているらしい。おそらく、どちらも引き下がることができなくなってしまったのだろう。

 ただし、片側の女性たちは、額から鼻筋にかけて覆うファントムマスクを着用し、クラリスやモリジンと同じような特別な奴隷の首輪を身につけている。

 という事は、この者達は奴隷の様だが、随分と威勢のいい奴隷たちだな。

 「こっちがよける必要はねえ!私たちが気持ちよく通っていたんだ!奴隷の身分でしかもブサイク共が!さっさとどきな!」

 あまり気持ちのいい言い方じゃないな。道を譲る譲らないは別にして、ブサイクは関係ないだろ。なんだか俺まで腹が立って来た。

 「一言言ってやろうか」と思いつつ小競り合いを見守っていたら、「まあまあ、あんたらも落ちつきなって。あたいの奴隷たちのせいで、気分を悪くさせちまって申し訳なかったね。だけど...ブサイクだからって、サゲズまれるのは腑に落ちないね」

 そう言いながら、高級なマントを羽織り、額には彼女たちと同じデザインのファントムマスクをつけた女性が、新しい奴隷たち数名を引き連れて、小競り合いが行われている場所へと割り込んできた。

 高級なマントを羽織った女性は、周囲の者たちよりも小柄に見えたが、その貫禄とオーラはずば抜けていた。マスク越しの鋭い眼差し一つで、小競り合いをしていた者たちの戦意をくじいてしまうほどだった。

 冒険者グループのリーダーと思しき女性が、割り込んできた女性に向かって、「な、何だい...インリンさんもいたのかい...そ、それなら先に言っておくれよ。わ、私たちも言い過ぎたよ。悪かったね」と、先ほどまで大声で敵意をむき出しにしていた女性は、インリンに頭を下げて謝った。

 謝ってきた女性に対してインリンと呼ばれた者は、「ブサイクなのは自分が一番認めているよ。あんた達が羨ましいよ。だから、あまり虐めなさんな。あたい達だって傷つくんだよ」と、相手の者たちに対し寂しそうに呟いた。

 女たちはインリンに対してぺこぺこと頭を下げ、そそくさとその場を後にした。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 身体全体をマントで隠し、顔はファントムマスクで上半分を覆っている。でも、ナイメール星って確か、外見至上主義じゃなかったのか?どう見ても、この世界じゃ綺麗な者たちが、劣等感丸出しのインリンに対して低姿勢であった。

 インリンはマスク越しとはいえ、何となく分かる。顔や身体で苦労している側の者だと。

 俺がインリンに視線を送っていると、俺の存在に彼女も気が付いている様だ。すごくチラチラと俺を見て来る。

 インリンって誰なんだろう?結構有名人なのかな?

 クラリスは俺の視線に気付き、「あちらの方が気になるのですか、主様?」と尋ねてきた。

 「インリン様は、採掘チーム、「一攫千金」の代表です。彼女の指示に従うと、貴重な宝石が見つかることで評判です。見た目はともかく、彼女の貢献により村は大いに恩恵を受けており、誰も彼女に対して手を出すことはありません」

 なるほどな。村の功労者か。そりゃ、いくら外見で非があっても、一介の冒険者がたてつくことはできないわな。

 「インリン姐さん、ありがとうございました!」

 「姐さん、カッコよかったですよ!」

 「あ、ああ...いいってことさ」

 「姐さん、何ぼーとしていらっしゃるんですか?ははーん、あのイケメン様に見とれていたんですね?」

 「な、なに言ってんだい、サラ!てっめぇ!」

 インリンはサラのお尻を軽く蹴っ飛ばした。「姉さん酷いっすよ!」と、サラはインリンに対して文句を言う。

 いつもの光景なんだろう。仲間たちも見て笑っている。
 
 楽しい連中だな。賑やかでいい奴らっぽいな。まあ、血気盛んさはあるようだ...。

 だが...。
 
 それは突然のことだった...。

 問題が...予期せずに起こった...。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 カッ、カラカラカラカラカラ...。

 突然、その場の雰囲気が一変した。

 インリンとサラがじゃれ合っている最中に、サラのファントムマスクが外れて地面に落ちてしまった。そして、マスクがはだけた素顔のサラと俺の視線が交わってしまった。これは、あまりにも予想外の事態であった。

 「サ、サラ、あ、あんた!」

 インリンは慌ててサラの顔にタオルを巻き、自分の背後にサラを隠した。

 「ほ、本当にすまなかったよ!ブサイクな顔をさらしちまって...。た、頼むから心を病まないでおくれよ!切りつけないでおくれよ!慰謝料なら払うからさ!」と、インリンはマスク越しでも分かるほど涙目で震えながら、必死に謝罪の言葉を絞り出した。

 タオルで顔を隠したサラがインリンの背中にしがみつき、「マスク...マスク...」と体を震わせながら呟いている。

 そんな、慰謝料何て...すごく可愛い顔を見せてくれただけじゃんか。こっちが感謝料を払わなきゃいけないぐらいなのに...。

 おいおい、場が騒然としている...いや俺の心もだけど...。どうしよう...。
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