Exスキル『能力100万倍』で、あべこべ世界で苦しむ奴隷達の『低価値スキル』を超優秀に!ただし、『性欲100万倍』の副作用付きですが...。

たけ

文字の大きさ
55 / 75
第四章 「マリナ」のお店

第55話 白豹族ジョーク

しおりを挟む
 獣人と言っても、そのバリエーションは実に様々だ。ザイフのように一目で獣人と分かる者もいれば、ローファンのように耳と尻尾以外は人間とほとんど変わらない者もいる。

 同じ獣人でも、その多様性は非常に豊かだ。

 従業員のローファンがインリンに俺のことをしきりに尋ねてくる。おいおい、仕事はどうした、仕事は⁉

 「どういう事よ、インリン!マスクも付けずに、信じられないぐらいの男前を連れて来て...。しかも私を見ても嫌な顔、一つしない。いや、むしろ照れているじゃない。もしかしたら...私への供物クモツ?」

 こわいこわい。

 俺が少し引いたような表情を見せると、ローファンは「じょ、冗談ですよ。白豹族ジョークですよ。コホン!それでは2階にご案内しまーす」と言った。

 俺が「ありがとう」と言うと、彼女は持っていたお盆を落とし、「ちょ、ちょっと、こんな素敵な人族の殿方から、お礼を言われちゃった♡」と言って、尻尾をぶんぶん振って喜んだ。

 コロみたい。コロが俺の視線に気が付いたのか、「く~ん♡」と言って、同じように尻尾をぶんぶん振って喜んだ。うん、2匹とも可愛い。

 「へへっー、ローファン、あたいなんか手を握られたんだぜ!」とインリンは得意げに言い、どや顔を決めた。それを聞いたローファンは「え、嘘でしょ?」と驚き、拾ったばかりのお盆をまた落としてしまった。

 お盆が偶然俺の足元に転がってきた。俺がそれを拾い上げてローファンに手渡そうとしたとき、彼女はお盆ではなく俺の手を取り、「もしよろしければ、お名前を教えていただけませんか?素敵な殿方様♡」と尋ねてきた。

 俺はローファンに「智也ですよ。よろしくお願いしますね。ローファンさん」と告げた。

 「はい♡こちらこそよろしくお願いします♡智也様♡」

 ローファンはそう俺に告げた後、さらに俺の手を強く握り、彼女の尻尾は信じられない速さで回転していた。

 「こ、こらローファンてめ―!どさくさに紛れて何してんだ!早くあっちに行け!」

 「ふふふ。私も手を握ったわよ♡白豹族は超積極的なのよ。智也様、後ほどお伺いしますね♡」

 本当に食べられそう。

 インリンは「もう二度と来るな、てめーは!」と、大声でローファンに向かって叫んだ。

 「もう困ったものですよ、ローファンには...」とザイフは少しげんなりとした表情で言った後、「私が2階にご案内致します」と階段を登り始めた。

 「あと、マリナ様の確認も取れました。「ゆっくりとしていって」とのことです。ただ...こんなことは稀ですよ。よほどの常連でなければ、2階にあげる事なんて...。マリナ様も何かを感じたのでしょうかね...」とザイフは付け加えた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 「はい、どーぞ」と言っておしぼりをローファンが持って来た。本当に日本の居酒屋みたい。「智也様もどーぞ♡」そう言って俺の前に来て、俺に直接おしぼりを渡してくれた。

 「よろしかったら、身体全体を丁寧にお拭きいたしましょうか?ひい!」

 こらこら、メル、殺気を放つな。ローファンの奴、本気で怯えているぞ...。

 「じょ、冗談です。白豹族ジョークパートⅡですよ~」と、メルに怯えながら俺に話しかけてきた。

 「あと、飲み物や食べ物はいかがいたしますか?」と尋ねてきた。まともな会話に戻った。

 「とりあえず、俺たちはここのお店を初めて利用するから、お任せで。あと、何かお勧めの物、特に肉や魚料理を沢山持って来て欲しい」と頼んだ。

 「はい、ありがとうございます~♡」と笑顔でローファンは俺に返事をして来た。

 うちの新人たちは最近、黒パンとチーズと干し肉しか食べていないから。肉や魚料理があれば、食べさせてあげたい。

 「あと、お酒も持って来てあげて。ただ、俺はアルコールが含まれていない物を」

 俺の言葉に、カク、ヤーロン、そしてモリジンは驚きの表情を浮かべた。

 獣人たちによれば、獣人国ではお酒が豊作年の収穫祭でのみ提供され、非常に贅沢な品とされている。このマリナの店には、エールやハチミツ酒、それに葡萄酒などが揃っている様だ。エールって地球でいうビールのことだろ?異世界って感じがするな。

 正月に、親戚のおじさんから強引に注がれたビールを試してみたけど、美味しいと感じなかった。

 まあ、無理して飲む物じゃないよな。

 俺は水でもお茶でも、何でも構わない。ただ、お腹を満たすものが食べたい。できれば、油が滴るものが食べたい。

 ただ、こちらの世界では飲酒の年齢制限は無いようだ。俺は飲まないが、クラリスやメルが飲みたいなら、飲めばいいと思う。

 クラリスは葡萄酒を飲みたいと言うと、恐る恐るメルもハチミツ酒を飲んでみたいと言い出した。どんどん楽しめばいい。

 その時、カクは神妙な面持ちで「ご主人様、本当にいいんですか?私たちは奴隷ですよ?まだ何の仕事もしていないのに、好きなものを食べてもいいだなんて...」と尋ねてきた。

 まあ、他の奴隷のことは分からないけれど、自分が美味しいものを食べている間、彼らを後ろで立たせたり、軒下で待たせる神経は、俺には理解できない。俺の奴隷なら、一緒にたくさんの美味しいものを食べて、幸せな気持ちになって欲しいと思う。

 「今日の主役は君たちだ。たくさん食べてくれればいい。悪いが俺の命令に従って欲しい。ただ、納得のいかないことはちゃんと言って欲しい。話を聞くから」
 
 「かしこまりました。では...たくさん食べて、お酒も頂きます」とカクは真面目に返事をして、深々と頭を下げてきた。

 さあ、何はともあれ、ご飯だご飯だ!!脂っこいものをいっぱい食べるぞ!!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

美醜逆転世界の学園に戻ったおっさんは気付かない

仙道
ファンタジー
柴田宏(しばたひろし)は学生時代から不細工といじめられ、ニートになった。 トラックにはねられ転移した先は美醜が逆転した現実世界。 しかも体は学生に戻っていたため、仕方なく学校に行くことに。 先輩、同級生、後輩でハーレムを作ってしまう。

家族と魔法と異世界ライフ!〜お父さん、転生したら無職だったよ〜

三瀬夕
ファンタジー
「俺は加藤陽介、36歳。普通のサラリーマンだ。日本のある町で、家族5人、慎ましく暮らしている。どこにでいる一般家庭…のはずだったんだけど……ある朝、玄関を開けたら、そこは異世界だった。一体、何が起きたんだ?転生?転移?てか、タイトル何これ?誰が考えたの?」 「えー、可愛いし、いいじゃん!ぴったりじゃない?私は楽しいし」 「あなたはね、魔導師だもん。異世界満喫できるじゃん。俺の職業が何か言える?」 「………無職」 「サブタイトルで傷、えぐらないでよ」 「だって、哀愁すごかったから。それに、私のことだけだと、寂しいし…」 「あれ?理沙が考えてくれたの?」 「そうだよ、一生懸命考えました」 「ありがとな……気持ちは嬉しいんだけど、タイトルで俺のキャリア終わっちゃってる気がするんだよな」 「陽介の分まで、私が頑張るね」 「いや、絶対、“職業”を手に入れてみせる」 突然、異世界に放り込まれた加藤家。 これから先、一体、何が待ち受けているのか。 無職になっちゃったお父さんとその家族が織りなす、異世界コメディー? 愛する妻、まだ幼い子どもたち…みんなの笑顔を守れるのは俺しかいない。 ──家族は俺が、守る!

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

処理中です...