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第三章
49.境界線
しおりを挟むーー今日は日曜日で、天気は晴れ。
外は湿気でムシムシしているけど、午後から近所のカフェで翔くんとデート中。
「翔くん、進路はもう決めた?」
「俺はS大が第一志望だよ」
今日もたわいもない会話を楽しむ。
翔くんには聞きたい事が山ほどあるから、ほとんど一方的な質問攻めに。
その一方で付近に座っている若い女性客は容姿端麗の彼に指をさしてヒソヒソと噂話。
『モデルじゃない?』とか、『一緒にいる子は、彼女かなぁ』とか。
向かいに座ってる私の噂まで耳に入ってくる。
日を追うごとに慣れてきたけど、はっきり言っていい気がしない。
それは私だけじゃない。
同じく噂話が耳に入っている彼だって迷惑そうにイライラしている。
私達が交際を始めてから、1ヶ月弱。
最初の頃は緊張で目線を合わすのが難しかっ たけど、最近は会話が成立するように。
ようやく友達レベルまで関係を縮めた。
でも、彼は私の事をあまり知らないし、質問もしてこない。
この微妙な心の温度差が実質片想いの私を苦しめている。
「S大かぁ……。教育学部あるかな」
「咲ちゃんはK大志望って言ってたよね」
「うん。でも、出来れば翔くんと同じ大学に行きたいな」
こうやって、しおらしく甘えてみても。
「俺と咲ちゃんは夢が違うよ」
一時の迷いもなく境界線が引かれる。
少しでも気持ちが繋がっていれば、こんな言い方はしないはず。
形では彼女になれたけど、いつか本物の彼女になれる日が来るのかな……。
恋人としてスタートさせてから同時に進めていたはずの時計は、いつも私だけが先回りに。
この1ヶ月間で彼の心に少しでも変化が生じているのだろうか。
それと同時に確かめたい事がある。
私の予感に間違いなければ、事態は想像以上に深刻に。
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