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ある日突然、手紙が届きました
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僕はマイク。
イグナス・ドルトレッド伯爵のお屋敷の庭師をしている。
まあまあ1年間ぐらい見習いをやってからの昇格。
いろいろ、いろいろあった1年間だったけれど、その間に僕には掃除メイドのサラという彼女が出来たし、旦那様は結婚した。
旦那様のお相手のメイベル様は、旦那様の親友であるノーマン・ネルソン子爵の父親の血の繋がらない娘。
それって何?って関係だけど、今はもう伯爵家の奥様。
しばらくの間、事情があってメイベル様は伯爵家の使用人をしていたから、伯爵家のことは大体把握している。
そんな何でもない日常は、一通の手紙から綻び始めた。
その手紙に差出人の表記は無く、宛先もタイプライターで打たれたものだった。
中には写真が数枚。
旦那様と見知らぬ女性が、不適切な距離で接触している場面が写っていた。
言葉を換えるなら、イチャイチャ。
それを何故、ただの庭師の僕が目にしているのかというと、この伯爵家は“辺境伯の子供たち”という王国捜査網を担う組織の“表”組織で、僕もその組織の一員だからだ。
ちなみに僕の彼女のサラも組織の一員。
あとは、旦那様はもちろんだし、奥様も。庭師の親方のフィルさんに、洗濯メイドのメイ、厨房メイドのマリが中核で、他の使用人たちは見習いから手下まで多種多様。
あ、執事長だけは微妙なポジション。
もともとイグナス様は中立を表明していて、そういう中立的立場の貴族へのスパイとして伯爵家に送り込まれていたんだけど、かくかくしかじかで結局まだ執事長をしている。
悪い人じゃないし、仕事は出来るから。
でも信用はなかなか出来ないんだよね。
“かくかくしかじか”の中身を言っちゃうと、メイベル様に魅了されていて、メイに催眠術を掛けられてるので外に出せないってことだから。
この伯爵家の中核メンバーはみんな特殊能力を持っている。
旦那様は予め座標を刻んでおいた場所に転移出来る。
奥様は魅了持ち。
フィル親方はオーラが見える。
メイは催眠術で、サラは戦闘能力、マリは薬草・毒草の知識に長けている。
そして僕は片耳(半耳かな)の聴力を飛ばせる。
土地勘のある場所か、遠隔の場合は介在者が必要だけど。
さて、そんなメンバーの真ん中のテーブルの上に鎮座している写真たち。
写っている旦那様は少し若い気はするが、若者ではない。
写真の当時はきっとメイベル様との関係は始まってなかったと…思いたいが、今現在送られてきたということが問題だ。
旦那様はそもそも、学園時代に出会って恋をしたクラリス様を、彼女がノーマン様(旦那様の親友)と結婚してからも、亡くなられてからも、ずっと一途に思っていたはず。
手紙の宛先は奥様だった。
召集が掛かり、全員が揃ったところでこの写真は広げられた。
表情の読めない奥様。
固まる僕たち。
そして、その写真を凝視する旦那様。
え?まさか…?旦那様…?!
イグナス・ドルトレッド伯爵のお屋敷の庭師をしている。
まあまあ1年間ぐらい見習いをやってからの昇格。
いろいろ、いろいろあった1年間だったけれど、その間に僕には掃除メイドのサラという彼女が出来たし、旦那様は結婚した。
旦那様のお相手のメイベル様は、旦那様の親友であるノーマン・ネルソン子爵の父親の血の繋がらない娘。
それって何?って関係だけど、今はもう伯爵家の奥様。
しばらくの間、事情があってメイベル様は伯爵家の使用人をしていたから、伯爵家のことは大体把握している。
そんな何でもない日常は、一通の手紙から綻び始めた。
その手紙に差出人の表記は無く、宛先もタイプライターで打たれたものだった。
中には写真が数枚。
旦那様と見知らぬ女性が、不適切な距離で接触している場面が写っていた。
言葉を換えるなら、イチャイチャ。
それを何故、ただの庭師の僕が目にしているのかというと、この伯爵家は“辺境伯の子供たち”という王国捜査網を担う組織の“表”組織で、僕もその組織の一員だからだ。
ちなみに僕の彼女のサラも組織の一員。
あとは、旦那様はもちろんだし、奥様も。庭師の親方のフィルさんに、洗濯メイドのメイ、厨房メイドのマリが中核で、他の使用人たちは見習いから手下まで多種多様。
あ、執事長だけは微妙なポジション。
もともとイグナス様は中立を表明していて、そういう中立的立場の貴族へのスパイとして伯爵家に送り込まれていたんだけど、かくかくしかじかで結局まだ執事長をしている。
悪い人じゃないし、仕事は出来るから。
でも信用はなかなか出来ないんだよね。
“かくかくしかじか”の中身を言っちゃうと、メイベル様に魅了されていて、メイに催眠術を掛けられてるので外に出せないってことだから。
この伯爵家の中核メンバーはみんな特殊能力を持っている。
旦那様は予め座標を刻んでおいた場所に転移出来る。
奥様は魅了持ち。
フィル親方はオーラが見える。
メイは催眠術で、サラは戦闘能力、マリは薬草・毒草の知識に長けている。
そして僕は片耳(半耳かな)の聴力を飛ばせる。
土地勘のある場所か、遠隔の場合は介在者が必要だけど。
さて、そんなメンバーの真ん中のテーブルの上に鎮座している写真たち。
写っている旦那様は少し若い気はするが、若者ではない。
写真の当時はきっとメイベル様との関係は始まってなかったと…思いたいが、今現在送られてきたということが問題だ。
旦那様はそもそも、学園時代に出会って恋をしたクラリス様を、彼女がノーマン様(旦那様の親友)と結婚してからも、亡くなられてからも、ずっと一途に思っていたはず。
手紙の宛先は奥様だった。
召集が掛かり、全員が揃ったところでこの写真は広げられた。
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そして、その写真を凝視する旦那様。
え?まさか…?旦那様…?!
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