2 / 8
昔話は突然に
しおりを挟む
「この写真の男は私だが…20年以上前だな」
20年?!えっ?!まさかの若者時代だった?!
「なんだ?マイク。みんなも驚き過ぎだろう」
いやいや、変わらな過ぎ…あ、そっか、変わらない人っているよな、そういえば。
僕は育ての親である、“辺境伯の子供たち”の幹部のサティを思い浮かべた。
「私は昔から老け顔で、10代後半から大して変わっていない。皺が増えたぐらいだな」
淡々と話す旦那様に毒気を抜かれたのか、表情の読めなかった奥様の鉄仮面が解れた。
「それは分かったけど、何故これが今届いたの?この人とは…どんな…いつまで…」
どんどん声が小さくなる奥様を胸に抱き寄せた旦那様は、奥様の耳元で囁いた。
「メイベル、私が今愛しているのはメイベルだけだ。
…過去の私は初恋のクラリスをずっと引きずっていた。クラリスがノーマンと結婚して2人の間に子供が出来て…諦めようとして恋人も作ろうとしたし自棄になってた時期もあった。その頃の、その時だけの女性だ」
「今は…」
「どうしているのかは知らない。その時も、突然いなくなったんだ。私は気にもしなかった。メイベル、信じて欲しい。私には君だけだ」
「イグナス…」
「メイベル…」
おーい!僕たちがいるの見えてる?
「旦那様!よーく分かりましたから話を進めましょう!」
メイが切り込んだ。頼りになるなあ。
「普通、奥様宛てに旦那様の不倫写真が送られてきたら修羅場ですね?最悪離婚です。しかも新婚家庭に。この女性は旦那様に未練があって、それを狙ったのでは?」
「新婚というか、旦那様が結婚したから行動したのかもしれません。誰とも結婚しないと思っていた旦那様が結婚したから逆上した可能性は?」
サラもなかなか鋭いことを言うなあ。
「別れさせたいだけなのかしら?旦那様はあんまり変わってなくてもこの女性はこのままじゃないでしょう?復縁も出来ないでしょうに傍迷惑な人ね」
マリもおっとりしてるようで結構キツいこと言うな…う~ん、世の中には美魔女ってのがいるからなあ。サティとか。
ずっと考え込んでいたフィル親方が方針を固めた。
「とにかく、この女性の素性を調べましょう。旦那様、言いにくいこともあるかと思いますがどうやって知り合ったかとか、名前とか、キッチリご申告を」
「何もやましいことは無いよ。酒場で出会って、ナンシーという名前だった」
…旦那様、普通淑女とは酒場では出会いませんし、ナンシーですか…絶対とは言えませんがほぼ偽名でしょうね。
フィル親方と目を見交わした僕は口を開いた。
「この写真を預からせてください。“辺境伯の子供たち”の方で調べてもらいます」
このドルトレッド伯爵家は“辺境伯の子供たち”の“表”の組織だが、僕だけは“裏”の一員なんだ。
これはきっと表沙汰には出来ない事だという予感がした。
20年?!えっ?!まさかの若者時代だった?!
「なんだ?マイク。みんなも驚き過ぎだろう」
いやいや、変わらな過ぎ…あ、そっか、変わらない人っているよな、そういえば。
僕は育ての親である、“辺境伯の子供たち”の幹部のサティを思い浮かべた。
「私は昔から老け顔で、10代後半から大して変わっていない。皺が増えたぐらいだな」
淡々と話す旦那様に毒気を抜かれたのか、表情の読めなかった奥様の鉄仮面が解れた。
「それは分かったけど、何故これが今届いたの?この人とは…どんな…いつまで…」
どんどん声が小さくなる奥様を胸に抱き寄せた旦那様は、奥様の耳元で囁いた。
「メイベル、私が今愛しているのはメイベルだけだ。
…過去の私は初恋のクラリスをずっと引きずっていた。クラリスがノーマンと結婚して2人の間に子供が出来て…諦めようとして恋人も作ろうとしたし自棄になってた時期もあった。その頃の、その時だけの女性だ」
「今は…」
「どうしているのかは知らない。その時も、突然いなくなったんだ。私は気にもしなかった。メイベル、信じて欲しい。私には君だけだ」
「イグナス…」
「メイベル…」
おーい!僕たちがいるの見えてる?
「旦那様!よーく分かりましたから話を進めましょう!」
メイが切り込んだ。頼りになるなあ。
「普通、奥様宛てに旦那様の不倫写真が送られてきたら修羅場ですね?最悪離婚です。しかも新婚家庭に。この女性は旦那様に未練があって、それを狙ったのでは?」
「新婚というか、旦那様が結婚したから行動したのかもしれません。誰とも結婚しないと思っていた旦那様が結婚したから逆上した可能性は?」
サラもなかなか鋭いことを言うなあ。
「別れさせたいだけなのかしら?旦那様はあんまり変わってなくてもこの女性はこのままじゃないでしょう?復縁も出来ないでしょうに傍迷惑な人ね」
マリもおっとりしてるようで結構キツいこと言うな…う~ん、世の中には美魔女ってのがいるからなあ。サティとか。
ずっと考え込んでいたフィル親方が方針を固めた。
「とにかく、この女性の素性を調べましょう。旦那様、言いにくいこともあるかと思いますがどうやって知り合ったかとか、名前とか、キッチリご申告を」
「何もやましいことは無いよ。酒場で出会って、ナンシーという名前だった」
…旦那様、普通淑女とは酒場では出会いませんし、ナンシーですか…絶対とは言えませんがほぼ偽名でしょうね。
フィル親方と目を見交わした僕は口を開いた。
「この写真を預からせてください。“辺境伯の子供たち”の方で調べてもらいます」
このドルトレッド伯爵家は“辺境伯の子供たち”の“表”の組織だが、僕だけは“裏”の一員なんだ。
これはきっと表沙汰には出来ない事だという予感がした。
1
あなたにおすすめの小説
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
地味な私では退屈だったのでしょう? 最強聖騎士団長の溺愛妃になったので、元婚約者はどうぞお好きに
reva
恋愛
「君と一緒にいると退屈だ」――そう言って、婚約者の伯爵令息カイル様は、私を捨てた。
選んだのは、華やかで社交的な公爵令嬢。
地味で無口な私には、誰も見向きもしない……そう思っていたのに。
失意のまま辺境へ向かった私が出会ったのは、偶然にも国中の騎士の頂点に立つ、最強の聖騎士団長でした。
「君は、僕にとってかけがえのない存在だ」
彼の優しさに触れ、私の世界は色づき始める。
そして、私は彼の正妃として王都へ……
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
冷遇妃マリアベルの監視報告書
Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。
第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。
そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。
王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。
(小説家になろう様にも投稿しています)
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる