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サティからの報告書
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“辺境伯の子供たち”の“表”組織は、本部からの依頼を受けて動く。
“表”ということは伏せて、“辺境伯の子供たち”だということを表明している。ドルトレッド伯爵家もそうだ。
“表”ですよ、って言ってしまうと、じゃあ“裏”があるんですね、ってバレるからね。
“裏”は“裏”として動ける権限が違う。
僕は預かった写真を“裏”の走り屋に渡す時に片耳の半耳を託した。
そのぐらいの負担なら日常生活に差し障りは無いから。
~~~~~~~~
「マイク、写真の女性は亡くなってるわ。化粧で目鼻立ちの輪郭を変えてるけど骨格は変わらないし、元々この女性はマークしていたのよ。結婚詐欺師だったんだけど、決定的な悪事はしないし誰も訴えないから捕まえようがなかったのよね。イグナスは狙われてたんでしょうね。でも靡かなかったんじゃない?その辺は聞いてみて。突然消えたのは見切られたんでしょ。気持ちもお金も動かせなくて。
何故今頃になって写真が送られてきたのかだけど、この手紙には切手も消印も無いから直接投函されてるわね。後ろには森しか無いどん詰まりの伯爵家に、郵便配達の定時に合わせて投函するのはリスクが高いわ。内部犯行の線でいってみて。じゃあ、返すわね」
最後にふざけてチュッと軽いリップ音を鳴らしたサティは言葉を切った。
僕の4分の1の聴力しか無くて聞こえにくいので、きっと走り屋くんの耳元で話してただろうから、悪いことしたかな?それともご褒美だったかな?
内部か。
大規模な貴族の粛清があった後、取り潰しになった貴族家の使用人たちをドルトレッド伯爵家でも何人か受け入れている。
フィル親方のオーラ判定で明らかなワルは弾かれているけど、みんながみんな清廉潔白な訳じゃない。
一緒に働いている人を疑いたくはないなあ。
奥様と旦那様は今、距離を置いて少し拗れた風を装っている。
写真を送り付けたやつの狙いは分からないけれど、膠着状態が続けば動くだろう。
最終手段としてはフレッドを呼びたいんだけどテスト中なんだよな。
フレッドはネルソン子爵家の3男で、人の心の中の上っ面が読める。
意識されたり隠されたりすると読めないと言ってるけど、その能力を知られてなければかなり有効だ。
~~~~~~~~
預けた手紙と僕の4分の1耳が返ってきた。
結構厚めの報告書と共に。
僕とフィル親方が使っている2人部屋に、旦那様に飛んできてもらった。
定例の集まりをこの前したばかりだから、また集まると内部犯(もしいるとしたら)に警戒されそう。
マリが執務室にお茶を運んだりして、旦那様の在室をカモフラージュしてくれている。
「写真の女性は結婚詐欺師だったそうです。旦那様、心当たりは?」
旦那様が報告書に目を通し終わった頃に、僕は声をかけた。
「う~ん…そうか、詐欺師だったのか…。
家が貧しいとか病気の弟がいるとか言っていたような覚えがあるな」
「もしかしてお金渡しましたか?」
フィル親方が心配そうに聞いた。
「いや。仕事を紹介しよう、とか弟さんが何の病気か教えてくれれば薬も医者も手配してあげよう、とか言っただけだ。写真だと距離がすごく近くて触れ合っているように見えるけれど、人前でこんなにベタベタしていたつもりはない。そう見えるように隠し撮りされているようだな」
人前でなければ…ってこと?
ここに女性陣がいなくて良かった。
過去は過去だけど…ねえ?
“表”ということは伏せて、“辺境伯の子供たち”だということを表明している。ドルトレッド伯爵家もそうだ。
“表”ですよ、って言ってしまうと、じゃあ“裏”があるんですね、ってバレるからね。
“裏”は“裏”として動ける権限が違う。
僕は預かった写真を“裏”の走り屋に渡す時に片耳の半耳を託した。
そのぐらいの負担なら日常生活に差し障りは無いから。
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「マイク、写真の女性は亡くなってるわ。化粧で目鼻立ちの輪郭を変えてるけど骨格は変わらないし、元々この女性はマークしていたのよ。結婚詐欺師だったんだけど、決定的な悪事はしないし誰も訴えないから捕まえようがなかったのよね。イグナスは狙われてたんでしょうね。でも靡かなかったんじゃない?その辺は聞いてみて。突然消えたのは見切られたんでしょ。気持ちもお金も動かせなくて。
何故今頃になって写真が送られてきたのかだけど、この手紙には切手も消印も無いから直接投函されてるわね。後ろには森しか無いどん詰まりの伯爵家に、郵便配達の定時に合わせて投函するのはリスクが高いわ。内部犯行の線でいってみて。じゃあ、返すわね」
最後にふざけてチュッと軽いリップ音を鳴らしたサティは言葉を切った。
僕の4分の1の聴力しか無くて聞こえにくいので、きっと走り屋くんの耳元で話してただろうから、悪いことしたかな?それともご褒美だったかな?
内部か。
大規模な貴族の粛清があった後、取り潰しになった貴族家の使用人たちをドルトレッド伯爵家でも何人か受け入れている。
フィル親方のオーラ判定で明らかなワルは弾かれているけど、みんながみんな清廉潔白な訳じゃない。
一緒に働いている人を疑いたくはないなあ。
奥様と旦那様は今、距離を置いて少し拗れた風を装っている。
写真を送り付けたやつの狙いは分からないけれど、膠着状態が続けば動くだろう。
最終手段としてはフレッドを呼びたいんだけどテスト中なんだよな。
フレッドはネルソン子爵家の3男で、人の心の中の上っ面が読める。
意識されたり隠されたりすると読めないと言ってるけど、その能力を知られてなければかなり有効だ。
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預けた手紙と僕の4分の1耳が返ってきた。
結構厚めの報告書と共に。
僕とフィル親方が使っている2人部屋に、旦那様に飛んできてもらった。
定例の集まりをこの前したばかりだから、また集まると内部犯(もしいるとしたら)に警戒されそう。
マリが執務室にお茶を運んだりして、旦那様の在室をカモフラージュしてくれている。
「写真の女性は結婚詐欺師だったそうです。旦那様、心当たりは?」
旦那様が報告書に目を通し終わった頃に、僕は声をかけた。
「う~ん…そうか、詐欺師だったのか…。
家が貧しいとか病気の弟がいるとか言っていたような覚えがあるな」
「もしかしてお金渡しましたか?」
フィル親方が心配そうに聞いた。
「いや。仕事を紹介しよう、とか弟さんが何の病気か教えてくれれば薬も医者も手配してあげよう、とか言っただけだ。写真だと距離がすごく近くて触れ合っているように見えるけれど、人前でこんなにベタベタしていたつもりはない。そう見えるように隠し撮りされているようだな」
人前でなければ…ってこと?
ここに女性陣がいなくて良かった。
過去は過去だけど…ねえ?
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