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庭師見習いは見た!現れたのは…!

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は……フレッド?

3人でぷんぷんとむくれ返っている女の子たちのところに寄ってきたのはフレッドだった。
話ながら遠ざかっていく4人を追いかけることもせずに、僕はその場で固まっていた。


午後の仕事は僕が力仕事だったので、フレッドとは別行動だった。
切りのいいところまで終わらせるために少し終業が遅れた僕は慌てて夕飯を食べて、疲れ切った体の汗を流して、倒れ込むようにして眠った。

だから普通に夕飯を食べたフレッドが、その後居なくなっていたことに気付かなかった。

翌朝、昨日の微調整をしていた僕は、お屋敷の中から聞こえたメイドの悲鳴にビックリした。

「キャーッ!ど、泥棒が、泥棒が入ったわー!」

旦那様の執務室が荒らされていて、引き出しの中の当座金や金庫が無くなっていた。

そして、使用人が全員集められた時に…フレッドだけがいなかった。

「まさか、フレッドが?」と疑う声が男性陣から上がると、女性たちが反論した。

「そんな訳ないでしょ!フレッドはきっと泥棒を見たから連れて行かれたのよ!」
「それか…罪をなすり付けようとした誰かに閉じ込められたのかも…」
「もしかして…マイク?」
「いつもフレッドに嫉妬していたもの!きっとそうよ!」

「マイク?…そうなのか?」

メイドたちの勢いに押された親方が訝しげに聞いてきた。

「違う!違います!僕、昨日はずっと畝立てしていたじゃないですか!フレッドとは昼に別れた切りです!」

「あの…実は俺…フレッドがあまり良くない感じの人たちと話してるのを聞いたことがあって…でも姿は見てないんです…けど、でも…『これからもよろしくな、フレッド』って」

恐る恐る声を上げた庭師の先輩の言葉を聞いたメイドたちは悲鳴を上げた。

「「いやーっ!」」
「「そんなの嘘よ!」」

けれど昨日僕に絡んできた3人組は身を寄せ合って黙り込んでいた。


僕は集中したくて目を閉じた。

どこだ?
僅かな息遣い、衣擦れ…雑音が多いな。フレッドが心配なら黙っててくれないかな…パントリー…備品庫…いないみたいだな…屋外か?

意識を戻すと、さっきの先輩が何か言っている。

「お屋敷からは少し離れた場所なんですが、もしかしたらそこがアジトかもしれません」

「今から行ってみましょう!」

違う先輩も身を乗り出すようにして叫んでいる。

少し離れた場所?…いた!…すー、すーって…寝てんのか!どんな状況だ?!ああ!もう!


目が飛ばせればなあ!


突然のカミングアウトになるが、僕はなぜか片耳が飛ばせる。物理的ではなくて能力的に。

かつて、とある小大陸にいた某伯爵はなんと両目と両耳が飛ばせたらしいが、そんなとんでもないことは出来なくてもいいけど片目だけでも飛ばせれば、って訓練したけど無理だったんだよなあ。

しかしマズいぞ。これは嵌められてる。
フレッドがそんなことする訳がない。
だって先輩と一緒にお使いに出ていた僕も、その会話を聞いていたんだから。

まさかと思ってその場に耳を残した僕に聞こえてきたのは…。

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