7 / 38
庭師見習いは見た!フィル先輩は…!
しおりを挟む
「僕の自己紹介の前に少し質問してもいいですか?」
軽食を食べ終えた旦那様は、マリさんに皿を下げさせながら肯いた。
「フィル先輩、髪を染めてますよね。元は金髪ですか?」
明るめのブラウンの髪と瞳、スラリと伸びた肢体に整っているけど可愛げのある、伯爵家の使用人中No.1の人気を誇るフィル先輩は、その可愛げのある表情を消した。
「元貴族…ですよね。すみません、気持ち悪がらないでほしいんですが、落とした髪を調べました。染めていることには気付いていたので。綺麗な…綺麗すぎる金髪でした。市井にはいないほどの。そして、フィルは本名だと言いましたね。もしかして、姉はいませんか?フランという名の」
「はっ?!なぜ…!マイク、お前は何者だ?何処の誰だ?!」
「元孤児なのは本当です。履歴書に書いた出身地には居たことはあります。生まれや育った場所は言えませんが、かつて“辺境伯の子供たち”と呼ばれた捜査網がこの国にあったのはご存知かと思います。その捜査網が張り巡らされていることは、冤罪や犯罪に対する抑止力のために先代の国王の時に公にされました。その後、その組織は表と裏に分けられました。僕はその裏の方の施設で育ちました」
マリさんが人数分(執事長のは無いけど)のお茶を持って戻ってきた。
バラバラに立っていた僕たちは真ん中の丸テーブルに座った。旦那様も。
「ここからは逆に意志確認させてください。これ以上のことを聞いたら逃げられません。今なら僕がこのまま消えて貴方たちと一生関わらないことで済ませられます。もちろん、フレッドの実家については影ながら情報提供します」
(フレッド、君に協力したい気持ちは本当だし、多分フレッドの実家問題と僕の事情は関係している。フィル先輩の過去も。どうする?)
「ズルいな、マイク。喋ってないから証拠にはならないって?ネルソン子爵家の領地に表の施設があったことは知っているんだね?」
「「「「「「フレッド?!」」」」」」
旦那様とフィル先輩とメリー…メイベルさんとメイド3人組の叫び声が重なった。
「うん、知ってる。君の祖父のマイラー・ネルソンの隠居先の領地でみんなは育ったんですよね。旦那様は違うけど。何かに利用しようとかで調べたんじゃないんです。きっかけはフィル先輩でした。僕は、十数年に亡くなられたこの国の王妃の筆頭侍女だったフランさんの写真を見たことがあったんです。フィル先輩は彼女ととても似ている。そこから調べ始めたんです」
「マイク」
旦那様の低い声が響いた。
「さっき意志確認したいと言ったが、もう抵触しているだろう。『王妃付き筆頭侍女フランの乱心事件』のことを“裏”で調べているってことだな?子爵家取り潰しに関して情報提供すると即答出来るということは2つの事件は関係しているってことか」
「違いましたが…そうなりそうです」
「もとより私たちは何からも逃げる気は無い。話してくれ、マイク」
軽食を食べ終えた旦那様は、マリさんに皿を下げさせながら肯いた。
「フィル先輩、髪を染めてますよね。元は金髪ですか?」
明るめのブラウンの髪と瞳、スラリと伸びた肢体に整っているけど可愛げのある、伯爵家の使用人中No.1の人気を誇るフィル先輩は、その可愛げのある表情を消した。
「元貴族…ですよね。すみません、気持ち悪がらないでほしいんですが、落とした髪を調べました。染めていることには気付いていたので。綺麗な…綺麗すぎる金髪でした。市井にはいないほどの。そして、フィルは本名だと言いましたね。もしかして、姉はいませんか?フランという名の」
「はっ?!なぜ…!マイク、お前は何者だ?何処の誰だ?!」
「元孤児なのは本当です。履歴書に書いた出身地には居たことはあります。生まれや育った場所は言えませんが、かつて“辺境伯の子供たち”と呼ばれた捜査網がこの国にあったのはご存知かと思います。その捜査網が張り巡らされていることは、冤罪や犯罪に対する抑止力のために先代の国王の時に公にされました。その後、その組織は表と裏に分けられました。僕はその裏の方の施設で育ちました」
マリさんが人数分(執事長のは無いけど)のお茶を持って戻ってきた。
バラバラに立っていた僕たちは真ん中の丸テーブルに座った。旦那様も。
「ここからは逆に意志確認させてください。これ以上のことを聞いたら逃げられません。今なら僕がこのまま消えて貴方たちと一生関わらないことで済ませられます。もちろん、フレッドの実家については影ながら情報提供します」
(フレッド、君に協力したい気持ちは本当だし、多分フレッドの実家問題と僕の事情は関係している。フィル先輩の過去も。どうする?)
「ズルいな、マイク。喋ってないから証拠にはならないって?ネルソン子爵家の領地に表の施設があったことは知っているんだね?」
「「「「「「フレッド?!」」」」」」
旦那様とフィル先輩とメリー…メイベルさんとメイド3人組の叫び声が重なった。
「うん、知ってる。君の祖父のマイラー・ネルソンの隠居先の領地でみんなは育ったんですよね。旦那様は違うけど。何かに利用しようとかで調べたんじゃないんです。きっかけはフィル先輩でした。僕は、十数年に亡くなられたこの国の王妃の筆頭侍女だったフランさんの写真を見たことがあったんです。フィル先輩は彼女ととても似ている。そこから調べ始めたんです」
「マイク」
旦那様の低い声が響いた。
「さっき意志確認したいと言ったが、もう抵触しているだろう。『王妃付き筆頭侍女フランの乱心事件』のことを“裏”で調べているってことだな?子爵家取り潰しに関して情報提供すると即答出来るということは2つの事件は関係しているってことか」
「違いましたが…そうなりそうです」
「もとより私たちは何からも逃げる気は無い。話してくれ、マイク」
1
あなたにおすすめの小説
竜帝に捨てられ病気で死んで転生したのに、生まれ変わっても竜帝に気に入られそうです
みゅー
恋愛
シーディは前世の記憶を持っていた。前世では奉公に出された家で竜帝に気に入られ寵姫となるが、竜帝は豪族と婚約すると噂され同時にシーディの部屋へ通うことが減っていった。そんな時に病気になり、シーディは後宮を出ると一人寂しく息を引き取った。
時は流れ、シーディはある村外れの貧しいながらも優しい両親の元に生まれ変わっていた。そんなある日村に竜帝が訪れ、竜帝に見つかるがシーディの生まれ変わりだと気づかれずにすむ。
数日後、運命の乙女を探すためにの同じ年、同じ日に生まれた数人の乙女たちが後宮に召集され、シーディも後宮に呼ばれてしまう。
自分が運命の乙女ではないとわかっているシーディは、とにかく何事もなく村へ帰ることだけを目標に過ごすが……。
はたして本当にシーディは運命の乙女ではないのか、今度の人生で幸せをつかむことができるのか。
短編:竜帝の花嫁 誰にも愛されずに死んだと思ってたのに、生まれ変わったら溺愛されてました
を長編にしたものです。
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる