上 下
7 / 31

庭師見習いは見た!フィル先輩は…!

しおりを挟む
「僕の自己紹介の前に少し質問してもいいですか?」

軽食を食べ終えた旦那様は、マリさんに皿を下げさせながら肯いた。

「フィル先輩、髪を染めてますよね。元は金髪ですか?」

明るめのブラウンの髪と瞳、スラリと伸びた肢体に整っているけど可愛げのある、伯爵家の使用人中No.1の人気を誇るフィル先輩は、その可愛げのある表情を消した。

「元貴族…ですよね。すみません、気持ち悪がらないでほしいんですが、落とした髪を調べました。染めていることには気付いていたので。綺麗な…綺麗すぎる金髪でした。市井にはいないほどの。そして、フィルは本名だと言いましたね。もしかして、姉はいませんか?フランという名の」

「はっ?!なぜ…!マイク、お前は何者だ?何処の誰だ?!」

「元孤児なのは本当です。履歴書に書いた出身地には居たことはあります。生まれや育った場所は言えませんが、かつて“辺境伯の子供たち”と呼ばれた捜査網がこの国にあったのはご存知かと思います。その捜査網が張り巡らされていることは、冤罪や犯罪に対する抑止力のために先代の国王の時に公にされました。その後、その組織は表と裏に分けられました。僕はその裏の方の施設で育ちました」

マリさんが人数分(執事長のは無いけど)のお茶を持って戻ってきた。
バラバラに立っていた僕たちは真ん中の丸テーブルに座った。旦那様も。

「ここからは逆に意志確認させてください。これ以上のことを聞いたら逃げられません。今なら僕がこのまま消えて貴方たちと一生関わらないことで済ませられます。もちろん、フレッドの実家については影ながら情報提供します」

(フレッド、君に協力したい気持ちは本当だし、多分フレッドの実家問題と僕の事情は関係している。フィル先輩の過去も。どうする?)

「ズルいな、マイク。喋ってないから証拠にはならないって?ネルソン子爵家の領地に表の施設があったことは知っているんだね?」

「「「「「「フレッド?!」」」」」」

旦那様とフィル先輩とメリー…メイベルさんとメイド3人組の叫び声が重なった。

「うん、知ってる。君の祖父のマイラー・ネルソンの隠居先の領地でみんなは育ったんですよね。旦那様は違うけど。何かに利用しようとかで調べたんじゃないんです。きっかけはフィル先輩でした。僕は、十数年に亡くなられたこの国の王妃の筆頭侍女だったフランさんの写真を見たことがあったんです。フィル先輩は彼女ととても似ている。そこから調べ始めたんです」

「マイク」

旦那様の低い声が響いた。

「さっき意志確認したいと言ったが、もう抵触しているだろう。『王妃付き筆頭侍女フランの乱心事件』のことを“裏”で調べているってことだな?子爵家取り潰しに関して情報提供すると即答出来るということは2つの事件は関係しているってことか」

「違いましたが…そうなりそうです」

「もとより私たちは何からも逃げる気は無い。話してくれ、マイク」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

悪役令嬢は勝利する!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:816pt お気に入り:154

婚約者が浮気相手を妊娠させました

恋愛 / 完結 24h.ポイント:816pt お気に入り:414

そのスペックでよく婚約破棄しようと思ったな

恋愛 / 完結 24h.ポイント:823pt お気に入り:4

婚約破棄されました。あとは知りません

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,792pt お気に入り:475

(完結)婚約解消は当然でした

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,117pt お気に入り:2,559

貴方達から離れたら思った以上に幸せです!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:196,784pt お気に入り:12,473

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7,671pt お気に入り:1,525

【完結】 嘘と後悔、そして愛

恋愛 / 完結 24h.ポイント:4,872pt お気に入り:321

運命の番を見つけることがわかっている婚約者に尽くした結果

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7,646pt お気に入り:301

処理中です...