庭師見習いは見た!お屋敷は今日も大変!

NO*NO(ののはな)

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庭師見習いは見た!僕の正体は…!

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「分かりました。僕の本名はマクロスです。そして年齢は本当は18です」

「………ちょっと待て…まさか……侍女フランに誘拐されて共に崖から落ちて死んだはずの第2王子…殿下なのか?」

旦那様は思い当たったことに驚愕して、目に見えて狼狽えていた。
ビクリ!と体を起こしたフィル先輩は目を見開いて唸った。

「!じゃあ!姉様は!もしかして生きて…?」

「……フランさんは第2王子を外の手に渡した後でダミーの布包みを抱えて崖から落ちて…亡くなったそうです。第2王子が亡くなったと思わせるために。そして第2王子は“裏”で育ち、名を変えて年齢を偽って世間に出てきました。でもそれは何かを為すためではなく、フラットな目で世の中を見るためでした。そのために中立的な立場を貫いている伯爵家に奉公に上がりました」

力が抜けて、両手で顔を覆って静かに泣くフィル先輩を見てから目線をカップに落とし、縁模様の蔓を見つめながら僕は続けた。

「どう生きるかは自分の目で見て決めなさいと、施設を出る時に言われました。この国の行く末を今の王家に託せると判断して市井に生きるも良し、“裏”に戻ってこの国に尽くすも良し、…に行くも良しだと」

フィル先輩が俯いたまま静かに問いかけてきた。

「なぜ姉は第2王子を…?」

「第2王子が暗殺されそうだったからです。高齢で第2王子をお産みになられた王妃は弱られていました。第2王子を逃がすのが精一杯だった王妃はその後すぐにお亡くなりになりました。死因は…衰弱死とされています。国王陛下が隣国との諍いから戻れずにいる間に。……筆頭侍女フランの王子誘拐の罪は親族にまで及んだと聞いています。逃げた弟君が逃亡先で焼死体で見付かったということも」

静まり返った中でメイベルさんがお茶を一口飲んでから話し始めた。

「私はネルソン子爵家の領地で隠居してた父親の世話をしていたんだけど、ある時傷だらけの行き倒れを拾ったんだ。うちの父はそういうの放っとけない人だから養生させたんだよ。それがフィルだよ。それだけだ」

「フィル先輩を突き出すつもりはありません。僕自身、この国が平和で何事も無いならこのままただの庭師見習いでいたいんです。でもこの国の平和は見せかけだけでした。妻と子をほぼ同時に喪った国王陛下は気鬱になり、王太子である第1王子も傀儡だというのは知らない者がいないほど有名です。暴君よりはマシだという説もありますが、一部の貴族だけが利を得ているのは歪みを生みます。ネルソン子爵はその歪みに巻き込まれたんです」

いつの間にか椅子の上で膝を抱えていたフレッドが目線を上げないまま呟いた。

「だからさっき、僕の実家問題とマイクの事情とフィル先輩が関係しているってんだね。生まれは言えないって言っていたけど…言ってるようなもんだよね。でもマクロス第2王子殿下として扱っちゃダメなんだね?マイク」

「うん。僕はただの庭師見習いのマイクだし、フィル先輩はただの庭師の先輩だね。今のところは。フランさんの冤罪を晴らしたい気持ちはあるけど、ネルソン子爵家の方が先かな。フレッドの父親を嵌めたやつらと第2王子を暗殺しようとしたやつらは同じか繋がっているから、そこを叩ければおのずと名誉は回復出来るはずだし」

「では、今後の話をしようか」

眠らされている執事長を確認してから旦那様は言った。

「メイが催眠術で聞き出したところでは、執事長はもともと中立的立場の貴族へのスパイとして伯爵家に入っていたようだ。フレッドの素性も知っていた。フレッドの兄2人は王都で平民の文官と騎士として職に就いているが、優秀だから下手に手が出せない。父の仇を取ろうとしているのかどうかも分からないのに突いたら薮蛇になりかねんからな。それで牽制するためにフレッドを陥れて駒にしようとしていたらしい」

「そうだったんですね…執事長が目覚めた時に親方たちが捕まっていたらフレッドが怪しまれませんか?」

僕はふと疑問に思って聞いた。
それには、フレッドがウンザリした顔で答えた。

「あの建物で捕まった男ってさ、男の子が好きなやつで、僕のことも狙ってたんだよ。だから襲われそうになった僕が逆襲して何とかして逃げ出して、すぐそこにいた警察隊の見廻りの人に捕縛してもらって、その捕まった仲間が親方たちのことを自白した、って流れで催眠術を掛けてもらう。庭師組と衛兵たちには箝口令が出ているし、詳しいことは知られていないから多分大丈夫」

「そ、そうか。大変だな。も聞こえてくるのか」

「まあね。敢えて利用することもあるけどね。それに聞こえてくる方が助かる。知っていることで対処も出来る。僕は非力だからね」

「と、いうことで、引き続き執事長は泳がせるし、フレッドを付ける。後は今まで通りで様子見だな」

旦那様の言葉でその場は散開した。

僕とフィル先輩は連れ立って持ち場へと戻った。

「マイク、夜に少し話したいから時間作ってくれ」

「…はい」


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