庭師見習いは見た!お屋敷は今日も大変!

NO*NO(ののはな)

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種明かしと本題

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「このお茶には何も入っていないから安心して飲んでいい」

オーガストはそう言って自分のカップからお茶を飲んだが、ハリソンは動かなかった。

「そう言われて飲む馬鹿などいない」

「それもそうか。上手いんだがな」

「そんなことより、オスカーはいつ別荘を出た?今朝か?」

「どうしようか。私だと脱線してばかりだし、オスカーが説明する?それともギルバード?」

呼ばれたギルバードも物置から出て、オスカーに並んだ。

「は?ギルバード?」

「そう。オスカーを運んだ御者はギルバードだったんだ。知らなかった?」

「知るか!なんてことだ…じゃあ最初から…」

「お前は分かりやすいんだよ。次はオスカーだろうと思って張ってたら来るし。オスカーがお前に呼び出された時点でもう動き出していたんだ。ちなみに呼び出さずに拉致していても結果は同じだったから悔しがらなくてもいい」

ここでギルバードが手を上げた。

「ここからは自分が。宰相閣下が自分と兄を別荘に置いて出ていかれた後で、留守番の従者の方が休みたいと言って眠ってしまったので、その間に兄は、兄と背格好の似た“裏”の者と代わりました。その際、従者の方に『お前は上の担当』と言われたので、じゃあ下があるのかと思って地下に行き、父も助け出しました。その後で父に似た“裏”の者にも来てもらいました。それから自分も交代して王都に戻りました」

「私からもいいですか?」

オスカーも手を上げた。
オーガストが頷くのを見て、オスカーは話し始めた。

「宰相閣下が各所で捏造を指示された証拠はもう全て撤廃されていますので、いくら査察が入っても何も出ません。今回の捏造で、それを行った宰相閣下の私設の組織の全貌も明らかになりますが、査察先を増やしておきましたのでそれ以外も釣れると思われます」

「それ以外…だと?」

オスカーの言葉にハリソンは戸惑いを隠せなかった。
オーガストは、ハリソンの目をまっすぐに見て、言った。

「お前の“辺境伯の子供たち”への復讐心は利用されている。お前たちは私腹を肥やしたか?証拠の捏造の裏で横領をしたか?」

「そんなことはしていない!私は“辺境伯の子供たち”など無用の長物だと思っている!撲滅することは正義だ!」

「ならば何故、税政の収支が合う?横領が為されていないなら、為されたと見なした分の金は何処に消えた?」

「は…?」

「お前の影で甘い汁を吸ってるやつがいるってことだ。それだけじゃない。お前は“辺境伯の子供たち”を潰してどうしたかったんだ?詰めの甘いお前のことだからただ潰したかったんだろうが、それでどうなる?誰が喜ぶ?国王陛下の力が弱まり王太子殿下への評価も高くない中で手足をもがれることになる国家を、手中に収めようとしている者がいる。そいつは18年前に第2王子を暗殺し、王妃オランディーヌを殺害した者だ」

「なんだと?!殺害?!王妃は、オランディーヌは病気で亡くなったはずだ!」

「18年前ではお前にはまだ足場も組織も無かったから疑ってはいないが、連綿と国家を操ろうと画策し続けているやつをあぶり出すためにお前を疑っている体で動いていた。
“辺境伯の子供たち”に恨みを持ってそれを潰そうとしている者が、その粛清の発端となった王家をも狙い王妃と第2王子を暗殺したと思っていると」

「そいつは誰だ?!」

「前回の粛清を免れた者だ。人の影に隠れて上手く立ち回り、長く潜むことにも好機を逃がさないことにもけた者。当たりは付いているが証拠が無い。だから国王陛下を弱らせて第1王子を操らせて、お前に好きなようにさせた。今そいつは、“辺境伯の子供たち”が潰されたと思っている。潰したお前を断罪することで一気に表に出てくるところを捕まえたい」

「囮になれっていうのか?断る!私が何をした?証拠など無いだろう」

「何の罪も犯していないと?」

「そうだ!」

「20数年前、隣国との諍いが激化した時に武功を上げたんだったな」

「…そうだ。何が言いたい?」

「その最中に女性を襲っているな?今面通しをしてもらったがお前だと言っている」

「なん…だと…?そんなのはその女の戯れ言だ!証拠は…!!」

東屋の物置から女性が2人出てきた。
ハリソンはその2人を見て、固まってしまった。
セドリックはその2人を見て、駈け寄った。

年配の方の女性が低い声で言った。

「証人は私で、証拠は娘だわ。たとえ立証出来なくても、あなたの築き上げた家庭は壊れるわね。腹立たしくて堪らないけど、この子は貴方に生き写しだもの」

「お前は…誰だ?お前など知らない!」

「それは無理があるだろう。なあ?セドリック」

オーガストは駈け寄ったセドリックを拘束して言った。

「ジャクリーン!そ、その娘はメイベルか?」

セドリックの言葉に女性2人は戸惑ったが、ハリソンは目を見開いて叫んだ。

「セドリックだ!その女を襲ったのは!食事処でもいつもその女を見ていた!」

「知らない女じゃなかったのか?それとセドリックはこの娘の父親ではありえない。そうだろう?」

オーガストの言葉に、セドリックは力無く答えた。

「…はい。私は子種が無いんです。そう診断されたのでずっと独り身でいます。……私も証人になります。ずっと、ずっと後悔していた。何が起きているのか分からなかったとはいえ、犯罪の片棒を担がされていたことを…。
ハリソン・ダール宰相閣下は戦時下の混乱の中で、許されない罪を犯しました」

自分の失言と、部下の裏切りとで崩れ落ちるハリソンに、オーガストは言った。

「お前が囮を引き受けないというのなら、この2人のことを奥方に知らせる。婿入り先と自分の身が大事ならおとなしく囮になっておけ」

「は…?自分の身?保障してくれるというのか?!」

「お前は詰めが甘いのが欠点だが、そのせいで最後まで成し遂げられない。マイラー・ネルソンにもノーマンにも冤罪を掛けられない内に取り逃がすし、今の捏造も事前に抹消されてるし。
這い上がってきたお前の努力は認めるし、宰相としての力量もある。ちゃんと彼女たちに償いをして、罪の意識を持ち続けて真っ当に生きていくなら保障する」

「……お前も…大概甘いな…」

「“辺境伯の子供たち”は秘密警察じゃない。冤罪を許さないだけだ。断罪するための組織じゃないんだ。しかも今、冤罪を掛けられようとしているのは忌々しいことにお前だ。全く割に合わない。だが、お前を助けることでレモネルとオランディーヌの悲願が叶う」

「悲願?」

「王子たちの未来だ」

「王子?」

「そうだ。第2王子は生きている」




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