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未来について考える
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オーガストが防音魔法を掛けている効果で、東屋の中の音は外には聞こえていなかった。
マイクの片耳は入り込んでいたから聞こえているけれど、聞きながらその内容をフレッドとフィル先輩に説明する余裕は無かった。
国王陛下レモネルと王妃オランディーヌの悲願。
僕の未来。
会ったことの無い家族。兄。
何もかもから離れて市井に生きる道はもう考えからは外していた。
“裏”として国家を支える方向に傾いていた気持ちが揺れるのを感じた。
第2王子。…僕が。
それは…どんな道だろう。
「マイク?どうした?セドリックが走っていったけど何が起きてるんだ?おい!ああもう!フレッドは何か分かるか?」
顔を強張らせて俯いたまま固まるマイクの肩を揺すりながら、フィルはフレッドに声をかけた。
「勢いがスゴくて、ホントに断片しか…リーン?あ、ジャクリーンさんか。え?セドリックさんはジャクリーンさんを知ってるの?もしかしてセドリックさんってメリーさんの父親…?」
「メルはそれは無いって言ってたけど…まさか?おい!マイク!」
「……あ、あ!はい!」
「どうなってる?!もしかしてメルの父親はセドリックなのか?!」
「いえ!そっちじゃなくて…」
「「え?まさか……さ…!」」
思わずマイクはフレッドとフィルの口を押さえた。
「オーガストが言っていた爆弾ってのがそのことだと思う」
声を潜めて早口で2人に伝えたマイクは、もう自分を取り戻していた。
(今は余計なことは考えない)、そう気持ちを切り替えたマイクは、今後のことをハリソンに説明するオーガストの声を必死に追いかけた。
~~~~~~~~
張り切って出て行ったなあ、宰相閣下は。
この調子でバリバリ“辺境伯の子供たち”とやらを潰してもらおう。
冤罪を許さないのが売りの組織が冤罪で摘発か。目も当てられないね。
真面目一辺倒で出世街道まっしぐらのハリソンが元グレイグ公爵令息だとは気付かなかった。
目を付けた時にはダール侯爵だったからね。
王家に忠誠を誓うその裏で、王家の懐刀である“辺境伯の子供たち”を撲滅するための私設組織を作る男。
理想的だね。
存在を知った時は興奮したなあ。
王家にも匹敵する歴史を持つ我が公爵家は、影になり日向になることなく目立たぬように追随してきた。
だからこそ粛清を免れた。
王の側近にという話もあったが、そんなものになったら身動きが取れない。
王宮深くにまで侍れ、かつ自由度の高い役職を転々としていた私は宰相補佐に収まった。
溢れそうな野心を隠せているつもりのハリソンが私を飛び越えて宰相になった時は、心からの祝福を送った。
ようこそ、私の隠れ蓑。
ハリソンのおかげでなかなか良い思いをしてきて満足してはいたが、馬鹿なハリソン、ハリソンに手も足も出ない名ばかりの“辺境伯の子供たち”、王妃を喪った気鬱から立ち直れない国王、頼りない王太子…彼らを見ていたら、無かったはずの私の野心が目を覚ましてしまった。
いい気になって“辺境伯の子供たち”を潰しまくっているハリソンを虚偽の断罪疑惑で告発して引き下ろし、私が宰相になる。
国王には王妃の後を追ってもらって、もう既に懐柔してある王太子を操って国政を恣にする。
ふふ、バラ色の未来だね。
トップに立つリスクはいらない。
名を残すことにロマンなど感じない。
全てが手の内にあると思える全能感があればいい。
マイクの片耳は入り込んでいたから聞こえているけれど、聞きながらその内容をフレッドとフィル先輩に説明する余裕は無かった。
国王陛下レモネルと王妃オランディーヌの悲願。
僕の未来。
会ったことの無い家族。兄。
何もかもから離れて市井に生きる道はもう考えからは外していた。
“裏”として国家を支える方向に傾いていた気持ちが揺れるのを感じた。
第2王子。…僕が。
それは…どんな道だろう。
「マイク?どうした?セドリックが走っていったけど何が起きてるんだ?おい!ああもう!フレッドは何か分かるか?」
顔を強張らせて俯いたまま固まるマイクの肩を揺すりながら、フィルはフレッドに声をかけた。
「勢いがスゴくて、ホントに断片しか…リーン?あ、ジャクリーンさんか。え?セドリックさんはジャクリーンさんを知ってるの?もしかしてセドリックさんってメリーさんの父親…?」
「メルはそれは無いって言ってたけど…まさか?おい!マイク!」
「……あ、あ!はい!」
「どうなってる?!もしかしてメルの父親はセドリックなのか?!」
「いえ!そっちじゃなくて…」
「「え?まさか……さ…!」」
思わずマイクはフレッドとフィルの口を押さえた。
「オーガストが言っていた爆弾ってのがそのことだと思う」
声を潜めて早口で2人に伝えたマイクは、もう自分を取り戻していた。
(今は余計なことは考えない)、そう気持ちを切り替えたマイクは、今後のことをハリソンに説明するオーガストの声を必死に追いかけた。
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張り切って出て行ったなあ、宰相閣下は。
この調子でバリバリ“辺境伯の子供たち”とやらを潰してもらおう。
冤罪を許さないのが売りの組織が冤罪で摘発か。目も当てられないね。
真面目一辺倒で出世街道まっしぐらのハリソンが元グレイグ公爵令息だとは気付かなかった。
目を付けた時にはダール侯爵だったからね。
王家に忠誠を誓うその裏で、王家の懐刀である“辺境伯の子供たち”を撲滅するための私設組織を作る男。
理想的だね。
存在を知った時は興奮したなあ。
王家にも匹敵する歴史を持つ我が公爵家は、影になり日向になることなく目立たぬように追随してきた。
だからこそ粛清を免れた。
王の側近にという話もあったが、そんなものになったら身動きが取れない。
王宮深くにまで侍れ、かつ自由度の高い役職を転々としていた私は宰相補佐に収まった。
溢れそうな野心を隠せているつもりのハリソンが私を飛び越えて宰相になった時は、心からの祝福を送った。
ようこそ、私の隠れ蓑。
ハリソンのおかげでなかなか良い思いをしてきて満足してはいたが、馬鹿なハリソン、ハリソンに手も足も出ない名ばかりの“辺境伯の子供たち”、王妃を喪った気鬱から立ち直れない国王、頼りない王太子…彼らを見ていたら、無かったはずの私の野心が目を覚ましてしまった。
いい気になって“辺境伯の子供たち”を潰しまくっているハリソンを虚偽の断罪疑惑で告発して引き下ろし、私が宰相になる。
国王には王妃の後を追ってもらって、もう既に懐柔してある王太子を操って国政を恣にする。
ふふ、バラ色の未来だね。
トップに立つリスクはいらない。
名を残すことにロマンなど感じない。
全てが手の内にあると思える全能感があればいい。
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