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番外編2“辺境伯の子供たち”の誕生
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「どうしてこんなことに…!」
どうにかこうにか隣国との停戦条約を結んで、急ぎ戻った私を待っていたのは義姉である王妃アウリーナの処刑だった。
歓喜を叫ぶ民衆の声に私の制止の声は掻き消され、王妃アウリーナは断頭台の露と消えた。
~~~~~~~~
「陛下!どういうことですか?!なぜ王妃殿下が?!」
「ファウステッド…戻ったのか。停戦条約は上手くいったようで良かった」
「そんなことより!」
「そんなこと…そう、そんなことのためにアウリーナは逝ってくれたのだ」
「……王妃殿下が隣国と密通していた容疑で処刑されたと聞きました。でもそんな事実も証拠も無い。戦乱が長引いたことの原因は妨害があったからです!」
「誰の妨害だ。証拠は?」
「………」
「長過ぎた戦争は貧困と疑心を招き、民衆の不満は限界まで来ていた。いつからか王妃が敵国と通じているという噂が流れ出し、あっという間に広がった。……私だってそんな噂を信じてはいない!だが!……アウリーナは自ら犠牲になったんだ……それで民衆の心が鎮まるならばと……」
「くっ……私が…停戦がもう少し早ければ…」
「それは…もう言っても……。
そうだ、英雄に褒美を与えねばならぬな。ファウステッド、何を望む?」
「……ならば、領地を。戦乱の舞台となったあの辺境地の全てを。そしてわたしに辺境伯の爵位を賜りたく存じます」
「………何をする気だ?」
「許さない。王妃殿下を…兄上を追い詰めた全てを」
「民に罪は無い。それほどまでに追い込まれていたのだ」
「ならば、民を追い込んだ罪までも償わせてみせます」
「私はお前まで失いたくはない」
「……王太子殿下たちをお守りください。では、これにて失礼を」
~~~~~~~~
辺境伯となった私は私財を投げ打って領地に孤児院や学校、病院を建てた。
戦争孤児たちを引き取り、領地に建てる施設の資金集めと称して貴族たちの屋敷を回った。
私には嘘を見分けられる能力があり(そのせいで2度の離縁を経て独り身でいるのだが)、怪しい貴族を見付けては、王家から借りた影からの教育を受けさせた孤児たちを使用人として潜ませた。
隣国の捕虜も、手厚く保護して懐柔してから国に戻し、有益な情報を送ってもらった。
隣国と我が辺境地には阻むものが無いから他に漏れる心配も無かった。
そう。
王妃と隣国の間には阻むものが溢れていたのに疑われたのは、印象操作があったからだった。
まだ隣国との関係が悪くなかった何代か前に、隣国の王女とこの国の王妃の祖先である貴族との間で婚姻が結ばれていた。
『王妃には隣国の血が流れている』
それは事実だが、密通の証拠では無い。
だが、煽りに煽られた民衆には王妃が隣国そのものに思えてしまう。
髪の色も隔世遺伝だったと思われるが、暗い髪色が多いこの国には珍しく、隣国によく見られる透き通るようなプラチナブロンドだったことで悪い方へと影響した。
裏切りの旗印にされた王妃の陰で、貯め込んでいた備蓄で暴利を貪り、留守居の貴族家を乗っ取り、戦争を長引かせることで兵器産業を潤し、民に還元すること無く私腹を肥やしていた貴族や商人たちを、私は摘発した。
中には本当に隣国と密通していた者さえ居た。
粛清の嵐が吹き荒れた後で初めて、私は秘かに弔われていた王妃の墓に参った。
その墓にはアウリーナの名では無く、好きだったダリアの花が刻まれていた。
この嵐に端を発した辺境伯の王国捜査網は後に“辺境伯の子供たち”と呼ばれるようになった。
どうにかこうにか隣国との停戦条約を結んで、急ぎ戻った私を待っていたのは義姉である王妃アウリーナの処刑だった。
歓喜を叫ぶ民衆の声に私の制止の声は掻き消され、王妃アウリーナは断頭台の露と消えた。
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「陛下!どういうことですか?!なぜ王妃殿下が?!」
「ファウステッド…戻ったのか。停戦条約は上手くいったようで良かった」
「そんなことより!」
「そんなこと…そう、そんなことのためにアウリーナは逝ってくれたのだ」
「……王妃殿下が隣国と密通していた容疑で処刑されたと聞きました。でもそんな事実も証拠も無い。戦乱が長引いたことの原因は妨害があったからです!」
「誰の妨害だ。証拠は?」
「………」
「長過ぎた戦争は貧困と疑心を招き、民衆の不満は限界まで来ていた。いつからか王妃が敵国と通じているという噂が流れ出し、あっという間に広がった。……私だってそんな噂を信じてはいない!だが!……アウリーナは自ら犠牲になったんだ……それで民衆の心が鎮まるならばと……」
「くっ……私が…停戦がもう少し早ければ…」
「それは…もう言っても……。
そうだ、英雄に褒美を与えねばならぬな。ファウステッド、何を望む?」
「……ならば、領地を。戦乱の舞台となったあの辺境地の全てを。そしてわたしに辺境伯の爵位を賜りたく存じます」
「………何をする気だ?」
「許さない。王妃殿下を…兄上を追い詰めた全てを」
「民に罪は無い。それほどまでに追い込まれていたのだ」
「ならば、民を追い込んだ罪までも償わせてみせます」
「私はお前まで失いたくはない」
「……王太子殿下たちをお守りください。では、これにて失礼を」
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辺境伯となった私は私財を投げ打って領地に孤児院や学校、病院を建てた。
戦争孤児たちを引き取り、領地に建てる施設の資金集めと称して貴族たちの屋敷を回った。
私には嘘を見分けられる能力があり(そのせいで2度の離縁を経て独り身でいるのだが)、怪しい貴族を見付けては、王家から借りた影からの教育を受けさせた孤児たちを使用人として潜ませた。
隣国の捕虜も、手厚く保護して懐柔してから国に戻し、有益な情報を送ってもらった。
隣国と我が辺境地には阻むものが無いから他に漏れる心配も無かった。
そう。
王妃と隣国の間には阻むものが溢れていたのに疑われたのは、印象操作があったからだった。
まだ隣国との関係が悪くなかった何代か前に、隣国の王女とこの国の王妃の祖先である貴族との間で婚姻が結ばれていた。
『王妃には隣国の血が流れている』
それは事実だが、密通の証拠では無い。
だが、煽りに煽られた民衆には王妃が隣国そのものに思えてしまう。
髪の色も隔世遺伝だったと思われるが、暗い髪色が多いこの国には珍しく、隣国によく見られる透き通るようなプラチナブロンドだったことで悪い方へと影響した。
裏切りの旗印にされた王妃の陰で、貯め込んでいた備蓄で暴利を貪り、留守居の貴族家を乗っ取り、戦争を長引かせることで兵器産業を潤し、民に還元すること無く私腹を肥やしていた貴族や商人たちを、私は摘発した。
中には本当に隣国と密通していた者さえ居た。
粛清の嵐が吹き荒れた後で初めて、私は秘かに弔われていた王妃の墓に参った。
その墓にはアウリーナの名では無く、好きだったダリアの花が刻まれていた。
この嵐に端を発した辺境伯の王国捜査網は後に“辺境伯の子供たち”と呼ばれるようになった。
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