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14話
しおりを挟むレヴィアが住んでいる家は、王宮から少し離れたところにある森の中にあった。木造建築の落ち着いた家の雰囲気と森の自然と約1ヶ月間触れ合っていくうちに自ずと体調は良くなり、精神状態も安定していった。もちろん、あの家の人達を憎んでいないといえば嘘になる。今だってお兄様との出来事を思い出すだけで怖いし、継母がお母さんに何かしたことを忘れたわけでもない。でも、とりあえず今は2人と落ち着いて楽しく過ごせるこの時間を大切にしようと思った。
日が昇っているうちは、学校に行って、日が沈むとレヴィアとニックの3人で暖炉の火を囲んで談笑する。何気無いこの日常が幸せだ。休日は3人で狩りをしたり、湖の中で水飛沫を掛け合ったりもした。生活をし始めた頃は、仲があまり良くなかったニックとレヴィアも暫くすると、ふざけ合えるような仲になったらしい。よくじゃれ合っている姿を見掛ける。ニックと私は主従関係が出来てしまっていて、気軽に話しかけてはくれないから、リリィは少し寂しかったけれど、私たちの間には確かな信頼関係が存在した。ニックは私のことを友達として見てはくれないけれど、私は彼を大切な友達だと思っている。
笑い合えて、楽しい仲だけが、友達ではない。何も話さなくたって、ただ一緒にいるだけで落ち着くそんな友人も素敵だと思うんだ。
ある日のこと、レヴィアは森に狩りに行き私とニックが家事をしていた時のことだった。
「リリィ様はレヴィア様に惚れてますよね?」
突然ニックがそんなことを言ってきたのだ。
「ちょっと!いきなり何を言うのよ!」
まさかニックがそんなことを言うなんて思わず、もっていたお水を零しそうになってしまった。
「図星ですね」
「そ、そんなことないわよ」
「分かりますよ。私が1番近くでずっとリリィ様のこと見てきたので」
相変わらずの無表情でリリィは彼の考えが読めなかった。
「本人には内緒にしてね」
「もちろんです。ちょっとした好奇心で聞いてみたので、気になさらないで下さい」
「大丈夫よ。気にしてないわ」
私たちは話を終えるとそれぞれが家事の役割をこなし始めた。
私がレヴィアを好きになったのはいつからなんだろう。正確な時期は分からない。気がついた時には、彼の顔を見るだけで胸がときめくし、どうしようもなくずっと傍に居たいと思ってしまったんだ。
でもきっと彼は、私に責任を感じて優しくしてくれているだけなのだろう。彼からも愛されたい。相手に求めすぎてしまうのはいけないことで、ただ自分が辛くなるだけなのに。だから、私はこの思いを隠していた。彼にバレてこの思いさえも拒絶されたくなかったから。
その時、ちょうどレヴィアが家に帰ってきた。手には手紙をもっているようだった。
「学校から卒業パーティの招待状が届いてたけど行くだろ?」
「ええ、行くわ」
「封印はどうする?もうそろそろ解いてもいい頃だと思うが」
私は首に掛かってるペンダントを見つめる。
「覚悟はできてる」
「そうか」
レヴィアはリリィをベッドに寝かせると、リリィの手から数滴の血をとって、ペンダントの上に垂らした。レヴィアはその上から呪文を唱えている。まるで雷が地に落ちたような音が部屋中ち響き、同時にそこに封印されていた魔力や記憶が激しい頭痛と共にリリィを襲う。
私はは思い出した。
母は全滅してしまったエルフ族の姫であり、私は血が混ざってしまったもののエルフの血を受継ぐ最後の存在。
継母は父が母にばかり夢中になったことで、異常なまでの嫉妬心を抱いていたこと。そして、それが契機となり母を殺害。父に闇魔術である洗脳の魔法、私に封印の術をかけ、これまでの事実を隠蔽した。
リリィは全部を思い出し、今すぐにでも家へ帰りたい気持ちでいっぱいだったが、魔力がいきなり流れ込んだことで気絶するように眠り込んだ。
あの夢は本当だったんだ。
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