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転生 始まりの街

依頼達成、報酬

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南の森へと足を踏み入れ山道に従い山の中を進んでいく。街の外という事でたまにゴブリンやオオカミ種の魔物に狙われながらも進んでいく。

「ネェージュそっちに1匹向かったからお願いー!水の刃!」

水の勢いの増したカーブ状になった攻撃が狼達の首をかすめて血飛沫を上げて倒れて行く。血の香りに寄せられて次々と湧き出てくるが魔法と短剣で次々倒して行く。

後ろから1匹の狼が飛びかかる。
マリは既に気配察知で後ろにいる事はわかっていた。だから振り向き勢いのまま短剣の刃を急所に差し込んだ。

最初の頃は魔法頼りの戦い方をしたが物理攻撃も併用した方が、疲れにくく早く終わると学んだ。

「ホォー!ホォー!」

あらかた片付き、荒い息を切らしているとネェージュの方も終わったのか脚で狩った魔物を掴んで低飛行でやってきた。
それを素早くアイテムスペースに入れ、他に魔物やら動物が来ない間に駆け抜ける。

駆け上がった先に湖があった
この湖が今回の依頼の素材が生息していて質もいい場所とされている。

辺りはミミントの香りやカモミールなどの懐かしい香りが彼女の鼻口をくすぐり、血の匂いになれてしまった鼻をリセットしてくれる。

新規冒険者登録者が少ない為か素材集め系の依頼はかなり溜まっているという。
ランクが上がってくるとやる人も少なくなる。
手に取ったのは三つの依頼で全てここの湖で取れるものにした。ボードに出ていないもので依頼があるならそれを達成するのもいいだろう。

虫食いや偏食などがない綺麗な状態なハッカ草ミミント草、イーチゴを出来るだけ多く積み余ったのは普通に売れる為に積んでいく。依頼以外のものは通に市場などで流れる。こういったものは家庭でも使われるため高値で取引されるという。

「ホホォー」

ネェージュとはいうと、ミミズや虫などを突いている。嫌悪感を抱くわけではないが見ていてあまり気分のいいものではないので背を向けている。たまに水やアイテムスペースに元から入っていた干した果物などをつまみつつ黙々と採取をしてたまにネェージュの相手をしつついいものと悪いもので分けて行く。

依頼分を合わせた三つの種類を10本束が6束作ったところでマリは立ち上がり、木影に身を寄せた。
魔物が来ないように結界を張っている為襲撃される心配がない為、干した果物を口にしていたとはいえ、お昼がまだなので食事をすることにした。

ネェージュは巨大化のスキルで大型犬ぐらいの大きさになるとマリの体を支えるように横になった。ふわふわの手触りのいい羽根に包まれマリは笑みを浮かべて体を預け深呼吸をしてから羽根に顔を埋める。

「あーネェージュふわふわーソルちゃんに感謝だよー」

「ホォー」

他個体のホワーフォオウルに巨大化スキルがあるかはわからないがネェージュに巨大化のスキルがあることがマリにとっての癒しになっていた。
動いた後やお昼寝の時のひと時にこうして癒してくれるネェージュ。
満足するまでネェージュを楽しんだ後は腰に刺さった鶏肉を頬張り、レーモの果実水で口の中をさっぱりさせ一息つく。

休憩とお腹を満たし、お金を稼ぐために他の野草を採取に取り掛かる。稼ぐために動いてる時はできるだけ稼ぐと決めて休む時は休む。それがマリの理想だ。毎日お金稼ぎに費やすのはごめんだ。

鑑定スキルとネェージュの知識を頼りにレーモの実やラベンダーやカモミール、バジルによく似た香りのバージル草を先ほどと同じように積んでいく。

日も傾きかけた頃に結界を解き街へ戻るために下山する。途中行きと同じように狩りをしながらソグムの街へと戻って行く。

「氷の矢!はっ!」

途中短剣を水魔法で纏わりついて乾燥したものを洗い流しながら今日の稼ぎを増やして行く。

ソグムの街の南の門に着くと少し行列ができていてもう慣れてきたものだがネェージュに視線が行き、マリも見られるのでフードを深くまで被り俯き加減で並んだ。
我関せずとネェージュハマりの頬をつついたり髪の毛を加えたりと遊んでいた。

マリの順番になりフードを取り門番を見るとエインスワーズとモーガンが立っていた。
朝は詰所で怯えていた騎士が恐々とした顔で見送ってくれたのを覚えている。どうやら交代したようだ。

「おかえりさなさい、マリさん」

「怪我ねぇーか?」

「ただいま戻りました。怪我してないですよ」

二人はマリの言葉に頷くと丁度交代に来た騎士と変わった。マリの後ろにいた入門待ちの人から彼らが担当するらしい。

マリは手招きされると二人の後を追うように歩く。

「あっそだマリさんギルドカードの提示頼む」

思い出したように言うモーガンにアイテムカバンから取り出し見せた。

「うん、入ってよし!」

「すでにはいってますー」

門を潜ってしまってからのギルドカード提示では何も意味ないだろうと少し下を出したマリにくすくすと笑う騎士二人。

「何の依頼受けたんだ?」

「採取系の依頼三つを受けました」

「新人冒険者らしいものを選びましたね」

「新人ですー」

いじけたようなマリの声に顔を見合わせてまたくすくすと笑う。

「Cランクパーティ鷹の爪を氷漬けにしたやつが言う言葉かよ」

「まあ、殴りかかってきた男は一番ランク的にも低いんですがね。それなりの強さはある人物ですよマリさん」

「私の戦法は魔法で足止めで短剣で切り付けたり魔法で倒したりするんです。いつも通りにやっただけですよー」

やれやれと言った感じに首をすくめたモーガンはため息をつき。エインスワーズは苦笑いをこぼす。

「それでも一瞬で凍らすとか普通できないからな」

「どうせ私は化け物ですよー」

昨日の出来事を茶化されてさらに拗ねたマリはお返しとばかりに痛いところを突くように騎士団で起きたことを混ぜた。

エインズワーズはドコッとモーガンにゲンコツを落とす。

「いって!」

「貴方はデリカシーを覚えなさい。すみませんマリさん」

「いえいえ、氷漬けにしたのも魔力が魔物級にあるのは事実なので別にいいでーす」

笑って見せたまりにホッとした顔を見せた。

「じやあ、私たちはこれで」

「俺はこれで終わりだからまた宿でなー」

コクリと頷いたマリは騎士二人とはギルド前で別れると、ギルドに入って行く。

朝よりは人は少ないがヒソヒソとマリを見て話す冒険者達にフードを被りそそくさとまだ勤務中ソニアの元へ依頼達成と売却のため足を動かした。

「依頼終わりました。それと採取したものの依頼があれば受けたいです」

「かしこまりました。採取したものをカウンターへ置いていただけますか?」

採取した6種類をカウンターの上へ取り出すと一つ一つ見て行く。
満足したように一つ頷く。

「はい、質も状態もいいですしハッカ草10個 ミミント草15個、イーチゴの実22達成です。合計依頼金額に質が良い場合の上乗せ金額を合わせて銀貨5枚と銅貨16枚です」

ソニアから受け取ると素材の依頼書が2枚渡された。

「レーモの実20個で銀貨2枚とラベンダー35個で銀貨4枚。……あの、これ金額高くないですか?」

こう言った採取系の依頼場は銅貨2枚から5枚で効率良く稼げる仕事ではないが、この2枚は他の依頼書より多くの金額が設定されており、信心冒険者から見れば破格の値段だ。

「そうなの、どうしても質も良く綺麗な状態で欲しいからとこの値段にして依頼されているんだけど。冒険者って結構ガサツな人が多くて依頼が達成されなくてほぼお蔵入り化してた依頼なの、そのせいもあって依頼書より高く設定されてまして。表には出していないものですから不思議ではないので気にしないでください」

通貨を積み上げながら答えていくソニア。
顔が引き攣るマリ。
トレーに置かれた金額に目がいく冒険者。

「金貨5枚銀貨45枚銅貨24枚」

「待って待ってソニアさん。流石に多いですー!」

採取系ではあり得ないというよりふざけている金額に両手を突き出して待ったをかけるマリにソニアは苦笑いをし、マリが手に持っていた麻袋に問答無用で入れてしまう。

見かねた他のギルド職員が口を開く。

「君が不正したわけでも巻き上げたわけでもない。正当なギルドのルールと依頼主が提示してる金額だから素直に受け止めるべきだ。それに君は仕事は丁寧だ。もらう権利はきちんとあるから受け取りなさい」

そう言われてマリも素直に頷いた。枯れたものや萎れかけているもの入れたつもりはないので、素直に受け取ることにしたマリにソニアはクスリと笑い麻袋を渡す。

「摘めばいいと思って枯れたものや虫食いなんてものを積んできて依頼達成できなくて魔物狩りにばっか集中するから値段が高いんです。あまり気にしないで。先輩冒険者達のツケです。尻拭いお願いします」

ギルドにいた全員マリの先輩に当たる。全員がそうとは言わないが基本ガサツでこう言った依頼はあまり達成されず、溜まって行く。

マリは当面は採取だけで何とかなりそうだと内心笑う。ついでに魔物を狩れば問題ないのだから。

「他のものは相場の値段で合計銀貨3枚と6枚での買取となります。他に何かございますか?」

「倒した魔物などの解体と買取をお願いします」

「はい、かしこまりました。移動いたしましょう」

ソニアに連れられそうこのような少しひんやりする場所に連れてこられカウンターがある場所の奥ではガタイのいい男達がナタのような鋭いものを力強く振り下ろしていた。

「こちらで出してください。アイテムスペースを使っても平気ですよ」

後の方は小声で言われて隠さずにアイテムスペースから直接取り出すと出てくる数に驚きながらも状態を別の職員と見て行く。

「ゴブリン4体にレッドヘアーモンキー6体、シルバーウルフ!?えっと……7体」

「君が倒したのかい?」

恐る恐ると言った感じに名前を知らない職員に聞かれた。マリとネェージュで倒したので頷いた。

「これは……」

「コホンッ状態もいいですし確実に最小限で倒されているため傷もあまりないので、金貨4枚銀貨57枚です」

色々と考え始めた職員をよそにソニアはテキパキと仕事を進めてマリに麻袋に入れたものを渡して一緒にギルド内へと戻るとそのまままりは宿へと帰る。

「結構稼げたなー。しばらくは今日みたいで良さげだしすぐに武器買えそう」

モーガンにでも武器の相場など聞こう。

「あとはいくら盗まれないとはいえ大金を持ち歩くのはなー」

「ホォ!!」

いい方法あるよというように鳴くネェージュに視線を向ける。

「なるほど金融ギルドか」

ネェージュに銀行のような役割がある商業系ギルドを教えてもらう。
ずっしりとした麻袋の感覚を思い出し、ふわっと計画を立てて、前を見ていなかったまりはドンっとぶつかってしまい反動で後ろに倒れそうになる。

パシリっと手首を掴まれて体制を腰に回った腕がマリがきちんと立つまで支えられる。

「大丈夫か?」

「はい、すみません。考え事していて」

ぶつかった相手はフードをかぶっていてぶつかった拍子にずれたのだろうほとんど被っていない状態で白い肌に顎のラインで切り揃えられたネイビーブルーの髪に金色に近い瞳の耳の尖った男性だった。

「いや、俺が飛び出したからだ。すまない……じゃっ」

謝罪もそこそこに周りを気にしながら慌てた様子で走って行く。その姿に首を傾げながら宿へと戻る。
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