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王都
朦朧とした意識
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もう何度も体験した熱が体をぐるぐると暴れ回る感覚。
熱い息を吐き、胸が苦しく掻きむしるように胸元を触ろうと無意識に動かせば掬い取る動作で手を握られ、スルリとそのひんやりとした手が離れゴツゴツとしたものを握らされた。
ぐずるように手の中の物を捨てようとすると手の上からまたひんやりとした大きな手が握られる。
「いい子だから握ってろ、すぐ楽になる」
聞き慣れてきたユリウスの声がする。
「癒しの粒子、光となり彼女に安らぎを」
じんわりと心地よいお湯のようなものが体を撫でるように通り過ぎ、体の熱が抜けていく。
「……んん」
まだ重い瞼をゆっくりあげれば、暗闇の中、目の前にユリウスの顔があった。
「ああ、起きた…水飲むか?」
病人用の水差しを持ちマリを見る。ゆっくりと上下した様子に小さく頷くと、首の後ろと背中を支えるように腕を差し込み起き上がらせた。
「だいぶ熱は下がったな」
コクコクと少しずつ水を飲むマリから伝わる体温を感じ、安堵した声が溢れる。
「ホォー…ホォー…」
ネェージュの心配そうなか細い鳴き声にそろりとマリの目線がネェージュを探しバサバサと音を立てて顔の横に降り立つ。
「お前の主人は強いが魔力の多さによる弊害なのか、うまく魔力を扱えないのか、よく熱を出すな」
力のないマリの細い指が、ネェージュの目元近くをゆっくり撫でる。 次第にマリの瞼が重いのか、開いたり開いたりを繰り返す。
「自己回復力が高くなかったら死んでてもおかしくはない」
意識があるのかないのかわからないマリの体がピクリと動く。
「女神のおかげで危険はないから安心していいが、周りからしたら居ても立っても居られない……」
「ホォー……」
栄養があるエイコーンという実。赤い実を指で摘んだユリウスは腕でマリを支えつつ両手で二つに千切ると果汁が多いのか、一滴垂れるが掛け布団の上に落ちる前にユリウスの手のひらが受け止めた。
ツンツンと実を摘んでいない薬指がまりのカサついた唇を突くと薄らと隙間ができる。
そこにねじ込むように口の中に入れ、ムニムニと頬を片手摘み刺激を与えればムニュムニュと口が動き咀嚼し飲み込んだ。
そして、それを何回か繰り返し、最後に水をもう一回飲ませて横に寝かせてズレた布団を直し、手についたベタつきを濡れたタオルで拭くと口元を拭いてやる。
「あと、二、三日で完全に意識は戻るし体の不調も魔力も治るだろ……」
少し呆れた顔でマリの寝顔を見ながらポツリとそう呟き、看病用に用意された椅子に無造作にかけられた上着を羽織り口元を布が覆う。
「俺は仕事に行く。何かあれば来い」
心得たとばかりに小さく鳴いたネェージュを一度撫でると音もなく窓から姿を消した。
熱い息を吐き、胸が苦しく掻きむしるように胸元を触ろうと無意識に動かせば掬い取る動作で手を握られ、スルリとそのひんやりとした手が離れゴツゴツとしたものを握らされた。
ぐずるように手の中の物を捨てようとすると手の上からまたひんやりとした大きな手が握られる。
「いい子だから握ってろ、すぐ楽になる」
聞き慣れてきたユリウスの声がする。
「癒しの粒子、光となり彼女に安らぎを」
じんわりと心地よいお湯のようなものが体を撫でるように通り過ぎ、体の熱が抜けていく。
「……んん」
まだ重い瞼をゆっくりあげれば、暗闇の中、目の前にユリウスの顔があった。
「ああ、起きた…水飲むか?」
病人用の水差しを持ちマリを見る。ゆっくりと上下した様子に小さく頷くと、首の後ろと背中を支えるように腕を差し込み起き上がらせた。
「だいぶ熱は下がったな」
コクコクと少しずつ水を飲むマリから伝わる体温を感じ、安堵した声が溢れる。
「ホォー…ホォー…」
ネェージュの心配そうなか細い鳴き声にそろりとマリの目線がネェージュを探しバサバサと音を立てて顔の横に降り立つ。
「お前の主人は強いが魔力の多さによる弊害なのか、うまく魔力を扱えないのか、よく熱を出すな」
力のないマリの細い指が、ネェージュの目元近くをゆっくり撫でる。 次第にマリの瞼が重いのか、開いたり開いたりを繰り返す。
「自己回復力が高くなかったら死んでてもおかしくはない」
意識があるのかないのかわからないマリの体がピクリと動く。
「女神のおかげで危険はないから安心していいが、周りからしたら居ても立っても居られない……」
「ホォー……」
栄養があるエイコーンという実。赤い実を指で摘んだユリウスは腕でマリを支えつつ両手で二つに千切ると果汁が多いのか、一滴垂れるが掛け布団の上に落ちる前にユリウスの手のひらが受け止めた。
ツンツンと実を摘んでいない薬指がまりのカサついた唇を突くと薄らと隙間ができる。
そこにねじ込むように口の中に入れ、ムニムニと頬を片手摘み刺激を与えればムニュムニュと口が動き咀嚼し飲み込んだ。
そして、それを何回か繰り返し、最後に水をもう一回飲ませて横に寝かせてズレた布団を直し、手についたベタつきを濡れたタオルで拭くと口元を拭いてやる。
「あと、二、三日で完全に意識は戻るし体の不調も魔力も治るだろ……」
少し呆れた顔でマリの寝顔を見ながらポツリとそう呟き、看病用に用意された椅子に無造作にかけられた上着を羽織り口元を布が覆う。
「俺は仕事に行く。何かあれば来い」
心得たとばかりに小さく鳴いたネェージュを一度撫でると音もなく窓から姿を消した。
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