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第九話
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工房街近くの公園で遊ぶヘンリーとエマ、そして双子たち。誰がどう見ても、職人の子供同士のカップルだ。ヘンリーは護衛もお付きの者もつけず、こうして工房街によく来ているのだろう。
公園内に足を踏み入れたヴィンスは、至って自然に彼らに声をかけた。
「おや、ヘンリー殿ではないですか。こんなところでお会いするなんて。こちらのお嬢さんは……ワトソン子爵の娘さん、ではなさそうですね?」
「ダグラスさん⁈こちらで何を……え、ええ、彼女はジェニー嬢ではありません。アカデミーの同級生のエマです」
バツが悪そうにヘンリーが答えた。
「初めまして!私、エマです。そこの工房街の靴職人の家の娘ですよ!」
快活に自己紹介をしたエマの隣で、ヘンリーはますますバツが悪そうだ。
「これはこれはエマさん、お会いできてうれしいです。私は隣国からこちらに旅行に来ております、スコット・ダグラスと申します。カーディナル伯爵と仕事のお付き合いのある縁で、ヘンリー殿のご自宅にしばし滞在させていただいております」
ヴィンスは、変装姿の偽名を使い、エマに挨拶をした。
「おじさん、外国から来たのー?」
「変なお洋服だねー」
双子たちがヴィンスに寄ってきてそう言うと、さすがのエマも、
「こら!お行儀悪いわよ!ちゃんとご挨拶しなさい!」
と嗜めた。
「僕はトム、こっちは双子のリタだよ!」
「こんにちわ、おじさん」
ヘンリーの知るちゃんとした挨拶とは程遠いだろうが、双子は可愛らしく挨拶をした。
「トムとリタか、初めまして。そうだよ、おじさんは外国から来たんだ。この服は、おじさんがいた国の伝統衣装だよ」
ヴィンスは広がった形の袖口の端を掬い上げ、緻密な刺繍を見せた……とは言っても、この衣装はエルサの魔道具の力でできている偽物に過ぎないが。
「ダグラスさんは工房街の視察ですか?」
依然としてバツの悪そうな顔のヘンリーが聞いた。
「ええ。工房街には腕利の職人さんが集まっていると聞き、いろいろ見学させてもらいました。実りのある視察でしたよ。最後にこうしてヘンリー殿とエマさんにもお会いできて」
ヴィンスは意味ありげにニッコリと笑い、
「では、また夕食時にお屋敷で」
と告げ、公園から出ていった。
「何だかつかみどころのない不思議な人ね、ダグラスさんって。外国の方だからかしら?」
エマの呑気な感想を聞き、今、この状況で父の大事な客人に出会してしまった、という事の重大さを全くわかっていないな、とヘンリーは思った。
公園内に足を踏み入れたヴィンスは、至って自然に彼らに声をかけた。
「おや、ヘンリー殿ではないですか。こんなところでお会いするなんて。こちらのお嬢さんは……ワトソン子爵の娘さん、ではなさそうですね?」
「ダグラスさん⁈こちらで何を……え、ええ、彼女はジェニー嬢ではありません。アカデミーの同級生のエマです」
バツが悪そうにヘンリーが答えた。
「初めまして!私、エマです。そこの工房街の靴職人の家の娘ですよ!」
快活に自己紹介をしたエマの隣で、ヘンリーはますますバツが悪そうだ。
「これはこれはエマさん、お会いできてうれしいです。私は隣国からこちらに旅行に来ております、スコット・ダグラスと申します。カーディナル伯爵と仕事のお付き合いのある縁で、ヘンリー殿のご自宅にしばし滞在させていただいております」
ヴィンスは、変装姿の偽名を使い、エマに挨拶をした。
「おじさん、外国から来たのー?」
「変なお洋服だねー」
双子たちがヴィンスに寄ってきてそう言うと、さすがのエマも、
「こら!お行儀悪いわよ!ちゃんとご挨拶しなさい!」
と嗜めた。
「僕はトム、こっちは双子のリタだよ!」
「こんにちわ、おじさん」
ヘンリーの知るちゃんとした挨拶とは程遠いだろうが、双子は可愛らしく挨拶をした。
「トムとリタか、初めまして。そうだよ、おじさんは外国から来たんだ。この服は、おじさんがいた国の伝統衣装だよ」
ヴィンスは広がった形の袖口の端を掬い上げ、緻密な刺繍を見せた……とは言っても、この衣装はエルサの魔道具の力でできている偽物に過ぎないが。
「ダグラスさんは工房街の視察ですか?」
依然としてバツの悪そうな顔のヘンリーが聞いた。
「ええ。工房街には腕利の職人さんが集まっていると聞き、いろいろ見学させてもらいました。実りのある視察でしたよ。最後にこうしてヘンリー殿とエマさんにもお会いできて」
ヴィンスは意味ありげにニッコリと笑い、
「では、また夕食時にお屋敷で」
と告げ、公園から出ていった。
「何だかつかみどころのない不思議な人ね、ダグラスさんって。外国の方だからかしら?」
エマの呑気な感想を聞き、今、この状況で父の大事な客人に出会してしまった、という事の重大さを全くわかっていないな、とヘンリーは思った。
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