戦争から帰ってきたら、俺の婚約者が別の奴と結婚するってよ。

隣のカキ

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最終章 幸せな日々

番外編 第11話 ペットと英勇

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「エイミー。相談とはなんだ?」

「もしかしてサクラの結婚に関してかな?」


 レイベルトと碧ちゃんには相談があると言って、会議室に集まってもらった。


「実はね、ペットを飼い始めたの。」


 メメちゃんは大丈夫だって言ってたけど、本当に大丈夫なのかしら?


「良いんじゃないか? 最近厨房から魚を持って行っているとは聞いていたが、そういう事だったか。」

「私もそれは聞いてた。エイミーは猫でも飼い始めたの?」


 猫?

 うん。メメちゃんは可愛いしお利口さんだから猫みたいなものかも。


「似たような感じかな。凄くお利口さんで、もしかしたらレイベルトより賢いかもしれないわ。」

「あはははは! レイベルト、ペットにも負けてるじゃん。」

「おいおい。いくらなんでも酷いだろう。剣ばかり振っているように見えるかもしれんが、流石にペットよりは賢いぞ?」

「ちなみにサクラやアーリィも認めてくれてて、特にアーリィが可愛がってくれるのよ?」


 アーリィはメメちゃんを気に入ったらしく、良く話しかけたり撫でたりしている。


「アーリィは動物が好きだからね。」

「ところで、どんな猫なんだ?」


 きた。

 いよいよね。

 私は後ろ手に隠していたメメちゃんを正面に持って二人に見せる。


「この子なの。メメちゃんって言うのよ?」


 十個もついている目がギョロギョロと動いている。

 メメちゃんを見せた後の反応は劇的だった。


「エイミー! そいつから離れろ!」
「新たな怪物!? 危険だから今すぐ捨てて!」


 二人は臨戦態勢に入った。

 レイベルトは剣を抜き、碧ちゃんは魔法を放つ準備をしている。


「待って。メメちゃんは良い子なの。」

「そんなわけないじゃん! ずっと前に倒した怪物と同系統の見た目だよ!」

「そうだぞエイミー! 何を考えているんだ!」


 やっぱり二人の説得は難しいのかしら。

 でもこのままだとメメちゃんが…………。


『二人とも落ち着くと良い。』

「「喋った!?」」

『うむ。我はエイミー殿に飼育される事になった異界の神だ。よろしく頼む。』


 しっかり挨拶が出来て偉いわ。


「異界の神だと!? やはり以前現れた怪物の仲間か!!」

「早く討伐しないと!」


 討伐は困るわ。

 どうしてもダメなら、私がメメちゃんを守らないと。


『我は挨拶したのに二人は挨拶を返してくれないのか。英雄や勇者だというのに嘆かわしい。』

「戯言を言うな!」

「誰が怪物に挨拶なんてするもんか!」


 二人は今にも攻撃しそうな雰囲気を漂わせている。


『何故我に敵意剝き出しなのだ? 我が二人に何かしたか?』


 うん。メメちゃんは本当に何もしてないわ。


「そ、それは……。」

「何も……してないな。」


 メメちゃん凄いわ。

 もう二人のペースを崩し始めた。


『だろう? 初対面の相手に敵意剝き出しなのは失礼だぞ。』

「……すまん。俺はレイベルトだ。失礼な態度を取ってしまった。」

『うむ。我も突然お邪魔してしまった。』


 レイベルトはとりあえず聞く気になってくれたみたい。


「待って! レイベルト騙されないで!」

『騙すとはなんだ? 何故騙す必要があるのだ。』

「理由は分からない。でも、そんな邪悪な顔で言っても説得力なんてないよ!」

『なんと……。顔が気に入らないからと言って、我を悪だと決めつけているのか?』

「え? あ、ちが……」
『姿が醜いという理由で相手を虐げるのか…………。勇者とはなんと恐ろしい存在なのだ。』

「そ、そんな事は……」
『醜い顔をしていてすまなかった。醜い事が悪だとは知らなかったのだ。』


 メメちゃんが悲しそうな声で謝った。


「ち、違う! そんな事ないから! ……ごめんなさい。私は碧。確かに言い過ぎだったね。」

『うむ。少し悲しかったが、謝ってもらえたので大丈夫だ。』


 碧ちゃんを……言い負かした?


『我はエイミー殿によって力を封印された神だ。今はペットとしてお世話になっている。』

「……神がペットになっても良いのか?」

『問題ない。神といえどもペットになって暮らす場合もある。前例は無いがな。』

「前例無いのかよ……。」


 レイベルトは良く分からないという顔でポツリと呟いた。


「うん。とりあえず、今すぐ敵対するって事じゃないのは分かったけど、私はペットとして認めたわけじゃない。」

『何故だ? 先程、猫なら良いような話をしていたではないか。』

「猫じゃないし。」

『猫でなければいけないのか?』

「そういうわけじゃないけど……良く分からない生き物は飼えないよ。」

『良く分からないならこれから知っていけば良い。ちなみに、我は恋に関する能力と知識を持ち合わせている。封印はされたが知識ならあるぞ。なんでも相談してくれ。』

「恋、ねぇ……?」


 碧ちゃんは疑いの眼差しでメメちゃんを見ている。


『そうだな。少しだけアドバイスしてみようか。レイベルト殿は寡黙という程ではないが、なにかと言葉足らずなところがあるだろう。』

「ないだろ。」

「まぁ……うん。そういうとこある。」

「なんだと……。」


 レイベルトは碧ちゃんの発言に目を見開いて驚いている。

 言葉足らずな自覚なかったの?


『想いは言葉にしなければ伝わらない。以心伝心とも言うが、だとしても……言葉にする事は重要だ。相手に対して日頃の想いや感謝を伝えると良いだろう。』

「何故俺が説教されているんだ? しかもペットに……。いや、まぁ考えておく。」


 的確なアドバイスね。

 ほんと、メメちゃんをペットにして良かったわ。


『碧殿は言っている事がそのまま相手に伝わっていると思い込んで話す傾向にある。他をもう少し思いやって分かり易く伝える必要があるだろう。』

「大丈夫。皆私の話を分かってくれてるよ。」

「確かに碧は難しい話が多いな。」

「え?」


 碧ちゃんは冗談だと受け止めたみたいだけど、本当だよ。

 前回貰った手紙なんて完全に意味不明だったもの。


『碧殿が賢い故の弊害だ。この世界の住人は碧殿程の教育を受けていない。そこを念頭に入れ、迂遠な言い回しや難しい単語の使用を控えて会話するのが良いだろう。』

「私までペットに説教された……。うん。エイミーの言う通りレイベルトより賢いかも。」

「なっ!? いや、そうかもしれん。」


 あっさり認めちゃったわ。


『レイベルト殿。ペットと言っても我は神だぞ? 恥じる必要は無い。エイミー殿のように我をお利口さんだと言って撫でておけば良いのだ。』

「成る程。では今後そうするか。」


 レイベルトはメメちゃんをお利口さんだと言って撫でている。


「サクラやアーリィが認めたなら俺も認めることにしよう。そもそもアーリィに気に入られるなら心根は悪い奴ではないだろうしな。」


 良かった。

 メメちゃんを受け入れてくれたのね。



「ちょっと待ったーー!!」

『どうしたのだ?』

「危うく丸め込まれるところだった。まだ、メメちゃんが危なくない生き物だって証明が出来てないでしょ!」


 流石は碧ちゃん。

 ちょっとやそっとでは誤魔化せないわね。


『危険かどうかの証明なら簡単だ。我はエイミー殿に全ての力を封印されている。』

「これだけ頭が回るなら封印を解く事だって出来るかもしれないでしょ!」

『無理だ。エイミー殿以外には決して封印は解けん。仮に解けたとしても、我は大人しくここで飼われるぞ? 毎日お魚を一匹くれる約束だからな。』

「それこそ怪しいよ! 封印が解ければ世界征服してお魚なんていくらでも手に入るように出来るじゃん!?」

『足るを知る、という言葉を知っているか?』

「知ってるよ。それがどうしたのさ。」

『お魚は美味いが、一日一匹以上欲しいとは思わない。大量に手に入れてどうするのだ。食べ切れずに無駄になってしまう。』

「で、でも……あの怪物と同じ力があるんだったら…………。」

『何を言う。碧殿やレイベルト殿とて、既に我の力と同等ではないか。世界征服をしないのか?』

「そんな事するもんか!」

『何故だ? 十分強いだろう。すれば良いではないか。』

「私達は世界征服なんて興味ない!」

『我も興味ないぞ。毎日お魚を一匹食べる。そうして幸福を噛み締める。これ以上望むものなどない。』

「……。」

『財にも興味はない。日々の暮らしが成り立てば蓄える意味もないからな。』

「意外と……欲がないんだね。神というからには生贄なんかは?」

『必要ない。ちなみに、アドバイス料などもいらんぞ。毎日お魚を一匹もらっているからな。』


 神の力を継承しただけの私と違って、メメちゃんの方がよほど神らしいわ。

 実際神なんだけど。


「……良いよ。」

『何がだ?』

「うちで飼っても良いよ。」

『有難い。ペットの餌やりは忘れてはならないぞ?』

「勿論。ただし、悪い事したらすぐに追い出してやるからね!」

『心得た。』

「碧ちゃん本当はもう疑ってないでしょ? 照れなくっても良いのに。」


 きっと、一度は疑ってしまったから引っ込みがつかなくなったのね。


『エイミー殿。こういうのを専門用語でツンデレと言う。』

「うるさいよ!」


 なんか怒ってるけど、これもツンデレって言うのかしら?



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