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田中神代

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14 花の知らせ

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 キリリ、
「……ん?」
 どこかで高い音が聞こえた。
硬いものを擦り合わせたような音に、クァイリは首を巡らせる。
「フローリアです」
 ディエントは静かに外套をめくる。
薬水を得て瑞々しくなっていたその植物は、葉や蔓をピンと伸ばしていた。
何かを警戒して張り詰めているように、そんな動物のような仕草に見えた。
「…多分,近くに私たちの危険になり得る生き物が居るのでしょう」
「そうなんですか」
 そう相槌を打ちつつ、視線を注ぐ。
一体、植物が何を察したのか。
どの器官をどのように使って、そう言うものを感じたのか。
何をどこで考え、どうやってあの高い音を出したのか。
 研究者の卵として,そちらの方に興味が惹かれる。
「……、どうしました?」
 ディエントの言葉があるまで、ずっと眺めて考えていたクァイリは、はっと顔を上げる。
フローリアはディエントの体に巻きついて居るので、じっと観察していれば必然的に
ディエントの体を眺めていることになる。
 そのことに気がついたクァイリは一言謝罪をし、視線を前に戻す。
「今まで,こんなことがあった時は、何があったのですか?」
 ふと気になり、そう聞く。
危険になり得る生き物、だけでは心の準備ができない、と言うわけではなく、
(……、人か獣か、)
 悪意のある人間を見分けるのか。
 気配のない野性の獣を感じるのか。
植物がどう感じるのかはさえておいて、クァイリはそれを確かめる。
ディエントはその意図を察したのか分からなかったのか、少しクァイリを見た後、
「基本的に何も会わなかったはわ  時々、野性の動物に会うくらいで」
 そう答える。
必要な情報を得られたクァイリは、一言礼を言って考えこむ。
(基本会わない、といっても、ようは、野生動物が近くに居ることを教えるだけ、か?)
 全面的に信じるのであれば,戸心の中で呟きながらディエントを見る。
そして
「このまま進みます」
「え、……、あ、そう」 
 少し戸惑いながらも、頷く。
キリリリ,と異議を唱えるように小さく音がなるが、無視して進む。
その事から自分の考えがあっていたことを知り、歩を早める。
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