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田中神代

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21 正しいカタチにするために

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 朝日が登る前。
宿屋の窓から、外を眺める。
村の外へ歩いていく人影が、二人分。
(…今回は、もうダメですか)
 ため息を吐く。
一体,何を間違えたと言うのか。
今回こそは,と失敗の目を摘んできたのに。
(その上、厄介な事も増えましたし、)
 第一印象は、”使える”だった。
ああいうタイプは、一度納得させることができれば、最後まで持続していくから。
そのことは,同じタイプの人間である、私がよく分かっている。
(ただ,それだけに……、厄介なんですよね)
 思わずため息を吐いて天井を見上げる。
狭い屋根裏部屋の天井に、小さなクモが一匹。
ふらふらと揺れる糸にぶら下がって、巣を作ろうとしていた。
(…同族嫌悪、と言うのですかね)
 それだけではない。
ただ話せば話すほど、排除したい気持ちに駈られた。
その手は悪手だと、ディエントと話しながら何度も自分に言い聞かせながら。
(もう失敗なのはほとんど確実なのだから、やるべきだったか…)
 とはいえ,次のアテもない。
少しでも可能性があるうちは,経過を見ておきたい。
(案外、拾い物があるかもしれませんし)
 あの厄介者も、案外、役に立つのかもしれない。
同族とはいえまだ単なる一学生であるうちは、十分に利用できる。
「…明日くらいに、出ますか」
 そう呟いてベッドに身を横たえる。
手を伸ばしてラックの上のノートを掴む。
天井のクモを視界から覆い隠すように、ノートを開いて眺める。

 ーー全ては、正しいカタチにするために。
 
 最初に設定した目標。
この為に、十何年も費やした。
絶対に曲げたくない、私の信念。
「…全ては正しいカタチにするために」
 ノートを閉じ、瞼を下ろした。
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