私のアレに値が付いた!?

ネコヅキ

文字の大きさ
42 / 235

赤面の宝。

しおりを挟む
 ドヤ顔でビシリッと指差すエリシア王女。もう片方の手では、猫の様な動物をしきりに撫で回していた。

「……はあ」
「あれ? 反応薄くない?」

 そりゃまあ、二度目ですから。

「それで、お姉様のお相手はフォワールで宜しいのでしょうか?」
「勿論よ」

 え!? 決闘するのは既に決定事項!? 私の意思はっ?!

「ちょちょ、ちょーっと待って下さい王女殿下っ。決闘と申されましても私剣術なんてからきしですよ!?」

 戦いには程遠い平和な日本で生まれ育った私。やった事があるのは『女の戦い』くらいしかない。

「大丈夫です。お姉様なら楽勝ですよっ」

 それ根拠なぁい。

「まあ、あのキノッピ相手なら余裕で勝てそうだけどね」
「キノッピ?」
「フォワールの嫡男ですわ」

 ぷっ、キノッピって呼ばれてんのかアイツ。

「ナイフより重い物を持った事が無い。などという話ですから、剣術を知らないお姉様でも勝てますわ」

 そんなのと比較されても嬉しくないよっ!

「そうね。だけど、それじゃあ面白くないわ」
「え? 別な方法で?」
「当たり前でしょ? 剣術試合なら明らかにサヒタリオが不利だもの。決闘を受ける訳がないわ」

 そりゃそうか。もやしの胴体にキノコが乗っかっただけだもんな。決闘の期日が何時かは知らないが、今更剣術の修行をした所で大して変わらないだろう。

「公平を期すのも宜しいですが、それによって負ける様な事態に陥りませんか?」
「心配しないで、ソコはちゃんと考えてある。だけど、剣術試合も面白そうね。戦わせてみたいな……」

 後半、ボソリと呟いたセリフを私は聞き逃さなかった。オイッ!

「では、王女殿下。その方法をお教え下さい」

 ニヤリ。と口角を吊り上げる王女に私とリリーカさんは唾を飲み込む。

「ズバリ! 両家お宝対決よっ!」

 ビシッと指を差し、王女殿下はそう告げたのだった。

「あれ? 反応が無いわね?」

 呆れてるのよ。

「お宝対決と言われましても、カーン=アシュフォードは架空の貴族。領地や屋敷どころか、価値ある品なんて持っていませんよ」
「ソコはホラ、リブラが居るでしょう? かつて、世界を股に掛けた冒険者で街を救った英雄。そんな人なら価値あるお宝くらい持っているでしょう?」

 持っているかなぁ? 何しろ中層の豪邸に住めるのにもかかわらず、下層で小さな家と喫茶店を営んでいる、質素倹約を絵に描いた様な人なのに……

「り、リリーカさん、そんなお宝って心当たりある?」
「いえ、サッパリ……」

 ダメじゃん!

「倉庫にも無いの?」
「倉庫?」
「ええ、冠十二位ナンバーズには専用の倉庫を貸し与えてあるの。家の中に無いって事は、もしかしたらソコにため込んでいるのかもしれないわ」

 ため込むって、言い方が酷いな。でも、倉庫か。それは期待が持てそう。

わたくしは入った事はありませんので詳細は分かりかねます」
「じゃあ、知っている人に直接聞きましょっ」

 エリシア王女に急かされて、私達はオジサマのお店へと向かった。



 ガチャンッ! 床と熱いキスを交わした白磁の器が、耳障りな音を立てて砕け散る。その原因を作った、屈めばガッツリ見えてしまうミニスカの小太りメイドさんは、目玉が飛び出てもおかしくない程に目をカッ開いていた。

「王女殿下!?」

 普段は無口で無愛想なオジサマも、ついつい大声を出してしまう程に驚きを隠せないでいる様子だ。

「共のフレッドはどうされたのですか!?」
「ん? まいてきたに決まっているでしょ?」

 可哀想なフレッドさん。今頃は血眼になって探し回っているんだろうなぁ。

「そんな事よりもグレイ。さっさと出しなさい」

 手の平を差し出して何かを要求する王女様。その姿は、カツアゲしている人と変わらない。

「分かりました王女殿下」

 主語も何も無いのに、今ので分かったのっ!?

 視線を手元に移し、いそいそと手を動かすオジサマ。コトリ、とカウンターに置いたのは、淹れたてのコーヒーだった。

「違うっ! 鍵よ鍵っ!」
「ヒメサン。流石に『出せ』だけでは分からないですよ。取り敢えずコレを飲んで落ち着いて下さい」
「ふんっ」

 カウンター席にに腰掛けたエリシア王女は、差し出されたコーヒーを一口。オジサマのコーヒー、結構ビターな味わいだけど大丈夫かな……

「アラ、美味しい」

 パアッと明るい表情になる王女。うんうん。オジサマのコーヒーって美味しいもんね。

「それで、どうして王女殿下がオレの家の鍵を欲しがるのですか?」
「違いますお父様。殿下が欲しているのは家の鍵ではありませんわ」
「じ、じゃあ店のっ?! か、勘弁して下さいよ。ここはオレの唯一の楽しみなんですぜ」

 何のコントだコレ。リリーカさんもリリーカさんでちゃんと言わないからオジサマ勘違いしまくっているじゃないか。

「そうじゃなくて、倉庫の鍵を寄越しなさいって言ってるの」

 初めからそう言えば良いだろう?

「ああ、そういう事ですか……だが断る」

 えっ!?

「あら、アナタも私に逆らうというの?」
「いや、そういう訳じゃないですがね。突然やって来られて倉庫の鍵を寄越せとか、流石に訳分かりませんよ」
「王女殿下、ココはわたくしにお任せ下さい」

 カウンター席に座ったリリーカさんは両肘をついて手を組み、その手の甲に顎を乗せる。

「お父様、お母様。ウチにお宝と呼ばれる物は御座いますか?」
「ええ、勿論あるわよ」
「ああ」
「それは、どの様な物でしょうか?」
「決まっているじゃない。それは──」

 続くおばさまの言葉に、リリーカさんの顔がみるみる赤に染まってゆく。真顔で面と向かって『ウチのお宝はお前だよ』なんて言われた日にゃぁ、耳まで真っ赤に染まるというもんである。これがアニメの描写だったら、顔から水蒸気爆発が起こっていた事だろう。

「ふっ巫山戯ないで下さいまし」
「アラ、巫山戯てなんてないわよ」
「ああそうだ。巫山戯てなんてないぞ」
「──ツッ!」

 うんうん。子は宝、だよね。だけど、このままじゃ埒が明かないな。

「すみませんオジサマ。私が全部説明します」

 初めから私が説明しておけば良かった。と思いながら、かくかくしかじかと事情を説明すると、オジサマもおばさまもようやく理解が出来た様子だ。

「なぁんだ、回りくどい言い方しないで初めからそう言ってくれれば良いのに」

 ごもっともで御座います。

「じゃあ……はい、コレが鍵ね」

 おばさまが差し出したのは、長さが十センチ程で幅が二センチ程の四角い棒。全体にひび割れた様な模様が刻まれ、そのひび割れから淡い緑色の光を放つ不思議な鍵だった。そして、おばさまの胸の谷間で保管されていたが為に生温かい。何処に隠しているんだよっ!

「お母様……流石にソコに隠しておくのは如何かと思いますわ」
「アラ、ここなら誰にも知られる事はないでしょう?」

 相手も若い女の子なら下心満載で手を入れるだろうが、流石におばはんの谷間に手を突っ込む勇者は居ないわな。上手い事考えたものだ。

「だけど、価値のあるお宝なんて有ったかしら?」
「覚えていませんの?」
「何しろもう十七年も前の事だからねぇ……この街に腰を落ち着ける事になってバタバタしてたから、取り敢えず要らない物を箱に放り込んで預けちゃったのよ」
「では、直接行って確かめるしかないのですね」
「そうね。でもリリー、これだけは言っておくわ。何もなくても決して恨まないでね」

 おばさまの一言に期待値がみるみる下がる。

「んー? 話纏まったぁ?」

 オジサマが淹れたコーヒー片手に完全リラックスモードのエリシア王女。むしろアンタが率先して纏めるべきじゃないですかね?!



 この街で倉庫といえばアソコしかない。通商ギルドの『アルカイック』。『美人』受付嬢三人娘があんな事になってしまった為に一時は混乱していた様だが、ルレイルさんの手腕が凄いのか、人気の安定職なのかは知らないが、そこそこの綺麗どころが受付に立っていた。

 関係者以外立ち入り禁止。エリシア王女はその意味を知ってか知らずか、ズカズカとお構いなしに侵入してゆく。見た目は六歳児にしか見えない子供の奇行に、一瞬ポカンとしたスタッフが慌てて取り押さえようと動き出すが、それはリリーカさんが阻止した。

「やっほー、イクテュエス。元気してたー?」

 執務室のドアを勢い良く開け放ち、右手を高々に上げるエリシア王女。

「えっエリシア王女殿下?!」

 今まで座っていた椅子を太ももで弾き飛ばして立ち上がるルイレルさん。エリシア王女の頭越しに見たその姿に、稲妻が駆け抜けた様な衝撃が私を襲った。

 森で助けられた時も、アパートの異臭騒ぎの時も、微塵も揺るがなかったルレイルさんのアルカイックスマイルが……崩れてるっ!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー

芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。    42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。   下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。  約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。  それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。  一話当たりは短いです。  通勤通学の合間などにどうぞ。  あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。 完結しました。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生先の異世界で温泉ブームを巻き起こせ!

カエデネコ
ファンタジー
日本のとある旅館の跡継ぎ娘として育てられた前世を活かして転生先でも作りたい最高の温泉地! 恋に仕事に事件に忙しい! カクヨムの方でも「カエデネコ」でメイン活動してます。カクヨムの方が更新が早いです。よろしければそちらもお願いしますm(_ _)m

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。 病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。 これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。 別作品も掲載してます!よかったら応援してください。 おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

処理中です...