私のアレに値が付いた!?

ネコヅキ

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赤面の宝。

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 ドヤ顔でビシリッと指差すエリシア王女。もう片方の手では、猫の様な動物をしきりに撫で回していた。

「……はあ」
「あれ? 反応薄くない?」

 そりゃまあ、二度目ですから。

「それで、お姉様のお相手はフォワールで宜しいのでしょうか?」
「勿論よ」

 え!? 決闘するのは既に決定事項!? 私の意思はっ?!

「ちょちょ、ちょーっと待って下さい王女殿下っ。決闘と申されましても私剣術なんてからきしですよ!?」

 戦いには程遠い平和な日本で生まれ育った私。やった事があるのは『女の戦い』くらいしかない。

「大丈夫です。お姉様なら楽勝ですよっ」

 それ根拠なぁい。

「まあ、あのキノッピ相手なら余裕で勝てそうだけどね」
「キノッピ?」
「フォワールの嫡男ですわ」

 ぷっ、キノッピって呼ばれてんのかアイツ。

「ナイフより重い物を持った事が無い。などという話ですから、剣術を知らないお姉様でも勝てますわ」

 そんなのと比較されても嬉しくないよっ!

「そうね。だけど、それじゃあ面白くないわ」
「え? 別な方法で?」
「当たり前でしょ? 剣術試合なら明らかにサヒタリオが不利だもの。決闘を受ける訳がないわ」

 そりゃそうか。もやしの胴体にキノコが乗っかっただけだもんな。決闘の期日が何時かは知らないが、今更剣術の修行をした所で大して変わらないだろう。

「公平を期すのも宜しいですが、それによって負ける様な事態に陥りませんか?」
「心配しないで、ソコはちゃんと考えてある。だけど、剣術試合も面白そうね。戦わせてみたいな……」

 後半、ボソリと呟いたセリフを私は聞き逃さなかった。オイッ!

「では、王女殿下。その方法をお教え下さい」

 ニヤリ。と口角を吊り上げる王女に私とリリーカさんは唾を飲み込む。

「ズバリ! 両家お宝対決よっ!」

 ビシッと指を差し、王女殿下はそう告げたのだった。

「あれ? 反応が無いわね?」

 呆れてるのよ。

「お宝対決と言われましても、カーン=アシュフォードは架空の貴族。領地や屋敷どころか、価値ある品なんて持っていませんよ」
「ソコはホラ、リブラが居るでしょう? かつて、世界を股に掛けた冒険者で街を救った英雄。そんな人なら価値あるお宝くらい持っているでしょう?」

 持っているかなぁ? 何しろ中層の豪邸に住めるのにもかかわらず、下層で小さな家と喫茶店を営んでいる、質素倹約を絵に描いた様な人なのに……

「り、リリーカさん、そんなお宝って心当たりある?」
「いえ、サッパリ……」

 ダメじゃん!

「倉庫にも無いの?」
「倉庫?」
「ええ、冠十二位ナンバーズには専用の倉庫を貸し与えてあるの。家の中に無いって事は、もしかしたらソコにため込んでいるのかもしれないわ」

 ため込むって、言い方が酷いな。でも、倉庫か。それは期待が持てそう。

わたくしは入った事はありませんので詳細は分かりかねます」
「じゃあ、知っている人に直接聞きましょっ」

 エリシア王女に急かされて、私達はオジサマのお店へと向かった。



 ガチャンッ! 床と熱いキスを交わした白磁の器が、耳障りな音を立てて砕け散る。その原因を作った、屈めばガッツリ見えてしまうミニスカの小太りメイドさんは、目玉が飛び出てもおかしくない程に目をカッ開いていた。

「王女殿下!?」

 普段は無口で無愛想なオジサマも、ついつい大声を出してしまう程に驚きを隠せないでいる様子だ。

「共のフレッドはどうされたのですか!?」
「ん? まいてきたに決まっているでしょ?」

 可哀想なフレッドさん。今頃は血眼になって探し回っているんだろうなぁ。

「そんな事よりもグレイ。さっさと出しなさい」

 手の平を差し出して何かを要求する王女様。その姿は、カツアゲしている人と変わらない。

「分かりました王女殿下」

 主語も何も無いのに、今ので分かったのっ!?

 視線を手元に移し、いそいそと手を動かすオジサマ。コトリ、とカウンターに置いたのは、淹れたてのコーヒーだった。

「違うっ! 鍵よ鍵っ!」
「ヒメサン。流石に『出せ』だけでは分からないですよ。取り敢えずコレを飲んで落ち着いて下さい」
「ふんっ」

 カウンター席にに腰掛けたエリシア王女は、差し出されたコーヒーを一口。オジサマのコーヒー、結構ビターな味わいだけど大丈夫かな……

「アラ、美味しい」

 パアッと明るい表情になる王女。うんうん。オジサマのコーヒーって美味しいもんね。

「それで、どうして王女殿下がオレの家の鍵を欲しがるのですか?」
「違いますお父様。殿下が欲しているのは家の鍵ではありませんわ」
「じ、じゃあ店のっ?! か、勘弁して下さいよ。ここはオレの唯一の楽しみなんですぜ」

 何のコントだコレ。リリーカさんもリリーカさんでちゃんと言わないからオジサマ勘違いしまくっているじゃないか。

「そうじゃなくて、倉庫の鍵を寄越しなさいって言ってるの」

 初めからそう言えば良いだろう?

「ああ、そういう事ですか……だが断る」

 えっ!?

「あら、アナタも私に逆らうというの?」
「いや、そういう訳じゃないですがね。突然やって来られて倉庫の鍵を寄越せとか、流石に訳分かりませんよ」
「王女殿下、ココはわたくしにお任せ下さい」

 カウンター席に座ったリリーカさんは両肘をついて手を組み、その手の甲に顎を乗せる。

「お父様、お母様。ウチにお宝と呼ばれる物は御座いますか?」
「ええ、勿論あるわよ」
「ああ」
「それは、どの様な物でしょうか?」
「決まっているじゃない。それは──」

 続くおばさまの言葉に、リリーカさんの顔がみるみる赤に染まってゆく。真顔で面と向かって『ウチのお宝はお前だよ』なんて言われた日にゃぁ、耳まで真っ赤に染まるというもんである。これがアニメの描写だったら、顔から水蒸気爆発が起こっていた事だろう。

「ふっ巫山戯ないで下さいまし」
「アラ、巫山戯てなんてないわよ」
「ああそうだ。巫山戯てなんてないぞ」
「──ツッ!」

 うんうん。子は宝、だよね。だけど、このままじゃ埒が明かないな。

「すみませんオジサマ。私が全部説明します」

 初めから私が説明しておけば良かった。と思いながら、かくかくしかじかと事情を説明すると、オジサマもおばさまもようやく理解が出来た様子だ。

「なぁんだ、回りくどい言い方しないで初めからそう言ってくれれば良いのに」

 ごもっともで御座います。

「じゃあ……はい、コレが鍵ね」

 おばさまが差し出したのは、長さが十センチ程で幅が二センチ程の四角い棒。全体にひび割れた様な模様が刻まれ、そのひび割れから淡い緑色の光を放つ不思議な鍵だった。そして、おばさまの胸の谷間で保管されていたが為に生温かい。何処に隠しているんだよっ!

「お母様……流石にソコに隠しておくのは如何かと思いますわ」
「アラ、ここなら誰にも知られる事はないでしょう?」

 相手も若い女の子なら下心満載で手を入れるだろうが、流石におばはんの谷間に手を突っ込む勇者は居ないわな。上手い事考えたものだ。

「だけど、価値のあるお宝なんて有ったかしら?」
「覚えていませんの?」
「何しろもう十七年も前の事だからねぇ……この街に腰を落ち着ける事になってバタバタしてたから、取り敢えず要らない物を箱に放り込んで預けちゃったのよ」
「では、直接行って確かめるしかないのですね」
「そうね。でもリリー、これだけは言っておくわ。何もなくても決して恨まないでね」

 おばさまの一言に期待値がみるみる下がる。

「んー? 話纏まったぁ?」

 オジサマが淹れたコーヒー片手に完全リラックスモードのエリシア王女。むしろアンタが率先して纏めるべきじゃないですかね?!



 この街で倉庫といえばアソコしかない。通商ギルドの『アルカイック』。『美人』受付嬢三人娘があんな事になってしまった為に一時は混乱していた様だが、ルレイルさんの手腕が凄いのか、人気の安定職なのかは知らないが、そこそこの綺麗どころが受付に立っていた。

 関係者以外立ち入り禁止。エリシア王女はその意味を知ってか知らずか、ズカズカとお構いなしに侵入してゆく。見た目は六歳児にしか見えない子供の奇行に、一瞬ポカンとしたスタッフが慌てて取り押さえようと動き出すが、それはリリーカさんが阻止した。

「やっほー、イクテュエス。元気してたー?」

 執務室のドアを勢い良く開け放ち、右手を高々に上げるエリシア王女。

「えっエリシア王女殿下?!」

 今まで座っていた椅子を太ももで弾き飛ばして立ち上がるルイレルさん。エリシア王女の頭越しに見たその姿に、稲妻が駆け抜けた様な衝撃が私を襲った。

 森で助けられた時も、アパートの異臭騒ぎの時も、微塵も揺るがなかったルレイルさんのアルカイックスマイルが……崩れてるっ!
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