私のアレに値が付いた!?

ネコヅキ

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ドキドキの鑑定。

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 お宝らしき物を見付け、ルンルン気分で階段を上がるエリシア王女。次いで私が続き、最後には暗い表情のリリーカさんがついて来る。

 お宝らしきネックレスを見付けた後、王女が食い散らかした品物を箱に詰め直す際に価値がありそうな物を選別して持ち出したが、正直これ等でフォワールのお宝と張り合う事は難しい。最後の頼みは金のネックレスだけか。

「あれ? イクテュエスが居ない」

 金庫への通路から先に出た王女が、おでこに掌を当てて漆黒の闇を見渡している。

「ここで待っているって言ってたのに……」

 用事が出来て離れたのだろうか? 彼の明かりが無いと控え室に戻れないのに。

「お帰りなさいませ」
「「「うわっ!」」」

 リリーカさんに明かりの魔法を頼もうとした時、漆黒の闇の中にポゥッと浮かび上がったアルカイックスマイルに皆が驚いた。

「ビックリするじゃないのイクテュエスっ」
「申し訳御座いません。何しろ何時お戻りになるのか分かりませんでしたので、明かりを消してお持ちしておりました」
「だったら中で待ってたら良いじゃない」
「流石に他の冠位の方の金庫内に足を踏み入れる訳にはいきませんでしたので。それで、成果は如何でしたか?」
「イカもタコもないわ。それでも七位なの?! ってくらい何も無かったわよ」
「それはそれは御疲れ様で御座いました。部屋にお茶とお菓子をご用意しておりますので、お寛ぎになられて下さい」
「お、さっすがイクテュエス。気が利くぅ」

 お菓子と聞いて上機嫌なエリシア王女。まだまだ子供だな。といわんばかりのアルカイックスマイルを浮かべるルレイルさんに、そこそこに膨れた袋を差し出した。

「一応価値がありそうな物を持ってきたので鑑定をお願いします」
「分かりました。では、先にお部屋にご案内致します」

 私から袋を受け取ったルレイルさんは、満面のアルカイックスマイルを浮かべた。だから光源の所為で怖いってば。



 通商ギルド『アルカイック』に戻って来た私達は、迎賓室へと通されて用意してあったお茶とお菓子を堪能していた。そこへ席を外していたルレイルさんが入室して来る。その手には、魔導鑑定機『色々分かるんです君アルファマークスリー』を持っていた。ネーミングセンス無いなぁ。

「では、お持ちになられた品物の鑑定を行いますね」

 テーブルにゴトリと機械を置き、袋から折れた杖を取り出して機械の上に置いてボタンを押した。

 その結果をゴクリ。と喉を鳴らして待つ私達。尚、王女はそんな事はそっちのけでお菓子を食いまくっていた。

「こちらの杖は三十万ドロップですね」
「三十……ですか」
「ええ、杖としては珍しい物ですが、希少価値は低いです」

 恐らくはおばさまが使っていたのだろうな。神官だったって話だし。

「次は、コレですね」

 次いで出したのは錆びてくの字に曲がった剣。

「これは珍しい代物ですね」
「そうなのですか?」
「ええ、くの字に曲がったように見えますが、こういう武器なのです」

 マジでか?!

「え。どうやって使うんですソレ」
「投げるんですよ。投げると弧を描いて戻って来るんです」

 あっぶねぇブーメランだなオイっ!

「大陸南方に浮かぶ島々発祥と云われていますね」

 真っ直ぐに飛ばすと海に落ちるのでそういう風にしたのだと云う。そのブーメラン剣のお値段は、四千ドロップだった。やっすいなぁ。

 その後、破れたマント、歪んだティアラや宝石が外れた金の指輪。何故かあった王冠など次々と鑑定をするも、どれもたいした値は付かなかった。

「次はコレですね」

 ルレイルさんが取り出したのは、いくらやっても何故か鞘から抜けなかった短剣。それを『色々分かるんです君アルファマークスリー』の上に置いてボタンを押すと、何時もは緑色の表示部が赤に染まった。

「ああ、コレはイケませんね」
「ど、どうかしたのですか?」
「コレ、呪われています」
「呪われているんですか?!」
「ええ、恐らく鞘から抜くと効力が出るのでしょう。どんな呪いなのかは、抜いてみないと分かりませんが」

 あっぶねぇぇっ! 躍起になって抜こうとしてたっ!

「どうやら今ので最後の様です」
「「……え?」」

 私とリリーカさんとで顔を見合わせる。木箱の一つを占有していた金のネックレスがない?!

「リリーカさん?」
「いえ、わたくしではありませんわ」
「じゃあ……」

 残る一人に視線を向けると、その人は窓の方を向いてお菓子を口に運んでいる。その頬はリスみたいになっていた。

「エリシア王女」
「んー? なぁに?」

 なぁに。じゃないわっ!

「持ち出したネックレスを出してもらえませんか?」
「ふぅ、仕方ないわね」

 仕方なく無いだろうが。ホント手癖悪いなこの王女様は。

「おお、これは中々で御座いますね」

 チャラリと差し出された金のネックレスに、アルカイックスマイルで唸るルレイルさん。私達の期待が一気に高まる。

「では早速」

 短剣の時と同じ様に、色々分かるんです君アルファ……いちいちフルネームは面倒なので『鑑定機』に乗せる。ボタンを押すと短剣と同様に表示部が赤色に染まった。

「ああ、コレもダメですね」
「ダメ!? まさかコレも呪われて?!」
「いえ、そうではなくてですね。鑑定が不可能なのです」
「鑑定が出来ないって、そんな品物あるんですか?」
「ええ、鑑定不可の品物は意外にありますよ。鉱物系ですと、例えば召喚石や封魔石などですね」

 召喚石とは精霊と契約を交わす際に用いられる石。封魔石は悪魔を封じる事の出来る石。どちらも希少価値が高いとも云えるが、精霊が見えなければ契約は不可能だし、悪魔を解き放って本人や周辺が無事で済んだ話が無いそうだ。

「それ等は必要な人にとっては価値のある品物。といった所ですね」

 その価値が人によって異なるとなれば、対決の切り札には程遠い。

「どうするの? 打つ手が無くなったわよ」

 ソレをアンタが言いますか。王女サン。

「でも、コレがまだそうだとは決まってないでしょ? ルレイルさんが言ったのはあくまで例えなんだから」
「そうですね。私が申したのはただの一例に過ぎません」
「だったら、知っている人に聞けば良いのよ。コレを何処で手に入れたか、そして何なのか、をね」
「そ、そうですわ。持ち主であるお母様にお聞きすれば宜しいのです。流石はお姉様ですわ」

 頭に漬物石を乗せられていたかの様に、辛そうに俯いていたリリーカさんの表情が明るくなる。

「では、急ぎましょう。お姉様っ」
「ええそうねっ!」

 ソファから勢い良く立ち上がると、ルレイルさんへの挨拶もそこそこに、オジサマのお店へと向かった。



 ガラランッ。来客を示すドアベルが小気味好い音を立てる。

「あら、カナちゃんにリリーまで。どうしたの? そんなに慌てちゃって」
「……王女殿下はどうしたんだ?」
「お帰りになりましたわ」

 帰ったというよりは、ずっと彼女を探し回っていたウォルハイマーさんに見つかって半ば強制連行された。別れ際に明後日楽しみにしているから。と、無責任な言葉を頂戴している。

「お母様。お母様にお聞きしたい事が御座います」
「妹か弟かならまだ分からないわよ」

 何故ソッチだと思った?!

「ちっ、違いますっ。コレの事ですわっ!」

 ポケットから件のネックレスをおばさまに差し出す。それを受け取ったおばさまは、目を見開いて受け取った。

「……素敵ね。何処に売ってたの?」
「倉庫の木箱に入っていたんですわっ」
「え? これが……?」
「ええ。ですから、お母様なら何か知っているかと思って」
「んー……こんなの箱に入れたかしら?」
「え? ちょ、ちょーっと待って下さい。コレ、おばさまが所有していたネックレスでは無いんですか?!」

 私からの問い掛けにおばさまは、歳に似合わない可愛いふるふるを披露する。

「え……木箱の中にコレだけ入ってたんですが?」
「変ねぇ、そんな事をした覚えは無いのだけれど……」
「お母様。よぉーっく思い出して下さいまし」
「んー……やっぱり記憶に無いわねぇ。お父さんはどう? 何か知ってる?」
「……いや、オレも知らんぞ」
「最後の希望が絶たれましたわ……」

 カウンター席から床へと崩れ落ちるリリーカさん。

「まだ、まだよ。諦めるのは早いわ。おばさま、コレの正体が分かるような場所って何処ですか!?」
「え? そうねぇ……見たところ何らかの魔力が籠められているみたいだから、魔術ギルドかしら」
「魔術ギルド。ソコへ行けば分かるんですね!?」
「もう良いですわお姉様」

 ゾンビかと思える動きで立ち上がったリリーカさんは、まさしくゾンビの様に足を引き摺りながら出口へと向かう。

「ちょ、リリーカさん何処へ行くの?!」
わたくしこれから旅に出ます。何処か辺境の孤島にでも身を隠して生涯を過ごしますわ」

 笑んで言ったその表情に、もはや生気は感じられなかった。

「そんな悲しい事言わないでよっ」
「だってもう、どうしようもありませんもの。明後日までにフォワールを超える品をどうやって見付けるのですか? 市場に出回らない様な希少価値が高い品でなければ万が一にも勝ち目はありませんのに……」

 ポロポロと静かに流れ落ちる涙。その小さな身体を抱き締めると僅かな嗚咽が漏れ出した。こうなったのも私の所為だ。祭りの間だけ恋人役を演じ、祭りが終わるのと同時にリリーカさんは学業に戻る。という、根本的な解決には至らないが当初の予定通りにしておくべきだった。だが、私が王女に口を滑らせてしまったが為にここまで拗れる結果となってしまった。助けたい。リリーカさんを。最悪、私の秘密がバレようとも──

「あ……」

 秘密。そういえば私には秘密があった。

「グスッ、お姉様……?」
「ある」
「え?」
「市場に出回っていないお宝なら、ある!」
「ほ、本当ですの!?」
「ええっ! ここで待ってて。取ってくるからっ!」

 ドアベルが千切れ飛びそうな勢いでドアを開け、アパートへと一目散に駆け出した。
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