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序章 気が付いたら異世界転移
003 宿で異世界の食事とトイレ事情を知る (改)
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「朝と夜の食事がついて1泊銀貨3枚だ。連泊してくれるなら、初日以降は銀貨2枚で同じ待遇で泊まれるよ」
宿の女将さんに宿泊料金の説明を受ける。
この人の外見は普通の人間に見えるな。美人さんではあるけどモフモフはしてない。
獣人の宿ではなくてちょっと残念。
しかし連泊はお得とはいえ、残金は銀貨7枚だしなぁ。
最大でも3泊しか出来ないし、連泊する余裕は無いか。
ここは大人しくひと晩だけ泊まる旨を伝え、銀貨3枚を支払う。
残金が目に見えて減っていくのって、なかなかの恐怖ですよね……。
「確かに受け取ったよ。迷宮の安らぎ亭を使ってくれてありがとねぇ」
毎度ありーっと、ニッコリ微笑んでくれる女将さん。
美人さんの笑顔に、疲れ切った心と体が癒されるぅ~……。
「流石に今日の朝の分の食事はもう出せないから、明日宿を出る時に弁当でも出してやるよ。今晩はウチで食べるのかい?」
「はい、夕飯はここで食べます。それとお弁当は本当に助かりますよ。なにぶんお金に余裕が無いもので」
料金分の食事を融通してくれるなんて、気が利いてるなぁ。
既にちょっと気に入ったし、お金さえあったら連泊するんだけど……。
「じゃあ部屋に案内するから、付いておいで」
女将さんの後に続いて階段を上がる。
どうやら俺の部屋は、2階の1室らしい。
「ここがアンタの部屋だよ。鍵はこれさ」
受け取った鍵は、普通の金属製の鍵だった。
ここにはファンタジー要素を感じるような感じないような、ちょっと審議が必要だな?
「夕飯までは少し時間があるねぇ。外出するなら宿の人間に声かけて、鍵を預けておくれ」
「いやぁ……。今日はもうヘトヘトなんで、夕食まで休みますよ……」
「そうなのかい? あ、食事は1階の食堂でお願いしてるよ。準備が出来たら部屋に呼びに行くから、部屋で待ってな。トイレはあそこさ。なるべく綺麗に使っておくれよ?」
軽く釘を刺しつつ、女将さんは1つの扉を指差した。あそこがトイレか。
じゃあまた後でね、と戻りかけた女将さんを引き止めて聞いてみる。
「済みません。この宿のトイレを利用する場合に、なにか気をつけたほうが良いこととか、守るべきルールとかってあります?」
なるべく自然な感じで問いかける。
トイレの使用法を自然に聞くって、もう完全に無理があるとは俺も思うけどさっ!
「トイレのルールぅ? アンタまた、随分と変なこと聞くじゃないか?」
「実は故郷を出てきたばかりで、他の街の事とか何も知らなくて……。それに俺って字が読めないから、注意書きとかあっても分からないんですよ」
「ははっ。心配しなくても何処にでもあるトイレさ。用が済んだら魔力を流す。それさえ忘れなきゃ大丈夫だよ」
そう言って女将さんは仕事に戻っていった。
あっぶねー! やっぱり普通のトイレじゃないじゃないか!
水洗ならぬ、魔洗トイレってやつぅ?
2階にトイレがある時点で普通じゃないとは思ったんだよねー。文明レベル的な意味で。
他に利用客がいない今のうちに、異世界トイレを体験してみよう。
「ふぅ~……。すっきりした」
結論から言って、日本で使っていた洋式トイレと殆ど変わらなかった。
柔らかめのトイレットペーパーまでちゃんと配備されていたことには感謝しかない。
正式な異世界じゃなくて、神様が新しく作った世界らしいしな。細かい点でご都合主義なのかもしれない。
快適なので文句なんか全く無いけどね。
地球のトイレと違うのが魔力式という点だ。
トイレに付属していた見慣れないガラス玉のような物に触れたら、体から何かが少し抜き取られる感覚がして、致したばかりの排泄物が綺麗さっぱり無くなってしまったのだった。
どうやらガラス玉に触れることで魔力が抜き取られて、その魔力でなにか魔法的な処理を施すらしい。
なんにしても、魔力が自動吸引式で助かったよ。
魔力を流す方法とかまだ知らないしさぁ。トイレだけに?
トイレの確認が済んだので、今度は案内された部屋に入ってみる。
「せっま!? ベッドしか置いてないじゃん!」
ベッドの他には椅子やテーブルすらない狭苦しい内装に、思わずツッコミを入れてしまった。
でも、1人部屋ならこんなものなんだろうか?
むしろベッドがあるだけでも、高級な宿だったりするのかな?
この世界の普通ってのがまだ分からないし、この宿の評価はまだ保留だな。
「さてと。無事に部屋も取れた事だし、早速マニュアルを確認したいところだけれど……」
食事の準備が出来たら宿の人が呼びに来るって言ってたからな。
マニュアルを読むのは食事が終わってからの方が無難だろう。
……って、そうすると暗くて読めなかったり?
「お? これってもしかしてランプか?」
改めて部屋を確認したら、ヘッドボードにランプのようなものが置かれている。
これって多分、照明器具だよな?
確認してみると、トイレに備え付けてあったものと似たようなガラス玉がくっついている。
触れてみると、やっぱり何かを吸われたような感覚があって、無事灯りが点いた。
流石はファンタジー世界。
科学の代わりに、魔法がしっかり生活に根付いているようだ。
それほど強い光ではないけれど、マニュアルを読むのには支障が無いだろう。
なら今は余計な事を考えず、夕食までゆっくりと休もう……。
食事のお声がかかるまで、俺はベッドに座って必死に現状を受け入れていったのだった。
「お客さーん。夕食の用意が出来たから、1階の食堂まできておくれ」
「あ、はいっ。ありがとうございまーす!」
色々なことをぐるぐると考えていたけれど、思考がまとまる前に夕飯のお呼び出し。
呼び出しの声に返事をして、考え事を中断した。
宿の規模にしては広く感じる食堂には既に料理が並べられていて、女将さんに案内された席に座り、早速夕食を楽しむ事にした。
「え、普通にうっま……」
異世界に来て始めての食事は、全体的に濃い味のものが多かったけれど、充分に満足出来る味だった。
香辛料とかも普通に流通してるっぽいな。
強いて特徴を挙げるなら、なんか肉が多くて野菜が少なめかも?
でも異世界作品のテンプレに漏れず、パンだけは固かった。
テンプレに倣って一緒に出されたスープにつけて食べたら、まぁ悪くないなという感想。
そして、日本では自炊程度しかしたことのない俺には料理チートは難しそうだということが分かった。
俺が日本で自炊していた料理より、この宿の料理は俺の口に合ったのだった。
宿の女将さんに宿泊料金の説明を受ける。
この人の外見は普通の人間に見えるな。美人さんではあるけどモフモフはしてない。
獣人の宿ではなくてちょっと残念。
しかし連泊はお得とはいえ、残金は銀貨7枚だしなぁ。
最大でも3泊しか出来ないし、連泊する余裕は無いか。
ここは大人しくひと晩だけ泊まる旨を伝え、銀貨3枚を支払う。
残金が目に見えて減っていくのって、なかなかの恐怖ですよね……。
「確かに受け取ったよ。迷宮の安らぎ亭を使ってくれてありがとねぇ」
毎度ありーっと、ニッコリ微笑んでくれる女将さん。
美人さんの笑顔に、疲れ切った心と体が癒されるぅ~……。
「流石に今日の朝の分の食事はもう出せないから、明日宿を出る時に弁当でも出してやるよ。今晩はウチで食べるのかい?」
「はい、夕飯はここで食べます。それとお弁当は本当に助かりますよ。なにぶんお金に余裕が無いもので」
料金分の食事を融通してくれるなんて、気が利いてるなぁ。
既にちょっと気に入ったし、お金さえあったら連泊するんだけど……。
「じゃあ部屋に案内するから、付いておいで」
女将さんの後に続いて階段を上がる。
どうやら俺の部屋は、2階の1室らしい。
「ここがアンタの部屋だよ。鍵はこれさ」
受け取った鍵は、普通の金属製の鍵だった。
ここにはファンタジー要素を感じるような感じないような、ちょっと審議が必要だな?
「夕飯までは少し時間があるねぇ。外出するなら宿の人間に声かけて、鍵を預けておくれ」
「いやぁ……。今日はもうヘトヘトなんで、夕食まで休みますよ……」
「そうなのかい? あ、食事は1階の食堂でお願いしてるよ。準備が出来たら部屋に呼びに行くから、部屋で待ってな。トイレはあそこさ。なるべく綺麗に使っておくれよ?」
軽く釘を刺しつつ、女将さんは1つの扉を指差した。あそこがトイレか。
じゃあまた後でね、と戻りかけた女将さんを引き止めて聞いてみる。
「済みません。この宿のトイレを利用する場合に、なにか気をつけたほうが良いこととか、守るべきルールとかってあります?」
なるべく自然な感じで問いかける。
トイレの使用法を自然に聞くって、もう完全に無理があるとは俺も思うけどさっ!
「トイレのルールぅ? アンタまた、随分と変なこと聞くじゃないか?」
「実は故郷を出てきたばかりで、他の街の事とか何も知らなくて……。それに俺って字が読めないから、注意書きとかあっても分からないんですよ」
「ははっ。心配しなくても何処にでもあるトイレさ。用が済んだら魔力を流す。それさえ忘れなきゃ大丈夫だよ」
そう言って女将さんは仕事に戻っていった。
あっぶねー! やっぱり普通のトイレじゃないじゃないか!
水洗ならぬ、魔洗トイレってやつぅ?
2階にトイレがある時点で普通じゃないとは思ったんだよねー。文明レベル的な意味で。
他に利用客がいない今のうちに、異世界トイレを体験してみよう。
「ふぅ~……。すっきりした」
結論から言って、日本で使っていた洋式トイレと殆ど変わらなかった。
柔らかめのトイレットペーパーまでちゃんと配備されていたことには感謝しかない。
正式な異世界じゃなくて、神様が新しく作った世界らしいしな。細かい点でご都合主義なのかもしれない。
快適なので文句なんか全く無いけどね。
地球のトイレと違うのが魔力式という点だ。
トイレに付属していた見慣れないガラス玉のような物に触れたら、体から何かが少し抜き取られる感覚がして、致したばかりの排泄物が綺麗さっぱり無くなってしまったのだった。
どうやらガラス玉に触れることで魔力が抜き取られて、その魔力でなにか魔法的な処理を施すらしい。
なんにしても、魔力が自動吸引式で助かったよ。
魔力を流す方法とかまだ知らないしさぁ。トイレだけに?
トイレの確認が済んだので、今度は案内された部屋に入ってみる。
「せっま!? ベッドしか置いてないじゃん!」
ベッドの他には椅子やテーブルすらない狭苦しい内装に、思わずツッコミを入れてしまった。
でも、1人部屋ならこんなものなんだろうか?
むしろベッドがあるだけでも、高級な宿だったりするのかな?
この世界の普通ってのがまだ分からないし、この宿の評価はまだ保留だな。
「さてと。無事に部屋も取れた事だし、早速マニュアルを確認したいところだけれど……」
食事の準備が出来たら宿の人が呼びに来るって言ってたからな。
マニュアルを読むのは食事が終わってからの方が無難だろう。
……って、そうすると暗くて読めなかったり?
「お? これってもしかしてランプか?」
改めて部屋を確認したら、ヘッドボードにランプのようなものが置かれている。
これって多分、照明器具だよな?
確認してみると、トイレに備え付けてあったものと似たようなガラス玉がくっついている。
触れてみると、やっぱり何かを吸われたような感覚があって、無事灯りが点いた。
流石はファンタジー世界。
科学の代わりに、魔法がしっかり生活に根付いているようだ。
それほど強い光ではないけれど、マニュアルを読むのには支障が無いだろう。
なら今は余計な事を考えず、夕食までゆっくりと休もう……。
食事のお声がかかるまで、俺はベッドに座って必死に現状を受け入れていったのだった。
「お客さーん。夕食の用意が出来たから、1階の食堂まできておくれ」
「あ、はいっ。ありがとうございまーす!」
色々なことをぐるぐると考えていたけれど、思考がまとまる前に夕飯のお呼び出し。
呼び出しの声に返事をして、考え事を中断した。
宿の規模にしては広く感じる食堂には既に料理が並べられていて、女将さんに案内された席に座り、早速夕食を楽しむ事にした。
「え、普通にうっま……」
異世界に来て始めての食事は、全体的に濃い味のものが多かったけれど、充分に満足出来る味だった。
香辛料とかも普通に流通してるっぽいな。
強いて特徴を挙げるなら、なんか肉が多くて野菜が少なめかも?
でも異世界作品のテンプレに漏れず、パンだけは固かった。
テンプレに倣って一緒に出されたスープにつけて食べたら、まぁ悪くないなという感想。
そして、日本では自炊程度しかしたことのない俺には料理チートは難しそうだということが分かった。
俺が日本で自炊していた料理より、この宿の料理は俺の口に合ったのだった。
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